ユーゴスラビア生まれのヴァイオリニスト
ゲルハルト・ヘッツェル(1940.4-1992.7)の独奏で、
ドイツの作曲家
ブラームス(1833.5-1897.4)と
オーストリアの作曲家
モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ヴァイオリン協奏曲を聴きました。
ブラームス
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
東京都交響楽団
渡邉暁雄(指揮)
録音:1988年3月16日、東京文化会館(第269回定期演奏会)
モーツァルト
ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219《トルコ風》
読売日本交響楽団
ハインツ・レーグナー(指揮)
録音:1988年3月14日、東京、サントリーホール(第260回名曲シリーズ)
ゲルハルト・ヘッツェル(ヴァイオリン)
【TBRCD0020-2】
ブラームス(1833.5-1897.4)
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
は作曲者45歳の時(1879.1)に初演された作品、
モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ヴァイオリン協奏曲第5番 ニ長調《トルコ風》K.219
は作曲者19歳の時(1775.12)に完成された作品です。
どちらも1988年3月に行われたコンサートのライブ録音です。
独奏のゲルハルト・ヘッツェル(1940.4-1992.7)は47歳、
指揮者の渡邉暁雄(1919.6-1990.6)は68歳、
ハインツ・レーグナー(1929.1-2001.12)は58歳、
を迎えていました。
***
ヘッツェルさんのファンなので、このCDは、
昨年6月に発売されてから気になっていました。
ただブラームスは独奏者にとって
技術的にも内容的にも相当な難曲のはずで、
ライブで充実した演奏を聴くことはほぼ皆無です。
モーツァルトも技術的にはともかく、
内容面で満足できる演奏を聴くことは稀で、
いくらヘッツェルさんでもどうだろうと思っていました。
しかし今回聴いてみて、
予想以上の充実ぶりに驚きました。
最初にヘッツェルさんの凄さに気がつかされたのは、
遺作となったブラームスのヴァイオリン・ソナタ全集ですが、
その時以来、
ヘッツェル独特の
よく歌うヴァイオリンの記憶がよみがえり、
久しぶりにブラームス:ヴァイオリン協奏曲の、
しみじみとした美しさを存分に堪能することができました。
ライブで聴けたら一生の宝ものになりそうな演奏でした。
絹糸のようになめらかな艶のある音色で、
全身全霊を歌うために捧げているような演奏で、
ブラームスの協奏曲ってこんなに美しかったのかと感動を新たにしました。
あと渡邉暁雄氏の指揮も非常に優れていました。
よくありがちな
お腹にずどーんと来る重力級の響きではなく、
少し軽めの華やかな、
独特の品を感じさせる響きで、
ぴったりとヘッツェルのソロにつけていて、
しっかりとした構成感をみせつつ、
ソリストと同じ方向を向いて全体をうまくまとめあげており、
文句のつけようのない立派な伴奏でした。
渡邉暁雄氏のブラームスって、
案外良いのかもしれません。
しばらくブラームスのヴァイオリン協奏曲は
聴いてこなかったので、
久しぶりに他の方のも聴きなおしてみたくなりました。
もう1曲、
モーツァルトも同じタイプのよく歌う演奏。
でも意外に、どこもかしこも
良く歌っているモーツァルトには出会わないので、
新鮮な印象で聴き通すことができました。
レーグナーの伴奏は、
恐らくウィーン風といって良さそうな雰囲気で、
特に個性を際立たせるわけではないものの、
伴奏としては手堅く十分に役目を果たしていると思いました。
ウィーン・フィルの
コンサート・マスターとして活躍されたわけですが、
独奏者としても
十分以上に活躍しうる技量をもった方であったことを再認識しました。
ベートーヴェンの協奏曲も、
ヘッツェルさんと相性良さそうなので、
どこかに録音が隠れていないものでしょうか。
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