秋休み中の10月29日(水)に、
愛知県美術館まで「デュフィ展」を観に行ってきました。
全国3箇所、
[東京]Bunkamura ザ・ミュージアム【2014-6/7-7/27】
[大阪]あべのハルカス美術館【8/5-9/28】
[名古屋]愛知県美術館【10/9-12/7】
を巡回してきて名古屋が最後の会場です。
名古屋会場の主催は、
愛知県美術館
中日新聞
CBCテレビ
となっています。
デュフィって誰?という状態だったのですが、
街に貼られていたポスターに心惹かれて、
観に行ってみることにしました。
***
フランスの画家
ラウル・デュフィ(Raoul Dufy 1877.6-1953.3)は
「20世紀前半のフランスでマティスやピカソなどとともに活躍した画家」
だそうです(展覧会図録「あいさつ」参照)。
実際観てみると、
器用な方だったのか、
若いころから作風がいろいろと変わっていて、
どれも相当なレベルに達しているものの、
デュフィならではの個性がどこにあるのか、
今一つつかみ取りにくい感じがしました。
若いころは画家マティスのような、
原始的な雰囲気の、濃い色彩の絵画も描いていて、
それなりに興味深かったのですが、
フォーヴィズムの流儀は、
デュフィ独特の洗練されたセンスの良さを
かえって打ち消しているような感じがして、
あまり好きにはなれませんでした。
全体は、
1.1900-1910年代―造形的革新のただなかで
2.木版画とテキスタイル・デザイン
3.1920-1930年代―様式の確立から装飾壁画の制作へ
4.1940-1950年代―評価の確立と画業の集大成
という4部で構成されていました。
1.1900-1910年代―造形的革新のただなかで
この中では、
【図録004】サン=タドレスの桟橋
1902年 油彩、カンヴァス
【図録010】サン=タドレスの浜辺
1906年 油彩、カンヴァス
【図録011】トゥルーヴィルのポスター
1906年 油彩、カンヴァス
【図録012】海辺のテラス
1907年 油彩、カンヴァス
の4点は、
ありがちな構図の中にも
独特の色彩感覚が表れていて気に入りました。
2.木版画とテキスタイル・デザイン
この中では、
ギヨーム・アポリネール著
『動物詩集あるいはオルフェウスとそのお供たち』
の挿絵として刷り上げられた木版画(1911年完成)を展示してありました。
そこで描かれている人物は、
どれも生理的に好きになれなかったのですが、
動物たちの版画はどれも的確に特徴が把握されていて、
ユーモアのある魅力的な挿絵に感心しました。
【図録038-2】亀
【図録038-3】馬
【図録038-4】チベットの山羊
【図録038-5】蛇
【図録038-6】猫
【図録038-7】ライオン
【図録038-8】野ウサギ
【図録038-9】家ウサギ
【図録038-10】ラクダ
【図録038-11】ハツカネズミ
【図録038-12】象
【図録038-14】毛虫
【図録038-15】ハエ
【図録038-16】ノミ
【図録038-17】イナゴ
【図録038-19】イルカ
【図録038-20】タコ
【図録038-21】クラゲ
【図録038-22】ザリガニ
【図録038-23】鯉
【図録038-26】白鳩
【図録038-27】クジャク
【図録038-28】ミミズク
【図録038-29】アイヒス
【図録038-30】牡牛
【図録038-31】コンドル
もう一つ、
服飾のデザインについては興味がないので
語る資格がないのですが、
布地に用いられたテキスタイル・デザインの数々には、
不思議なほど惹きつけられました。
単なるデザインとは言い切れない、
独特のやさしい色彩感、ユーモアが伝わってきて、
十分鑑賞するに足るデザインでした。
3.1920-1930年代―様式の確立から装飾壁画の制作へ
今回の展示のメインはここ。
デュフィの個性が確立して以降の作品を収めたようです。
この中で、人物画と、
原色を使った濃い色調の絵は、
私の好みに合いませんでした。
一瞬のインシュピレーションを重視したからなのか、
構図のバランスに違和感のあるものが多いようにも感じました。
そうした中でも、
【図録092】突堤―ニースの散歩道
1926年頃 油彩、カンヴァス
【図録105】エプソム、ダービーの行進
1930年 油彩、カンヴァス
の2点は油彩ながらも淡目の色合いで、
構図全体のバランスも整っていて、気に入りました。
淡い色調でセンス良く仕上げたほうが、
彼の長所が出ているようで、
水彩画の2点、
【図録106】ドーヴィルの風景
1930年 水彩、紙
【図録121】ヴェネツィアのサン・マルコ広場
1938年 グアッシュ・水彩、紙
はとても気に入りました。
時に【121】は無駄がなく、センスにあふれていて、
自分の家に1枚ほしいくらいでした。
どちらかといえば、
原色豊かに人間感情の素をあばくのには、
余り向いていない人のように感じました。
もう1点、
1937年にパリ万国博覧会のときに制作され、
現在はパリ市立現代美術館で展示されている
大作《電気の精》を縮小した
【図録123】電気の精
1952-53年 リトグラフ・グアッシュ、紙(10点組)
が展示されていました。
縮小版とはいっても十分な大きさがあり、
やわらかく明るい雰囲気が気に入りました。
恐らく実物であれば、
圧倒的な感銘を受けることでしょう。
パリまで観に行きたくなりました。
4.1940-1950年代―評価の確立と画業の集大成
晩年の作品の中で気に入ったのは2つの分野です。
一つはオーケストラそのものを描いた作品です。
ただし色付けしてあるものは
実際のオーケストラの色彩感からすると、
今一つ物足りないような気がしました。
むしろ黒一色で、
描かれたオーケストラのほうが、
さまざまな音があふれてくるような臨場感がありました。
一番良かったのは、
【図録141】オーケストラ
1940年頃 墨、紙
です。
もう一つ、
水彩で描かれた花の絵の数々に
心奪われました。
【図録146】アネモネとチューリップ
1942年 水彩、紙
【図録148】マーガレット
1943年頃 水彩、紙
【図録150】アイリスとひなげしの花束
1953年 水彩、紙
【図録151】田舎風花束
1953年 水彩、紙
【図録152】野花
1950年頃 水彩、紙
色彩感豊かな野に咲く花の数々は、
心を和ませて明るくしてくれました。
個人的にはこの素朴な花の絵が、
一番のお気に入りでした。
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