オーストリア出身のピアニスト
アルトゥール・シュナーベル
(Artur Schnabel 1882.4-1951.8)が、
50歳から53歳にかけて(1932-35)録音した
ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven 1770.12-1827.3)の
ピアノ・ソナタ全集の6枚目です。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ録音協会全集第6集
ベートーヴェン(1770-1827)
1) ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調《テンペスト》作品31-2
2) ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 作品31-3
3) ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調《ワルトシュタイン》作品53
アルトゥル・シュナーベル(ピアノ)
録音:1934年4月27-28日〔17番〕、1932年5月25日〔18番〕、1934年4月25日・5月7日〔19番〕、EMIアビー・ロード第3スタジオ、ロンドン
【Naxos 8.110760】
1) ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調《テンペスト》作品31-2
2) ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 作品31-3
ベートーヴェンのピアノ・ソナタは、
通常、作品31の3曲から「中期」に分類されています。
《テンペスト》《ワルトシュタイン》は勿論ですが、
特別な名前のない作品31-3も、
聴いてすぐ充実度のわかる名曲です。
作品31は、
第16番 ト長調 作品31-1
第17番 ニ短調 作品31-2《テンペスト》
第18番変ホ長調作品31-3
という3曲からなります。
まず作品31-1・2が、
32歳の時(1803.4)に出版されたものの、
楽譜に誤りが多かったのですぐに改訂版が出版されました(1803.6)。
しかしこれにも誤りがあったため、
翌年、33歳の時(1804.6)に1曲加えて
作品31-1・2・3 として出版されました。
こののち34歳の時(1805.1)に
第19番ト短調作品49-1
第20番ト長調作品49-2
の2曲が出版されますが、
これは若いころの作品をまとめ直したものなので、
ふつう初期のソナタに分類されており、
この全集でもCD2枚目に収録されています。
3) ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調《ワルトシュタイン》作品53
は《テンペスト》から2年をへて、
34歳の時(1805.5)に出版された作品です。
時期的には、
交響曲第2番・第3番が初演された時期に重なります。
交響曲第2番ニ長調作品36
(初演 1803.4)
交響曲第3番変ホ長調《英雄》作品55
(初演 1804.12)
***
シュナーベルさんのピアノは、
たいへん雄弁なのですが、
全体の見通しはとても良く、
どういう曲なのか手に取るようにわかるのが特徴的です。
没入して精神的に追いつめていくタイプの演奏ではなく、
楽しくおしゃべりしていくような、
語りかける表現のうまさを感じる演奏です。
細部にこだわり過ぎることもなく、
曲全体の真価を知りたい時にぜひ聴いておきたい演奏だと思います。
《テンペスト》と
《ワルトシュタイン》はよく聴いてきているはずですが、
全体の見通しの良さに、
初めて聴くような感動を覚えました。
これまで特に意識していなかった作品31-3も、
同じ時期に作られた佳曲の一つであることは
よくわかりました。
※横山千史著
『ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全作品解説』
(アルテスパブリッシング、2013年12月)参照。
※ペティナ・ピアノ曲事典「ベートーヴェン」
【http://www.piano.or.jp/enc/composers/61/】を参照。
※Wikipedia の「アルトゥル・シュナーベル」
「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」
「ベートーヴェンの楽曲一覧」を参照。
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