フロイデ・フィルハーモニーの演奏で、
ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の交響曲第3番《英雄》を聴きました。
指揮者74歳の時(2009.1)の録音です。
朝比奈隆、山田一雄両氏の
最晩年の《英雄》を聴いて来て、
そういえば宇宿允人氏の演奏はどうだったのだろうと思い、
聴いてみることにしました。
宇宿允人の世界27
ベートーヴェン:
交響曲第3番 変ホ長調 作品53《英雄》
マスネ:タイースの瞑想曲
宇宿允人(指揮)
フロイデ・フィルハーモニー
録音:2009年1月21日(水)、《宇宿允人の世界》第179回公演、東京芸術劇場大ホール
【MUCD-027】
ベートーヴェン
34歳の時(1804.12)に初演された
交響曲第3番《英雄》をメインとして、
フランスの作曲家
ジュール・マスネ(1842.5-1912.8)の
オペラ《タイス》の間奏曲を添えたプログラムです。
《タイス》は作曲者52歳の時(1894)に初演されています。
このコンサートでは、
ソロ・ヴァイオリンの独奏パートを、
第1ヴァイオリンで合奏させています。
***
宇宿允人氏は、規格外な指揮姿で
誤解されている面もあるように思われますが、
CDを聴くかぎり、
どこも偏狭なところはなく、
オーソドックスなスタイルの中に、
実にまっとうな演奏が繰り広げられていて、
逆に驚かされます。
アマチュアのオーケストラを相手にしているので、
CDではあと一歩、物足りなく感じることも多いのですが、
うまくはまった時の演奏は、
並みの指揮者にとても太刀打ちできない、
めったにないレベルの感動を与えてくれます。
***
宇宿氏のベートーヴェンは、
はじめに2002年録音の《運命》・第8番・第9番を聴きました。
この時は、オケの粗さが目立ち、
ほかを圧倒する何かがあるとは感じませんでした。
その後、
2006年12月に録音された
ベートーヴェンの第九を聴いたところ、
オケの水準も指揮者の表現力も、
一つ上につきぬけた印象があって、
予想を遥かにこえる大きな感銘を受けました。
いたってオーソドックスなスタイルなのですが、
ほかの指揮者とは明らかに違う、
ベートーヴェンの音楽のもつ美しさがすんなりと伝わって来る演奏でした。
宇宿氏が、
晩年に演奏されたベートーヴェンのなかには、
飛び抜けて素晴らしいものがあるようです。
ライブ録音のCDを一枚ずつ聴いていこうと思っております。
***
前置きが長すぎました。
この2009年の《英雄》、
2006年の第九に比べると、
オケの調子が万全ではありません。
第1・2・4楽章は、
個人的には全然問題ないのですが、
第3楽章にかなり致命的なミスがあるため、
この楽章のみは大きくマイナスです。
しかし第3楽章をのぞけば、
まとめにくい第1楽章を含めて、
わかりやすく有機的に全体をまとめ上げ、
深く感動させられる演奏が繰り広げられていました。
《英雄》はまとめにくい曲なので、
誰の演奏を聴いても、
CDだと退屈に感じられることが多いのですが、
曲想に合わせて、ごく自然に、
自在にテンポを動かせるところが強みになるのか、
どこも退屈なところのない、
《英雄》たるに相応しい、手に汗握る演奏が展開されていました。
最近聴いた
朝比奈隆や山田一雄の
晩年の《英雄》と比べるなら、
オケのレベルは相当落ちますが、
宇宿氏のライブのほうが俄然感動的で、
おもしろい演奏を聴かせてくれました。
キズがあるのは難点ですが、
今一つ《英雄》の良さがわからない方に、
ぜひ聴いていただきたい演奏です。
宇宿氏は、
この2年前の《英雄》もCD化されているので、
ぜひ聴いてみようと思います。
キズがなければ、
そちらのほうが良い演奏かもしれません。
もう一点、
こちらはあまり期待していなかったのですが、
アンコールの《タイス》も絶品です。
ほかの管弦楽曲も聴いてみたくなりました。
※Wikipediaの「ジュール・マスネ」を参照。
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