作曲者として世に知られるようになった
新垣隆(1970.9- )氏の新作交響曲のCDを聴きました。
新垣隆
①交響曲《連祷(れんとう)》―Litany―
②ピアノ協奏曲《新生》
③流るる翠碧(すいへき)
新垣隆(①指揮、②③ピアノ)
中村匡宏(②③指揮)
東京室内管弦楽団
録音:2016年9月15日、福島市音楽堂
【UCCD-1443】2016年11月発売
偽作騒動が明らかになる前に、
新人作曲家による話題の交響曲とあれば
一度は聴いておこうと思って《HIROSHIMA》のCDを購入し、
感想をこのブログにアップしていました(2011年8月3日)。
その時の感想を要約すると、
全体の印象としては、救いのあるショスタコービッチ。 時にチャイコフスキーやラフマニノフを思わせる美しい場面もあって、 わかりにくい音楽ではありませんでした。
ただし曲全体の構成には問題があって、3楽章ともゆっくり始まってゆっくり終わる音楽なので、CDでは途中で飽きが来てしまいました。
私の好みからいえば、3楽章のみであれば普通に名曲だと思いました。
***
旧作は全体として、
暗く重々しい雰囲気がつづく作品で、
良いところもたくさんあるものの、
あまり聴き返したいとは思いませんでした。
ただし、とにかく長大な交響曲を
感動的にまとめ上げた力量には感心し、
次回作に期待したいと思っていました。
ところがその後、
本来の作曲者 新垣隆氏の存在が明らかになるとともに、
曲の存在自体が葬り去られる顛末となりましたので、
次回作を聴く機会はもうなくなったのかと残念に思っていました。
ここから後の経緯はよく知らないので割愛。
今回改めて、
新垣氏本人の意志によって書き上げた
新作の交響曲にピアノ協奏曲まで聴けるということで、
ぜひ聴いてみたいと思って購入しました。
***
発売から2週間ほどの間に、
4、5回聴き通してみた上での感想です。
オケの色合いはやはり前作と似ていて、
交響曲《HIROSHIMA》が新垣氏の作品であることを再確認できました。
しかし長大さにうんざりした前作に対して、
新作では、聴き手を惹きつける聴かせどころのツボをよく心得ていて、
全曲を飽きずに聴き通すことができました。
聴衆をほどよく飽きさせずに全曲をまとめ上げる手腕が、
格段と上手くなっているように感じました。
それでも真面目な人柄を反映しているのか、
全体的に暗めの重々しい雰囲気なので、
個人的にあまり好きな曲調ではないのですが、
前作ほど極端に暗さを押しつけてくるわけではなく、
美しいメロディも程よいバランスで織り交ぜてあるので、
全体を一つのよくできた交響曲として、
感動的に聴き終えることができました。
個人的には、
交響曲なら4楽章だろうという思いもあるので、
もう少し明るい希望的な要素を増やした
4楽章編成の第3交響曲をぜひ書いてほしいです。
新作のピアノ協奏曲のほうは、
プロコフィエフやバルトークをまぜこぜにしたような、
ハードボイルドな感じの作品。
ショパンやラフマニノフなどの
美しいメロディに期待すると肩透かしにありますが、
新垣氏のどちらかといえば現代音楽よりの側面を
垣間見れるように思いました。
個人的にはあまり好きな作品でないのですが、
最初の協奏曲としては十分な出来だと思うので、
こちらも次回作のほうに期待したいです。
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