去る3月19日(日)、
名古屋市東区の愛知県美術館まで、
オランダの画家
フィンセント・ファン・ゴッホ
(Vincent van Gogh, 1853-1890/満37歳没)と、
フランスの画家
ポール・ゴーギャン
(Paul Gauguin, 1848-1903/満54歳没)の
二人をテーマにした展覧会
「ゴッホとゴーギャン展」を観に行ってきました。
※日程 2017年1月3日(火)~3月20日(月)
※主催 愛知県美術館、中日新聞社、CBCテレビ
※後援 オランダ王国大使館
◎「東京会場」(東京都美術館)
日程:2016年10月8日~12月18日
主催:東京都美術館、東京新聞、TBS
正月中に行きそびれ、
そのまま延び延びになっていたのですが、
苦手なゴーギャンに迫るべく、
モームの『月と六ペンス』も読んだところだったので、
最終日の1日前に観に行って参りました。
閉館1時間前に滑り込んで、
もう人はいないだろうと思っていたら、
最終日前の日曜日ということもあってか、
家族づれがたくさん来ていました。
それでも気に入った作品を、
2回3回と観ているうちに人影まばらになって、
終わりの30分くらいは、
気に入った作品をじっくり観ることができました。
***
ゴッホの作品は、
これまでにも度々観る機会がありました。
精神病の影響が出て、
構図に異常な歪みがみえるようになってからの作品は
あまり好きになれないのですが、それより前の、
色彩感あふれる健康的な風景画にはお気に入りが多いです。
もう一人、
ゴーギャンの作品は、
教科書などでよくみられる独特な色彩が、
生理的に受け付けないので、これまでほとんど観ていません。
今回観てみても、
彼ならではの個性が出て来るにつれ、
私の好みからどんどん離れていきました。
しかし、若い頃の風景画のなかには、
独特の枯れた味わいのある作品があって、
心に響くものが見つかりました。
***
忘れないうちに、
個人的に気に入った作品をまとめておきます。
第1章 近代絵画のパイオニア誕生
ここでは気に入った作品は2点。
【図録4】
ジャン=フランソワ・ミレー(1814-75)
《鵞鳥番の少女》1866-67年
※個人蔵
【図録15】
クロード・モネ(1840-1926)
《ヴェトゥイユ、サン=マルタン島からの眺め》1880年
※吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)
ミレーの作品は以前、名古屋ボストン美術館で
「ボストン美術館 ミレー展」を観た時(2014年10月)、
ほの暗い憂鬱な絵ばかりで、あまりいい印象がなかったのですが、
この《鵞鳥番の少女》は、
ガチョウのユーモラスな雰囲気が、
明るい印象を与えてくれて、すぐに気に入りました。
なお東京会場のみの展示で、
図録でしか観られなかったのですが、
【図録13】
カミーユ・ピサロ(1830-1903)
《エラニーの牧場》1885年
※公益財団法人 上原美術館 上原近代美術館
【図録14】
クロード・モネ(1840-1926)
《藁葺き屋根の家》1879年
※公益財団法人 上原美術館 上原近代美術館
の2点は新鮮な印象で、
ぜひ実物を観てみたかったです。
特に《藁葺き屋根の家》は好印象でした。
静岡県の「上原美術館」の所蔵なので、
機会があれば観に行ってみたいです。
第2章 新しい絵画、新たな刺激と仲間との出会い
この中で気に入ったのは、
ゴッホとゴーギャンの風景画を1点ずつ。
【図録21】
フィンセント・ファン・ゴッホ
《モンマルトル、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの裏》1887年7月、パリ
※ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
【図録27】
ポール・ゴーギャン
《ポン=タヴェンの木陰の母と子》1886年
※ポーラ美術館
ゴッホの【21】は、
図録で見るとそれほどでもないのですが、
実物は明るい日光が差し込んでくる印象で、
心をパッと晴れやかにしてくれる作品でした。
ゴーギャンの【27】は、
やわらかい色調の穏やかな印象の風景画で、
後年のどぎつい彼独特の色彩が強調されていないところを気に入りました。
この絵は好きです。
第3章 ポン=タヴェンのゴーギャン、アルルのファン・ゴッホ、そして共同生活へ
こちらは、
ゴッホとゴーギャンの風景画が3点。
とくにゴッホの【37】と【40】は、
図録でみるとそれほどでもないのですが、
実物では、目に鮮やかな濃いめの緑が、深く心に残る作品で、
鮮烈な印象を受けました。
この2点を観られただけで、
今回足を運んだ甲斐がありました。
【図録37】
フィンセント・ファン・ゴッホ
《収穫》1888年6月、アルル
※ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
【図録40】
フィンセント・ファン・ゴッホ
《公園の小道》1888年9月、アルル
※ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
ゴーギャンは、
私が抱いていたゴーギャン像とは異なる
枯れた味わいの上品な印象の風景画で、
前掲【27】と同じタイプの作品でした。
【図録45】
ポール・ゴーギャン
《鵞鳥の戯れ》1888年、ポン=タヴェン
※個人蔵
ゴーギャンらしい
強いクセのあるどぎつい色彩が出ていない
風景画をよく感じるということは、
私にはゴーギャンの真価がわからない、
ということなのだと思います。
でも【27】【45】と似た風景画があるのなら、
これはもっと観てみたいです。
第4章 共同生活後のファン・ゴッホとゴーギャン
ここで強く感銘を受けたのは、
ゴッホが描いたバラの絵1点のみ。
【図録53】
フィンセント・ファン・ゴッホ
《ばら》1889年5月、サン=レミ
※国立西洋美術館(松方コレクション)
他より少し小さめのカンヴァスに、
厚めに絵の具を塗りたくっていて、
ぱっと見、何が描かれているのかわからなかったのですが、
(恐らく)庭のしげみに雑然と咲くバラの花が描かれていて、
ゴッホの凝縮された想いが
絵から放出されていて、力強い情感に圧倒されました。
他の作品は、精神病の影響からか、
構図からして変にゆがんでいるものが多く、
芸術としてこれはどうなのか、と疑問に思われました。
第5章 タヒチのゴーギャン
こちらは私の知っているゴーギャンばかりで、
どれも嫌味のある色彩が強調されていて、
私の好きな世界ではないことを確認しました。
***
以上、
出かける前はさほど期待していなかったのですが、
充実した内容の作品がたくさんあって、
濃い時間を過ごすことができました。
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