ラディスラフ・スロヴァーク
(Ladislav Slovak, 1909年9月-99年7月)の指揮する
チェコ・スロヴァキア放送交響楽団
(Czecho-Sloval Radio Symphony Orchestra)の演奏で、
ロシア帝国最後の皇帝
ニコライ2世の治世下に生まれ、
ソビエト連邦の時代に活躍した作曲家
ドミトリー・ショスタコーヴィチ
(Dmitrii Shostakovich, 1906年9月-75年8月)の
交響曲第1番と第3番《メーデー》を聴きました。
指揮者77歳(①)・80歳(②)の時の録音です。
※スロヴァキア放送交響楽団は、この録音当時、
「チェコ・スロヴァキア放送交響楽団」と呼ばれていましたが、
1993年にチェコ・スロヴァキア連邦共和国が、
チェコ共和国とスロヴァキア共和国に分離したため、
「スロヴァキア放送交響楽団」と呼ばれるようになりました。
首都プラティスラヴァの名を入れて、
「スロヴァキア放送プラティスラヴァ交響楽団」と呼ぶこともあります。
ショスタコーヴィチ
①交響曲第1番 ヘ短調 作品10
②交響曲第3番 変ホ長調《メーデー》作品20
ラディスラフ・スロヴァーク(指揮)
スロヴァキア放送交響楽団
録音:1986年11月22-25日(①)、90年1月20-26日(②)、スロヴァキア放送コンサートホール、プラティスラヴァ
【NAXOS 8.550623】1994年8月
交響曲第1番ヘ短調作品10 は、
レニングラード音楽院 作曲科の卒業作品として作曲され、
ショスタコーヴィチが19歳の時(1926年5月)に初演されました。
※「レニングラード音楽院」はもともと、
「サンクトペテルブルク音楽院」(1862年設立)
と呼ばれていましたが、
1914年8月に、
サンクトペテルブルク を ペトログラード に改称したのに伴い、
「ペトログラード音楽院」と改められました。
さらに1924年1月に、
ペトログラード を レニングラード に改称したのに伴い、
「レニングラード音楽院」と改められました。
それから半世紀以上をへた1991年6月に、
レニングラード を サンクトペテルブルク に戻したのに伴い、
改めて「サンクトペテルブルク音楽院」と呼ばれるようになりました。
ショスタコーヴィチは、
13歳の時(1919年秋)に
「ペトログラード音楽院」のピアノ科と作曲科に入学し、
16歳の時(1923年6月)に
「ペトログラード音楽院」のピアノ科を卒業したあと、
19歳の時(1925年11月)に
「レニングラード音楽院」の作曲科を卒業しているのですが、
「ペトログラード音楽院」とはつまり
「レニングラード音楽院」のことなので、
異なる2つの音楽院に在学したわけではありません。
交響曲第1番はこの音楽院の卒業作品であり、
初演と同時に大きな成功を収め、
作曲家ショスタコーヴィチの名を世界に知らしめるきっかけになりました。
ただしこの後ショスタコーヴィチは、
第1番の折り目正しい優等生的な作風を
そのまま深化させたわけではなく、
一旦立ち止まって、
当時の前衛的な音楽を吸収しつつ、
自らの方向性を模索する時期に入りました。
そうした試行錯誤を続ける中で生まれたのが、
交響曲第2・3番でした。
交響曲第2番ロ短調《十月革命》作品14 は、
作曲者が21歳のときに作曲、初演(1927年11月)された作品。
交響曲第3番変ホ長調《メーデー》作品20 は、
作曲者が23歳のときに作曲、初演(1930年1月)された作品です。
当時の前衛的な作曲技法を盛り込んだ、
政治的な色合いの濃い歌詞を用いた声楽入りの
1楽章からなる「交響曲」です。
※以上、おもに千葉潤著『作曲家◎人と作品シリーズ ショスタコーヴィチ』(音楽之友社、2005年4月)を参照。
***
NAXOSによる
ショスタコーヴィチの交響曲全集は、
いずれペトレンコの新録音を聴こうと思っていたのですが、
スロヴァークの指揮による旧録音が、
格安で手に入ったので聴いてみたところ、
思いのほか優れた演奏だったので、
旧録音のほうを先に聴いていくことにしました。
第12番まで聴き進めてきた
バルシャイ&ケルン放送響の録音と比べると、
バルシャイのCDは、
楽譜を完璧に再現することに集中した職人的な棒で、
派手さに欠け、多少そっけなく感じるところもあるのですが、
曲の本質はしっかりつかんでいるので、
聴き込むほどに曲の良さが伝わって来る、
渋めの充実した演奏に仕上がっていました。
それに対して今回聴いた
スロヴァーク&スロヴァキア・フィルの演奏は、
オケの機能性の面では若干落ちるように聴こえるのですが、
指揮者スロヴァークの楽譜の読みが非常に深く、
心持ちゆっくりめのテンポを取って、
ショスタコーヴィチの楽譜を存分に歌わせながら、
余裕をもって曲の魅力を引き出していました。
第1・3番ともに、
あたかも作曲者自身が指揮しているかのような
手の内に入った解釈で、ああこんな曲だったのかと
合点がいくこと頻りで、強く感銘を受けました。
とくに第3番は、
これまで何が良いのかさっぱりわからなかったのですが、
スロヴァークの指揮で聴いて初めて、
すべての要素がおもしろくつながって、
ショスタコーヴィチならではの技が光る佳曲であることがわかりました。
ほかでも同じ感想になるかはわかりませんが、
好印象で次の1枚に進みたいと思います。
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