2018年9月2日日曜日

ヨッフム&シュターツカペレ・ドレスデンのブルックナー:交響曲第1番(1978年録音)

ドイツの指揮者
オイゲン・ヨッフム
(Eugen Jochum, 1902年11月1日-87年3月26日)
の指揮する

ドイツのザクセン州立歌劇場
(ゼンパー・オーパー, Semperoper)専属のオーケストラ
シュターツカペレ・ドレスデン
(Sächsische Staatskapelle Dresden)
の演奏で、

オーストリアの作曲家
アントン・ブルックナー
(Anton Bruchner, 1824年9月4日-96年10月11日)
の交響曲全集を聴いていきます。

まずはCD1枚目は、
交響曲第1番ハ短調を聴きました。

指揮者ヨッフム76歳の時(1978年12月)の録音です


Disc1
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲第1番ヘ短調 WAB.101(リンツ稿/ノヴァーク版)

シュターツカペレ・ドレスデン
オイゲン・ヨッフム(指揮)
録音:1978年12月11-15日、ドレスデン、ルカ教会
【Warner Classics 5099998458325】2013年9月発売


交響曲第1番 ヘ短調 は、

ブルックナーが
41歳の時(1865)に着手、
42歳の時(1866)に完成し、 
44歳の時(1868)に初演されました。

この第1稿を「リンツ稿」と呼んでいます

 その後1877年と84年に細部の改訂が行われたので、

 1935年に出版された
 ハース校訂の「リンツ稿」(第1稿)では、
 1877年の改訂を含めた状態で出版されました。


第1稿の初演から22年をへた
66歳の時(1890)に全面改訂が行われ、
翌91年に改訂稿の初演が行われました。

この第2稿を「ウィーン稿」と呼んでいます

 改訂稿の初演から2年後(1893)、
 「ウィーン稿」(第2稿)に基づく「初版」が出版されました。

 ブルックナーはこの3年後、
 72歳の時(1896)に亡くなりますが、
 1935年にハース校訂の「リンツ稿」が出版されるまで、
 40年余り、第1番の出版譜は「ウィーン稿」しか存在しませんでした。


本格的な校訂譜としては、1935年に、
ハース校訂による「ウィーン稿」と「リンツ稿」が出版され

その後、
1953年にノヴァーク校訂による「リンツ稿」が、
1979年にノヴァーク校訂による「ウィーン稿」が
それぞれ出版されました。

 ノヴァーク版の「ウィーン稿」は、
 実際の校訂者名をとって「ブロッシェ版」と呼ばれることもあるそうです。


1976年録音のこのCDは、
1953年に出版されたノヴァーク校訂による
「リンツ稿」が用いられていることになります。

※根岸一美『作曲家◎人と作品 ブルックナー』(音楽之友社、2006年6月)と、Wikipediaの「交響曲第1番(ブルックナー)」の項を参照。


  ***

昔は高価で手を出せなかった
ヨッフムさんの指揮する
ブルックナーの交響曲全集が、
CD1枚分の値段で手に入ったので、
この機会に聴き直してみることにしました。


ヨッフムさんの指揮する
シュターツカペレ・ドレスデンによるブル1、

緻密に計算されたというよりは、
音楽の自然な流れを大切にした共感度の高い演奏で

素朴な美しさに満ちていて、
心から楽しんで聴き進めることができました。

深い祈りの込められた
 第2楽章 Adagio が出色ですが、

ブルックナー最初の交響曲として、
全体的にバランスよくまとまった
完成度の高い作品であることを確かめられました。

シュターツカペレ・ドレスデンの音は、
最新のオーケストラの録音に比べれば、
それほど洗練されているわけではないのですが、
ブルックナーに向いているというか、
程良い荒々しさで心に響いてきて、
十分に満足できました。

聴いてすぐにうっとりするかはわかりませんが、
少し聴き込めば、ブルックナーの良さがとても伝わりやすい演奏だと思いました。



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