ウィーン・フィルの第1コンサートマスターを務めた
ウィーン生まれのヴァイオリニスト
ワルター・バリリ(Walter Barylli, 1921年6月~)が、
1945年に、ウィーン・フィルの同僚たちとともに結成した
バリリ四重奏団の演奏。
結成7年目から11年目
(1952-56年)にかけて録音された
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月-1827年3月)
の弦楽四重奏曲全集の3枚目として、
ベートーヴェン36歳の時(1807年)に出版された
作品59《ラズモフスキー》3曲中のはじめの1曲を聴きました。
バリリ四重奏団の芸術~
Disc3
ベートーヴェン:
① 弦楽四重奏曲第7番ヘ長調 Op.59-1『ラズモフスキー第1番』*
② 弦楽五重奏曲ハ長調 Op.29**
バリリ四重奏団
ヴァルター・バリリ(第1ヴァイオリン)
オットー・シュトラッサー(第2ヴァイオリン)
ルドルフ・シュトレンク(ヴィオラ)
エマヌエル・ブラベッツ(チェロ)*
リヒャルト・クロチャック(チェロ)
ヴィルヘルム・ヒュプナー(第2ヴィオラ)**
録音時期:1955年(第7番)、1953年
【SCRIBENDUM SC805】※2016年7月発売
1・2枚目に収録された
弦楽四重奏曲第1-6番 Op.18 は、
ベートーヴェンが
30歳の時(1801年6・10月)に出版された作品です。
これに続く弦楽四重奏曲第7-9番
《ラズモフスキー第1-3番》Op59 は、
第1-6番の出版から6年を経、
ベートーヴェンが
36歳の時(1807年4月)までに初演され、
翌年1月に出版された作品です。
併録されている
弦楽五重奏曲ハ長調 Op.29 は、
第1-6番の弦楽四重奏曲が出版された翌年、
ベートーヴェンが
31歳の時(1802年5月)に初演され、
同年12月に出版された作品です。
ほかの有名作品との成立順序を整理しておきます。
◯ヴァイオリンソナタ 第1-3番 Op.12
弦楽四重奏曲第1-6番 Op.18
◇交響曲第1番 Op.21
◯ヴァイオリンソナタ 第4番 Op.23
◯ヴァイオリンソナタ 第5番 Op.24
弦楽五重奏曲ハ長調 Op.29
◯ヴァイオリンソナタ 第6-8番 Op.30
◇交響曲第2番 Op.36
◯ヴァイオリンソナタ 第9番 Op.47《クロイツェル》
◇交響曲第3番 Op.55《英雄》
弦楽四重奏曲第7-9番 Op.59《ラズモフスキー》
◇交響曲第4番 Op.60
***
《ラズモフスキー》第1番は、
第1-6番までの古典的な雰囲気とはがらりと変わり、
目新しさ満載で、ベートーヴェンならではの
個性の深まりを感じさせる作品でした。
第1-6番の3曲が
交響曲第1番よりも前に作られていたのに対して、
第7-9番《ラズモフスキー》の3曲は、
交響曲第2番、第3番《英雄》、
そしてヴァイオリン・ソナタ第9番《クロイツェル》などが
作曲された「後」に生み出された作品であることがわかれば、
曲としての充実度の違いも当然のように思われました。
それなりに新鮮に響いていたはずの初期の6曲が、
《ラズモフスキー》を聴いた後だとかなり色褪せて聴こえてしまいました。
バリリ四重奏団の演奏は、
初めて聴く耳にも自然に曲の魅力が伝わる、
丁度よいバランスの演奏に仕上がっているように感じました。
これで満足なのですが、
良い曲なのでほかの方々の演奏も聴いてみたくなりました。
もう1曲、
これまで聴いた記憶のなかった
弦楽五重奏曲ハ長調 Op.29 は、成立時期を含めて、
《ラズモフスキー》よりも初期の第1-6番に近い印象の作品でした。
《ラズモフスキー》と組み合わせたからなのか、
さほど新しさを感じることはなく、かなり平凡な作品に聴こえました。
組み合わせによって印象は異なるはずなので、
ほかの組み合わせのCDはないか探してみます。
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