ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集、
7枚目を聴きました。
Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS
1) ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55
2) グルック: 歌劇《アルチェステ》序曲
3) ヘンデル:12の合奏協奏曲集より第5番 ニ長調 作品6-5 HWV323
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1950年6月20日(1)、1951年9月5日(2)、
1954年4月27日(3)、ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD7
1曲目はCD6の続きで、
1950年6月20日の演奏会から、
ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)の
交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55 が収録されています。
ベートーヴェン30代半ばの作品で、
1804年に完成、翌年に公開初演されています。
演奏は最上レベルです。
私にとって「英雄」は、
全体的にまとまりがつかない感じがして、
特別に好きな曲とは言えないのですが、
こうした別格の演奏で聴くと、やはり名曲だと思えます。
どこまでも有機的な響きのもと、
若々しいまでの情熱で一気に駆け抜けていくさまは、
第1・2番に続く、
若き日のベートーヴェンの強い意志を
伝えてくれているようで、
「英雄」の新たな魅力を発見することができました。
残念なのは、録音が今一つなことです。
フルトヴェングラーの遺産としては、
まずまず聴きやすい部類に入ると思いますが、
最近の鮮明な録音を聴きなれた耳には、
多少辛いものがありました。
***
2曲目は、1951年9月5日の演奏会から、
ドイツ出身の作曲家
クリストフ・ヴィリバルト・グルック(1714-1787)の
歌劇《アルチェステ》序曲 が収録されています。
グルック50代前半、
1767年にウィーンで初演されたイタリア語の歌劇(Wq.37)です。
十年後の1776年にパリで、
フランス語への改訂版(Wp.76)が初演されています。
通常は改訂版をもとに、
イタリア語で演奏されることが多いようなので、
フルトヴェングラーも改訂版を用いた可能性が高いですが、
楽譜を見ていないので確かなところはわかりません。
さてこの録音、
びっくりするくらい良い音です。
下手なステレオ録音よりもずっと美しく聴こえます。
そして当然のことながら、
やはりいい音で聴くとより一層、
フルトヴェングラーの凄さが際立ちます。
演奏スタイルが一昔前のものなので、
身近にこの曲を聴く機会は
もうほとんどないと思いますが、
オケの有機的な深い響きに包まれた大演奏で、
ぜひ聴いてほしい1曲です。
なおこの9月5日のコンサート、
グルックの後、ベートーヴェンの第九が演奏されていますが、
このCDには収録されていません。
***
3曲目には、
1954年4月25-27日のコンサートから、
3日目(27日)の演奏で、
ドイツ生まれの作曲家
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
(1685-1759)の
12の合奏協奏曲集より
第5番ニ長調作品6-5 HWV323
が収録されています。
ヘンデル54歳のとき(1739)の作品です。
CD6にも同曲集の第10番が収録されていて、
それに比べると、
はるかにいい音で録れているのですが、
やはり大オーケストラのぶっとい響きが、
強い違和感を感じさせて、変でした。
いい音で録れている分、
何度か聴いていると、
それなりにありかなとも思えて来ますが、
これを聴いて、
ヘンデルっていいな、
とは残念ながら思えませんでした。
なおこの三日間のコンサート、
最初にヘンデルが演奏された後、
ブラームス:交響曲第3番【CD11】
ブラッハー:管弦楽のための協奏的音楽【CD9】
シュトラウス:交響詩《ドン・ファン》【CD11】
ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》前奏曲【CD11】
が演奏されました。この全曲が、
それぞれ【CD9・11】に収録されています。
※Wikipediaの「クリストフ・ヴィリバスト・グルック」
「Alceste(Gluck)」「ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル」
「ヘンデルの楽曲一覧」の各項目を参照。
※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照。
【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】
※グルックについては、
石井宏『反音楽史』(新潮文庫)232-255頁も参照。
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