フランスのピアニスト
ジャン・ユボー(1917-1992)が
71-72歳のときに録音した
フランスの作曲家
ガブリエル・フォーレ(1845-1924)の
ピアノ曲全集(CD4枚)を聴いていきます。
まずはCD1・2に収録されている
「夜想曲」(全13曲)から。
フォーレ
ピアノ作品全集第1集より
CD1
夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(1883年)※38歳
夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(1883年)
夜想曲第3番 変イ長調 作品33-3(1883年)
夜想曲第4番 変ホ長調 作品36(1885年)※40歳
夜想曲第5番 変ロ長調 作品37(1885年)
夜想曲第6番 変ニ長調 作品63(1894年)※49歳
夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(1899年)※54歳
夜想曲第8番 変ニ長調 作品84-8(1902年)※57歳
夜想曲第9番 ロ短調 作品97(1908年)※63歳
CD2
夜想曲第10番 ホ短調 作品99(1909年)※64歳
夜想曲第11番 嬰ヘ短調 作品104-1(1913年)※68歳
夜想曲第12番 ホ短調 作品107(1916年)※71歳
夜想曲第13番 ロ短調 作品119(1922年)※77歳
(以下略)
ジャン・ユボー(ピアノ)
録音:1988年10月1989年4月、アル・アディアール、パリ
【WPCS-10982/3】
フォーレのピアノ曲との出会いは、
もう十年以上前のこと、
フランスのピアニスト、
エリック・ハイドシェック(1936- )さんが
24・26歳のときに収録した「夜想曲」全集を聴いたのが
初めてでした。
しかしそのときは、
ショパンの夜想曲のようなスタイルを想像していたため、
ずいぶん異質な音楽に戸惑い、
つかみどころがない感じがして、
よくわからないまま終わってしまいました。
美しいけれども
断片的に過ぎるメロディが浮かんでは消え、
調性も不安定な感じで、
いったいどこを楽しめばよいのだろう、
と思いました。
それから時折、
聴き返すことはありましたが、
同じ印象しか持ちませんでした。
しかし最近になって、ようやく
私の耳がフォーレに馴染んできたのか、
メロディでなく、和声のゆらぎを聴くんだなと、
ふと開眼する瞬間がありました。
音のかたまりをそのまま受け止めて、
絶妙にうつろいゆく和音のゆらぎを楽しむ感覚は、
バッハのオルガン曲を聴くとき、
和音のかたまりに身を委ねるのに似ているかもしれません。
そんな体験をしたのは、
最初のうちはよくわからなかった
ハイドシェックさんのCDだったのですが、
この録音、惜しむらくは音質があと一歩で、
ほかに良いCDはないかと探していたところ、
ユボーさんの録音に出会いました。
音質は極上、
演奏もゆったりとしたテンポで、
すべての音をいつくしみながら丁寧に表現されていて、
フォーレ独特の詩情あふれる名演奏です。
***
今回しばらく夜想曲を聴き直してみて、
どれもゆったりした曲調なので、
13曲続けて聴くのは若干しんどいように感じました。
コンサートなどで取り上げる場合、
次の4つのかたまりで弾かれると、
全体像がつかみやすいように思いました。
夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(1883年)※38歳
夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(1883年)
夜想曲第3番 変イ長調 作品33-3(1883年)
夜想曲第4番 変ホ長調 作品36(1885年)※40歳
夜想曲第5番 変ロ長調 作品37(1885年)
夜想曲第6番 変ニ長調 作品63(1894年)※49歳
夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(1899年)※54歳
夜想曲第8番 変ニ長調 作品84-8(1902年)※57歳
夜想曲第9番 ロ短調 作品97(1908年)※63歳
夜想曲第10番 ホ短調 作品99(1909年)※64歳
夜想曲第11番 嬰ヘ短調 作品104-1(1913年)※68歳
夜想曲第12番 ホ短調 作品107(1916年)※71歳
夜想曲第13番 ロ短調 作品119(1922年)※77歳
第1~3番は、
もともと作品33でひとまとまりなのですが、
実際一番わかりやすいと思います。
ほんの少しショパンの影響も感じられるようでした。
第4~6番は、
恐らく夜想曲の中で最も充実した3曲で、
フォーレらしい高貴で親しみやすい音楽です。
第7番からは、
軽めの第8番をはさみながらも、
徐々に難渋さを増していく感じがあります。
とくに第11-13番は、
ユボーさんの演奏だと、
晩年の物寂しい情感がそのまま反映されているようで、
私にはまだ良くわかりかねるところもありました。
演奏は、
6番まではユボーさんの
ゆったりしっとりじっくりと歌わせる感じが
今のお気に入りです。
7番からは
一気呵成にかけぬける
ハイドシェックさんの方がわかりやすく、
強い説得力がありますが、
さすがに若さゆえ軽過ぎの感もあります。
恐らくまた少し年齢を重ねると、
より一層フォーレの音楽が身にしみるようになって来ると思うので、
また感想を改めたいと思います。
※Wikipediaの「ガブリエル・フォーレ」「ジャン・ユボー」「エリック・ハイドシェック」の各項目を参照。
※作品の成立年代は、
藤井一興/フォーレ:夜想曲集【FOCD-3465】
に収録されている西原稔氏のCD解説を参照しました。
藤井さんの演奏は、
楽譜に正確によく再現されていますが、
フォーレ独特のむせ返るような詩情にはとぼしく、
私には全体的に違和感がありました。
決して無味乾燥な演奏ではないので、
ユボーやハイドシェックを聴く前であれば、
十分に楽しめると思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿