愛知県美術館まで企画展「シャガール展」を観に行ってきました。
昨年の6月から、
北海道立近代美術館(2013.6.29-8.25)
宮城県美術館(9.3-10.27)
広島県美術館(11.3-12.25)
静岡市美術館(2014.1.2-3.30)
と全国を巡回してきて、
愛知県美術館が最後の会場です(4.17-6.8)。
企画・構成は、
「北海道立近代美術館/北海道新聞/キュレイターズ」、
愛知県会場の主催は、
「愛知県美術館/中日新聞社」となっています(図録2頁)。
ロシア出身のフランスの画家
マルク・シャガール(Marc Chagall 1887.7-1985.3)は、
個人的に大好きな画家の一人です。
彼独特の「青色」の表現に惹かれていて、
明るく暖かく、やさしい雰囲気に包まれた作品が多く、
幻想的な色調の中に、
疲れた心をやんわりと癒してくれる作用があるようです。
現代の芸術家にありがちな、
暴力的なところや、
冷たいネクラな印象がないのも好ましく、
観ていると、
絵を描くのが大好きな人なんだろうな、
と感じさせられます。
今回、
パリ・オペラ座の天井画について、
スケッチから完成に至るまでの過程を体感できたのは貴重な体験でした。
オペラ座の完成された作品は、
大きすぎて何とも評価しかねるのですが、
絵画としてほどよい大きさの
「オペラ座天井画のための最終下絵」【図録42・43頁 1-005・006】
「オペラ座天井画のための下絵」【図録50・51頁 1-014・015】
には感銘を受けました。
***
版画集『ダフニスとクロエ』は、
【図録71-81頁 1-032~073】
これまでも何度か目にしているはずですが、
美しい幻想的な色彩にうっとり。
もともとは2世紀末に、
古代ギリシャの詩人ロンゴスによって、
古代ギリシャ語で書かれた恋愛物語です。
1912年に、
ラヴェルのバレエ音楽《ダフニスとクロエ》が初演され、
1958・59年にバレエが再演される際、
シャガールが舞台装置と衣装の制作を担当しました。
そのしばらく前から、
シャガールは《ダフニスとクロエ》の挿絵制作の以来を受けており、
1961年に、
シャガールの版画集《ダフニスとクロエ》として出版されました。
(以上、図録70・83頁参照)
こんな時代関係は今回初めて知ったので、
改めてラヴェルの《ダフニスとクロエ》に興味が出て来ました。
近々聴き直してみようと思います。
***
他にも《火の鳥》や《魔笛》の演出にも関わっていたことや、
宗教(ユダヤ教)をモチーフにした絵画もたくさん描いていたことは、
今回初めて知りましたが、
どの作品も観ても、
すぐにああシャガールだ!とわかる、
暖かさやユーモアが感じられました。
ただし宗教をモチーフにした作品は、
その宗教の当事者にとって大いに意味があるでしょうが、
部外者からみるとそれほど面白いものではありませんでした。
この展示会で、
個人的に一番大きく心動かされたのは、
そうした大きなモチーフに基づく作品ではなく、
花瓶に生けられた花々を描いた
「サン=ポールのアトリエ」【図録305頁 3-007】
でした。何よりパッと観、
明るく華やかな印象なのですが、
シャガールの特徴である「青」よりも、
「白」をうまく使っていて、
全体として洗練された穏やかな印象を受けました。
もう一つ、
「青」を基調とする中で、
静かで穏やかな暖かい雰囲気を醸し出している
「花」【図録297頁 3-011】
も気に入りました。
シャガールの描く静物も、
独特の味わいがあることを発見できました。
思いのほか楽しい時間が過ごせましたので、
次は名古屋ボストン美術館の「ミレー展」に足を運びたいなと思っています。
※今回の展覧会図録『Nouveaux regards sur Marc Chagall』を参照。
※Wikipediaの「マルク・シャガール」「ダフニスとクロエ(ロンゴス)」「ダフニスとクロエ(ラヴェル)」を参照。
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