日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で、
フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)の
交響曲第1番を聴きました。
指揮者42歳の時(1962.5)の録音です。
シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 作品39
渡邊暁雄(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
録音:1962年5月7・8日、東京文化会館
【TWCO-29/32】CD1 ※2012年12月発売
交響曲第1番 ホ短調 作品39 は、
シベリウスが33歳の時(1899.4)に初演されました。
同じ年(1899.11)に、
交響詩《フィンランディア》作品26
も初演されています。
この7年前、
26歳の時(1892.4)に、
クレルヴォ交響曲 作品7
が初演されていますが、
初演後、生前に再演されることはなく、
交響曲として通番が付されることはありませんでした。
第1番の初演後、3年をへて
36歳の時(1902.3)に初演されたのが、
交響曲第2番 ニ長調 作品42
です。
***
第1番は、
北欧のほの暗い雰囲気たっぷりの出だしで、
思わず惹きつけられるのですが、
意外にまとめにくいところがあるようで、
しばらく聴いていると間延びした感じになって、
途中で飽きが来てしまうことも多いです。
ベルグルンド&ボーンマス響
の名演を聴いて(1974年録音)、
ようやくこの曲の全体像をつかんだ気でいましたが、
渡邉暁雄&日本フィル
の旧盤を聴いて(1962年録音)、
ベルグルンドを凌ぐ感銘を受けました。
両者ともに、
楽譜への深い共感にもとづいた熱気のある演奏で、
甲乙つけがたい名演だと思いますが、
ベルグルンドのほうが、
コンサート会場で実際に聴くような、
オケ全体をひとまとめに捉えた、
野太い感じの自然な音作りなのに対して、
渡邉暁雄のほうは、
楽譜のすべての音を分離よく捉えられた、
セッション録音独特の音で、
コンサートではまず聴こえないところまで聴こえて来て、
最初のうちは多少の違和感もありました。
しかしいかにも人工的に作り込んでいるわけではなく、
不思議な統一感があって、
シベリウスの頭の中で鳴っていたはずの音が、
すべて有機的につながりをもって聴こえてくる風なので、
有無を言わさない強い説得力がありました。
***
ちなみに久しぶりに
渡邊暁雄&日本フィル
の新盤(1981年9月録音)も聞き直してみましたが、
オケの精度によるのか、
慣れないデジタル録音によるのか、
フォルテが耳にうるさく響き、
曲の美しさにひたる以前の問題で、
全曲聴き通すことができませんでした。
旧録音のほうが、
圧倒的に優れていると思います。
なお上に掲げた、
ベルグルンド&ボーンマス響 (1974年9月録音)
は、ぜひ輸入盤【EMI 50999 9 7366 2 5】を。
2012年6月に
日本で再販された盤もありますが、
輸入盤とはほぼ別物の残念な音質なので、
あまり評価できません。
ベルグルンドには12年後の再録音
ベルグルンド&ヘルシンキ・フィル (1986年5月録音)
もあり、そちらのほうが一般には有名ですが、
これも最近(2015年5月)、
日本で再販された盤は残念な音質なので、
選ぶなら輸入盤【EMI 7243 4 76963 2 9】だと思います。
しかしこの輸入盤を聴いても、
万全な演奏ではないように感じます。
前より解釈が深まっているのは明らかなのですが、
その分持ってまわった感じがして、
不思議と心に響いて来ないのです。
細部が今一つ明快に聴こえないところもマイナスです。
リマスター次第のようにも感じるので、
評価は別の機会に置いておきます。
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