2014年3月31日月曜日

ウィーン室内合奏団のモーツァルト:ディヴェルティメント第17番&第1番(1991年4-5月録音)

オーストリアのザルツブルク生まれの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ディヴェルティメント第17番と第1番を、

ユーゴスラヴィア生まれのヴァイオリニストで
ウィーン・フィルのコンサートマスターを務めた
ゲルハルト・ヘッツェル(1940.4-1992.7)率いる
ウィーン室内合奏団の演奏で聴きました。


W.A.モーツァルト
1) ディヴェルティメントニ長調
  行進曲 ニ長調 K.445(K6-320c)
  ディヴェルティメント(第17番)ニ長調 K.334(K6-320b)
2) ディヴェルティメント(第1番)変ホ長調 K.113(初稿)

ウィーン室内合奏団
 ゲルハルト・ヘッツェル(第1ヴァイオリン)
 ヨーゼフ・ヘル(第2ヴァイオリン)
 ハット・バイエルレ(ヴィオラ)
 アーダルベルト・スコチッチ(チェロ)
 ヘルベルト・マイヤー(コントラバス)
 フランツ・ゼルナー(ホルン)
 フォルカー・アルトマン(ホルン)
 ノルベルト・トイブル(クラリネット)*2)
 ヨハン・ヒントラー(クラリネット)*2)

録音:1991年4月29日-5月4日、ウィーン、カジノ・ツェーガーニッツ
【COCO-70441】

 ディヴェルティメント 第1番 変ホ長調 K.113 は、

モーツァルト15歳の時(1771)の作品。

 ディヴェルティメント 第17番 ニ長調 K.334 と、
 行進曲ニ長調 K.445 は、

モーツァルト24歳の時(1780)の作品です(異説あり)。

行進曲K.445は、
ディヴェルティメントK.334への導入曲として
追加で作曲されたもので、一緒に演奏されることが多いそうです。


モーツァルトのディヴェルティメントは、
第1番から第17番までの17曲とするのが普通です。

この時期はちょうど、
交響曲 第12番 ト長調 K.110 から
交響曲 第34番 ハ長調 K.338 まで
が作られた時期に当たるので、

後期の6大交響曲が作曲される前に、
ディヴェルティメントの作曲は終わっていたことになります。

この後、
32歳の時(1788)に作曲された

 弦楽三重奏のためのディヴェルティメント 変ホ長調 K.563

もありますが、こちらはふつう通番で呼ばれることはありません。


  ***

このCD、
モーツァルトのディヴェルティメントだからと言うよりは、

贔屓のヴァイオリニスト、
ゲルハルト・ヘッツェル氏率いる
ウィーン室内合奏団の演奏という理由で手に入れいました。

ヘッツェルが登山事故で亡くなる(1992年7月)1年前の録音です。

同じ時期に、
ディヴェルティメントの第7・10・15番等も録音されているので、
事故がなければ、他にも色々な作品が収録されていたかもしれません。


ヘッツェル氏のヴァイオリン、

出しゃばった所、気負った所がどこにもなく、
楽譜に書かれたことを忠実に再現するスタイルで、

曲の本質をありのままで伝えようとする
誠実な人柄が偲ばれる演奏なので、

刺激的なものを求めると肩透かしにあうかもしれません。


しかし凡庸なわけではなく、
絹のようになめらかな音色で、
自然な流れを失わない範囲で、
切れ味の鋭い、品のある演奏を聴かせてくれます。

繰り返し聴き込んでいきたい名演です。


※梅沢敬一氏によるCD解説を参照。

ルービンシュタインのショパン:ワルツ集(1963年6月25日録音)

ポーランド立憲王国〔1815-1918〕生まれのピアニスト
アルトゥール・ルービンシュタイン(1887.1-1982.12)の演奏で、

ワルシャワ公国〔1807-1815〕生まれの作曲家
フレデリック・ショパン(1810.3?-1849.10)のワルツ集(全14曲)を聴きました。


フレデリック・ショパン(1810-1849)
ワルツ集(全14曲)

 第1番 変ホ長調 作品18 《華麗なる大円舞曲》
 第2番 変イ長調 作品34の1《華麗なる円舞曲》
 第3番  イ短調  作品34の2《華麗なる円舞曲》
 第4番  ヘ長調  作品34の3《華麗なる円舞曲》
 第5番 変イ長調 作品42
 第6番 変ニ長調 作品64の1《子犬》
 第7番 嬰ハ短調 作品64の2
 第8番 変イ長調 作品64の3
 第9番 変イ長調 作品69の1《告別》〔遺作〕
 第10番 ロ短調  作品69の2〔遺作〕
 第11番 変ト長調 作品70の1〔遺作〕
 第12番 ヘ短調  作品70の2〔遺作〕
 第13番 変ニ長調 作品70の3〔遺作〕
 第14番 ホ短調 (遺作)

アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
録音:1963年6月25日、RCA Italiana Studios, Roma
【SICC-30056】


先日「Sony Music Japan の Blu-spec CD2」で、
ルービンシュタインが弾くショパンの夜想曲集を聴き、

音質が一新されていたことに驚いて、
ルービンシュタインのショパンを聴き直していくことにしました。


今回はワルツ集を聴いてみましたが、

以前の、
どこか古さを感じさせる、
若干ひなびたような音質から、

ピアノ本来の、
芯のある美しい響きを堪能できる音質へと変化しており、
このワルツ集への認識を新たにすることができました。

ルービンシュタイン76歳の時の録音で、
恣意的なところのない、力みのない、
達観した感じのある演奏なので、

ピアノの音が心地よく響かないと、
本当に何もしていない退屈な演奏のように聴こえるのですが、

ピアノの音が見違えったおかげで耳に心地よく響き、
存分に楽しむことができました。


これがベストかと言われると、
もう少し覇気にあふれた面があっても良いのかもしれませんが、

ルービンシュタインが若いころから
繰り返し演奏してきたショパンの結論として、

今後も聴き続けていきたいCDです。


※Wikipediaの「アルトゥール・ルービンシュタイン」「フレデリック・ショパン」を参照。

金聖響&神奈川フィルの:マーラー:交響曲第10番(2013年2月録音)

『レコード芸術』2014年2月号の、
宇野功芳氏による推薦評にひかれて、

オーストリア帝国(1804成立-1867崩壊)に生まれ、
オーストリア=ハンガリー帝国(1867成立-1918崩壊)に没した

作曲家グスタフ・マーラー(Gustav Mahler 1860.7-1911.5)の遺作
交響曲第10番嬰ヘ短調を、

イギリスの音楽学者
デリック・クック(1919.9-1976.10)による補筆完成版で聴きました。

日本生まれの指揮者
金聖響(1970.1-)が指揮する

日本のオーケストラ
神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏。

金氏43歳の時の録音です。


マーラー:交響曲第10番[デリック・クック補筆完成版]

グスタフ・マーラー
交響曲第10番嬰ヘ長調(デリック・クック補筆完成版)

神奈川フィルハーモニー管弦楽団
金聖響(指揮)
録音:2013年2月14・15日、横浜みなとみらいホール
【OVCX-00073】


マーラーが亡くなる前年50歳の時(1910.7)に構想を得、
未完成のままで残された作品です。

クック版は、
1960年に第1稿、
1964年に第2稿、
1972年に第3稿が初演され、
第3稿が「最終稿」とされ、1976年に出版されました。

クックの亡くなる前年に第3稿(第2版)が完成し、
クックの没後十年以上をへた1989年に出版されました。

解説に明言されていませんが、このCDは、
クック版第3稿(第2版)による演奏と思われます。


これまで第10番は、マーラーの交響曲の、
第1番から第9番までの大きな流れからどこか浮いている感じがして、

自分にとって今ひとつわからない曲だったのですが、

今回のCDではじめて、
全曲の見通しよく感動のうちに聴き通すことができました。


第9番の先に何があるのかと、
どちらかといえば第10番には懐疑的だったのですが、

いったん死の淵を覗きこんだ上で、
その先にもやはり前向きに生きるほかない、
人生のかなり深いところをえぐり抜いている作品だと思いました。


聖響さんの深い楽譜の読みと、
それに答える神奈川フィルの大健闘の賜物でしょう。

第9番につづくマーラーの大交響曲であることが深く実感できました。

ザンデルリンクのCD以外は
ほとんど聴いて来なかったので、
改めてほかのCDも聴いてみようと思っています。


※Wikipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第10番(マーラー)」を参照。

2014年3月27日木曜日

ゼルキンのブラームス:ピアノ協奏曲第1・2番(1968・66年録音)

チェコ出身のピアニスト
ルドルフ・ゼルキン(1903.3-1991.5)が、

ハンガリー出身の指揮者
ジョージ・セル(1897.6-1970.7)の指揮する

アメリカ合衆国のオーケストラ
クリーブランド管弦楽団と組んで録音した

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス(1833.5-1897.4)の
ピアノ協奏曲第1番
ピアノ協奏曲第2番

を聴きました。

第1番はゼルキン65歳(1868.4)
第2番はゼルキン62歳(1866.1)の時の録音です。


DISC1
ヨハネス・ブラームス
ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15

Disc2
ヨハネス・ブラームス
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)
ジョージ・セル(指揮)
クリーブランド管弦楽団
録音:1968年4月19・20日(第1)、1966年1月21・22日(第2)。
クリーブランド、セヴェランス・ホール
【SICC 1660~1】


ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15 は、

ブラームスが23歳の時(1857.1)に完成し、
25歳の時(1859.1)に初演された作品です。

 セレナーデ第1番ニ長調作品11
 セレナーデ第2番イ長調作品16

の間にある初期の管弦楽曲です。


ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83 は、

ブラームスが48歳の時に完成し、
初演(1881.11)された作品です。

 交響曲第2番 ニ長調 作品73
 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
 大学祝典序曲 ハ短調 作品80
 悲劇的序曲 ニ短調 作品81

に続く、充実期の管弦楽曲です。


この録音、
これまで聴いたことがなかったのですが、
年末に名古屋のTOWER RECORDで試聴し、
驚いて購入しました。

2曲とも心持ち速めのテンポで、
ソリストと指揮者とオーケストラが一体となって、
火の玉のようになって突き進む、熱い演奏です。

セル独特の一気呵成な感じと、
朴訥としながらどこかに軽やかさのあるゼルキンの音色とが心地良く、

純音楽的な方向へ、
究極まで突きつめた演奏になっていると思います。

ブラームスのピアノ協奏曲では、
熱さで一息に聴かせられる演奏に出会ったことがなかったので、
これは嬉しい発見でした。


セルもゼルキンも、
ふだんの私の好みから少し外れたところにいるのですが、
このブラームスは凄いです。


  ***

なおこのCD、

Disc1には、
セルゲイ・プロコフィエフ
ピアノ協奏曲第4番 変ロ長調 作品53「左手のための」

 ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)
 ユージン・オーマンディ(指揮)
 フィラデルフィア管弦楽団
 録音:1958年3月30日、フィラデルフィア、タウン・ホール

Disc2には、
ベーラ・バルトーク
ピアノ協奏曲第1番 Sz.83

 ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)
 ジョージ・セル(指揮)
 クリーブランド管弦楽団
 録音:1962年4月20・21日、クリーブランド、セヴェランス・ホール

も収録されていますが、

ほぼ初めて聴く曲で、数回聴くだけでは、
どこを楽しめばよいのかわかりませんでした。


※Wikipediaの「ルドルフ・ゼルキン」「ジョージ・セル」「クリーブランド管弦楽団」を参照。