2018年12月23日日曜日

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲第6番(2000年3月録音)

朝比奈隆(1908年7月9日-2001年12月)氏が亡くなる前年に、
大阪フィルハーモニー交響楽団とともに収録された

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月-1827年3月)
交響曲全集から、第6番を聴きました。

朝比奈隆91歳の時(2000年3月10・12日)の録音です



ベートーヴェン
Disc1
①交響曲第6番 ヘ長調 作品68《田園》
~2000年3月10日 大阪、フェスティバルホール

Disc2
②交響曲第6番 ヘ長調 作品68《田園》
~2000年3月12日 愛知県芸術劇場

 大阪フィルハーモニー交響楽団
 朝比奈隆(指揮)
【OVCL-00020】※2000年5月発売

交響曲第6番《田園》は、
ベートーヴェン38歳の時(1808年12月22日)に
第5番とともに初演されました。

初演時は《田園》のほうが先に紹介され、
 交響曲第5番ヘ長調《田園》
 交響曲第6番ハ短調
とされていました。


  ***
このCDには10日の大阪公演と、
12日の愛知公演が収録されています。

どちらもほぼ同じ印象の演奏ですが、
愛知公演では後半の楽章に致命的なミスがあるので、
どちらか選ぶなら、大阪公演のほうだと思います。

ただ、その大阪公演にしても、
実に素朴な、何も構えたところのない演奏で、
あれっ、これでいいのかなと思っているうちに
最後まで来てしまう、そんな演奏でした。

特に期待をしなければ、
また、無個性なきれいなだけの演奏と比べるなら、
ふつうに楽しめると思いますが、
正直なところ、しばらく聴き込んだ印象では、
今一つ気の抜けた踏み込みの足りない演奏のように感じました。

今後聴き直して、
最晩年の枯淡の境地として気が付くところもあるのかもしれませんが、
今はそれほどの演奏には思えませんでした。

なお気になって、
97年12月に Canyon Classics から発売された全集で
《田園》を聴き直してみたところ、
97年録音のほうが断然優れた演奏に聴こえました。
詳しくは別の機会に譲ります。


  ***

エクストンから
2008年12月に発売された全集のセット盤では、
3月10日の大阪公演(①)のほうが収録されています。






にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

2018年12月9日日曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集その7(1971-74年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931年1月- )が、
40代前半の時(1971-74年)に録音した

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797年1月 - 1828年11月)の
ピアノ作品集の7枚目(最後の1枚)を聴きました。


シューベルト:ピアノ作品集
CD7
①幻想曲ハ長調 作品15《さすらい人》 D760(1972年録音)
②楽興の時 作品94 D780(1972年録音)
③12のドイツ舞曲(レントラー)D790(1972年録音)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
【Eloquence 480 1218】※2008年発売


①《さすらい人幻想曲》作品15 は、
シューベルト25歳の時(1822)に作曲、出版された作品です
4楽章からなる作品ですが、続けて演奏されます。

リストがピアノ・ソナタを作曲する際に、
大きな影響を受けたといわれれば、
何となく似ていることに気がつかされます。

リストによる《さすらい人幻想曲》の
ピアノ協奏曲への編曲版もあるそうなので、
いずれ聴いてみようと思います。

若々しい印象の作品なので、
最後の作品群のなかに混ぜられると場違いな感じもしますが、
充実した内容のよく出来た作品だと思います。


②《楽興の時》作品94 は、
26から31歳(1823-28)までに作曲された作品です
即興曲よりもさらに色々な様式の小品を6曲。
一見無造作に、
しかし絶妙なバランスでまとめられていて、
小さな歌曲集を聴くような趣きがありました。

第3番が突出して有名ですが、
6曲全体として不思議な統一感を醸し出しているようにも聴こえたので、
ほかのピアニストの演奏も聴いてみたいと思いました。


③ 12のドイツ舞曲(レントラー) D790 は、
26歳の時(1823年5月)に作曲された作品です

調べてみると、シューベルトは
ピアノによる舞曲集を他にもたくさん残しているのですが、
その中でも良くできた1曲のようで、
かのコルトーを始めとして録音がいろいろ見つかりました。

シューベルトの舞曲は、
今一つ霊感に乏しい軽めのものが多い印象だったので、
隠れた名曲に出会えた気がしました。

ソナタだけでは寂しいので、
今後は舞曲集にも注目していきたいと思います。


  ***

ブレンデルのシューベルト、
無色透明、純粋無垢な路線で、
一聴ほんの少し押しが足りないような、
没個性的な印象を受けるのですが、

聴き込むほどに、
曲本来の美しさが伝わって来て、
シューベルトの面白さをじっくり味わうことが出来ました。

ただし、
ある程度聴き込まなければ、
良さが伝わりにくい面もあるので、
これがシューベルトのベスト演奏かといわれれば、
私の好みとは違うような気もします。

ブレンデルは15年程をへた
50代後半(1987-88年)のときに、
これらの曲を再録音しているので、
そちらを聴けば、今回の不満が解消されている可能性は高いですが、
それはもう少し先の楽しみに取っておきます。


最近、
ウィーン生まれのピアニスト
パウル・バドゥラ=スコダ
(Paul Badura-Skoda, 1927年10月6日- )が
39-43歳の時(1967年5月-71年5月)に録音した、
シューベルトのピアノ・ソナタ全集を手に入れたので、
次はこちらを聴いていこうと思っています。

ブレンデルよりずっと前の録音かと思っていたら、
ブレンデルより3年歳上なだけで、
録音もほぼ同じ時期であることがわかりました。

どちらかというと、ブレンデル以上に、
シューベルトの演奏に生涯を捧げているピアニストなので、
期待して聴いてみたいと思います。



にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

2018年12月2日日曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集その6(1971-74年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931年1月- )が、
40代前半の時(1971-74年)に録音した

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797年1月 - 1828年11月)の
ピアノ作品集の6枚目を聴きました。


シューベルト:ピアノ作品集
CD6
①4つの即興曲 作品90 D899(1972年録音)
②4つの即興曲 作品142 D935(1975年録音)
③16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ 作品33 D783(1974年録音)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
【Eloquence 480 1218】※2008年発売

ブレンデルが40代前半のときに録音した
シューベルト:ピアノ作品集、
残るは2枚のみとなりました。

ソナタはすべて聴いて、
あとは2つの即興曲集と「楽興の時」、
そして「さすらい人幻想曲」が残っています。


CD6枚目には、
2つの即興曲集が収録されています。

 ①4つの即興曲 作品90 D899
 ②4つの即興曲 作品142 D935

は、シューベルトが30歳(1827年)の頃に作曲されました

亡くなる年(1828)に、
最後の3つのピアノソナタが書かれますが、
その前年に生み出された傑作です。

 ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調 D958
 ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D959
 ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960


有名な曲集ですが、子供の頃に、
私の母が運営するピアノ教室で、
度々聴き馴染んでいたからか、
凡庸な練習曲の一つというイメージがついてしまって、
霊感あふれる傑作だと確信できたのは最近のことです。

今回、ブレンデルのくせのない美しいタッチのピアノで、
シューベルト独特のメロディと和声が心に入って来て、
しみじみ良い曲であることを実感できました。

聴き返すたびに染みてくる分、
一回聴くだけだとほんの少し、
個性が弱いようにも感じるので、
より有名な再録音のほうも聴いてみたいなと思いました。


このCDには、もう一曲、
③16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ 作品33 D783
が収録されています。
シューベルトが26-27歳の頃(1823-24)に作曲された作品です。

数回繰り返して聴いた印象では、
さほど特徴のないスケッチを寄せ集めただけの、
①②と同列には扱えない作品でした。

①②の印象がぼやけてしまう分、
収録しなかったほうが良かったのでは、
と思いました。



にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ