2017年12月25日月曜日

NAXOSのモーツァルト:ホルン協奏曲全集(1988年録音)

スロバキア共和国生まれのホルン奏者
ミロシュ・ステヴォーヴ
(Milos Stevove, 1939- )の独奏、

スロバキア共和国の室内オーケストラ
カペラ・イストロポリターナ
(Capelia Istropolitana)の伴奏、

ウクライナ生まれの指揮者
ヨーゼフ・コペルマン
(Jozef Kopelman,1947- )の指揮で、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月-1791年12月)の
ホルン協奏曲全集を聴きました。

 伴奏のカペラ・イストロポリターナは、
 スロヴァキアの首都ブラチスラヴァにあるオケ
 スロバキア・フィルハーモニー管弦楽団
 (Slovak Philharmonic Orchestra, 1949年設立)
 のメンバーによって、1983年に設立された室内オーケストラであり、

 独奏のミロシュ・ステヴォーグは、
 1981年からスロバキア・フィルの首席ホルン奏者を務めており、
 録音時、49歳でした。


モーツァルト
 ①ホルン協奏曲第1番 ニ長調 K.412
 ②ホルン協奏曲第2番 変ホ長調 K.417
 ③ホルン協奏曲第3番 変ホ長調 K.447
 ④ホルン協奏曲第4番 変ホ長調 K.495
 ⑤ロンド 変ホ長調 K.371

 ミロシュ・ステヴォーヴ (ホルン)
 カペラ・イストロポリターナ
 ヨーゼフ・コペルマン (指揮)

録音:1988年11月。ブラチスラヴァ、スロバキア・フィルのコンサートホール。
【NAXOS 8.550148】1989年発売


古本屋で偶然手に入れた1枚です。

ホルン協奏曲は若いころ、
ペーター・ダム&ブロムシュテットの録音を聴いて、
退屈な印象しか持てなかったので、
あまり聴いて来ませんでした。

独奏のミロシュ・ステヴォーヴについて
他にどんな録音があるのか調べてみると、
NAXOSの1枚があるだけでした。

管楽器について詳しいことはわからないのですが、
実際に聴いてみると、

やはりそれほど濃い作品ではありませんが、
仕事のBGMとしては最適。

誰にも聴きやすく、わかりやすい演奏で、
最後まで楽しみながら聴き進めることができました。


テクニック的に、
それほど冴えているようには感じないのですが、

十分な技量をもったソリストと、
わが街のふつうのオーケストラが互いによく調和して、
理想的な演奏のように感じました。

他にも優れた演奏はあるでしょうが、
モーツァルトのホルン協奏曲を、初めて、
素朴で楽しい作品だと認識できたので、
私にとって画期的なCDとなりました。


既存の録音では今一つ、
モーツァルトのホルン協奏曲の良さがわからない方には、
作品の魅力を伝える好演としてお薦めしておきます。



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2017年12月18日月曜日

NAXOSのモーツァルト:クラリネット協奏曲&ファゴット協奏曲(1989年録音)

NAXOSの旧録音を
AVEXから廉価で再販しているシリーズから、


オーストリア生まれのクラリネット奏者
エルンスト・オッテンザマー
(Ernst Ottensamer、1955-2017)の独奏、

チェコ生まれのファゴット奏者
シュテファン・トゥルノフスキー
(Stepan Turnovsky, 1959- )の独奏、

オーストリアの指揮者
ヨハネス・ヴィルトナー
(Johannes Wildner, 1956年 - )の指揮する
ウィーン・モーツァルト・アカデミーの伴奏で、


オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月-1791年12月)の
クラリネット協奏曲ファゴット協奏曲を聴きました。


モーツァルト
①クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
②ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191(186e)

 ①エルンスト・オッテンザマー(クラリネット)
 ②シュテファン・トゥルノフスキー(ファゴット)
 ヨハネス・ヴィルトナー(指揮)
 ウィーン・モーツァルト・アカデミー
 録音:1989年10月1-15日、ハンブルク、ハイドン・ホール
【AVCL-25667】2007年12月発売


 クラリネット独奏のオッテンザマーは、
 1978年にウィーン・フィルのメンバーとなり、
 1983年から首席クラリネット奏者を務めました。

 ファゴット独奏のトゥルノフスキーは、
 1978年からウィーン・フィルのメンバーとなり、
 1985年から首席ファゴット奏者を務めました。

 伴奏のウィーン・モーツァルト・アカデミーは、
 ウィーン・フィルとウィーン交響楽団の
 メンバーからなる室内オーケストラですが、

 NAXOSで録音されたCD1枚のほかは
 録音が見当たらないので、この録音のために
 臨時編成されたンサンブルかもしれません(未確認)。


  ***

NAXOSのモーツァルトはどうだろうと、
クラリネット協奏曲とファゴット協奏曲を収めた1枚を買ってみたところ、

曲の魅力が率直に伝わる好演だったので、調べてみると、
ウィーン・フィルの首席奏者による録音であることを知りました。

だから絶対に良いとも言い切れないはずですが、
どちらも安心して身を任せられる名演に仕上がっていると思います。

とくにファゴット協奏曲は、
クラリネットのに比べると平凡な印象で、
これまで良い曲だと思ったことがなかったのですが、
初めて感動のうちに聴き通すことが出来たので、
私の中で画期的な録音となりました。

クラリネット協奏曲のほうは
名演がひしめいているので、
これだけが良いとは言えないでしょうが、
個人的にはこれくらい聴けたら十分な演奏でした。

 ウィーン・フィルのメンバーによる
 モーツァルトの木管協奏曲集は、
 ベームの指揮による録音が有名ですが、
 オケの伴奏が分厚すぎて、
 独奏に聴き取りにくいところがあるので、
 こちらのほうがはるかに良い録音だと思いました。


  ***

NAXOSで発売されたもとのCDには、
オーボエ協奏曲も併録されているので、

そちらも聴いてみたくなり、
中古で購入してみました。


モーツァルト
①ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191(186e)
オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
③クラリネット協奏曲 イ長調 K.622

 ①シュテファン・トゥルノフスキー(ファゴット)
 ②マーティン・ガブリエル(オーボエ)
 ③エルンスト・オッテンザマー(クラリネット)

ヨハネス・ヴィルトナー(指揮)
ウィーン・モーツァルト・アカデミー
録音:1989年10月1-15日、ハンブルク、ハイドン・ホール
【NAXOS 8.550345】1993年1月発売

オーボエ独奏の
マーティン・ガブリエル
(Martin Gabriel, 1956- )は、
他の二人と同じく、
1978年にウィーン・フィルのメンバーとなり、
1987年から首席オーボエ奏者を務めた人物です。

こちらもやはり、表面的に美しくも、
あまり心に残らない演奏を聴くことが多いのですが、

素朴で味わい深く、耳に残る音色で、
純粋にこの協奏曲を楽しむことができました。


  ***

音質については、
独奏楽器はどちらもはっきり聴き取れるのですが、

オケの伴奏部分は、
ナクソスのほうがあらっぽく大まかな印象で、
多少聴き取りにくく、

エイベックスのほうが、
洗練されて明晰な音になっているので、
どちらかといえば、エイベックスのほうがお薦めです。


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2017年12月11日月曜日

名古屋市美術館の「ランス美術館展」

去る12月3日(日)、
名古屋市中区栄にある名古屋市美術館まで、

「ランス美術館展」

を観に行って来ました。

「会期:平成29年10月7日(土)
       ~12月3日(日)
 会場:名古屋市美術館
 主催:名古屋市美術館、中日新聞社」

全国7箇所で展示され、
名古屋はそのうち最後の会場となっていました。

 ①熊本県立美術館(28年7月~9月)
 ②静岡市美術館(28年9月~10月)
 ③福井県立美術館(28年11月~12月)
 ④公益財団法人 ひろしま美術館(29年2月~3月)
 ⑤東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(29年4月~6月)
 ⑥山口県立美術館(29年7月~8月)

ランス美術館について図録のごあいさつによると、

「フランス北東部のシャンパーニュ地方に位置する
 ランス市は、歴代のフランス国王が戴冠式を行ってきた
 大聖堂を擁する歴史ある古都です。

 その中心街に建つランス美術館
 フランス革命期の18世紀末に起源を持ち、
 中世美術から現代美術まで幅広い所蔵品を有する
 フランス絵画の宝庫として世界的に知られています。

 ランス市では1790年代初頭からコレクションが始まり、
 市庁舎のなかで定期的に公開されてきました。

 そして今から1世紀前の1913年10月
 中世のサン=ドニ修道院の遺稿を改築した
 新美術館として開館し、その由緒ある佇まいは
 珠玉のコレクションとともにフランスの人々に愛されています。」

とありました。(※改行はブログ編者による)
全体の構成は、

 1. 国王たちの時代
 2. 近代の幕開けを告げる革命の中から
 3. モデルニテをめぐって
 4. フジタ、ランスの特別コレクション

という4章構成で、
ランス美術館所蔵の60余点の作品が展示されていました。


  ***

一つの美術館の所蔵品だけで構成されているので、
全体としては雑然とした印象が残りました。

個人的には、
印象画が好きなので、
次の5点の風景画に感銘を受けました。


2. 近代の幕開けを告げる革命の中から

22
カミーユ・コロー
(Camille Corot、1796年7月-1875年2月)
「川辺の木陰で読む女」
 1865~70年。油彩、カンヴァス。

29
ウジェーヌ・ブーダン
(Eugène Boudin, 1824年7月-1898年8月)
「ダンケルク周辺の農家の一角」
 1889年。油彩、カンヴァス。

コローもブーダンも印象派に入る前段階で、
絵を観始めたころはそれほど良いとは思わなかったのですが、

最近は写実的な中にどこか鄙びた印象があって、
観るたびに惹きつけられることが多いです。


3. モデルニテをめぐって

31
アルフレッド・シスレー
(Alfred Sisley, 1839年10月-1899年1月)
「カーディフの停泊地」
 1897年。油彩、カンヴァス。

33
ジャン=フランソワ・ラファエリ
(Jean-François Raffaëlli, 1850年4月-1924年2月)
「シャンゼリゼ」
 1902年。油彩、カンヴァス。

39
ルイ・パヴィオ
(Louis Paviot, 1872-1943)
「トルニテ広場」
 1900年。油彩、カンヴァス。


シスレーは個人的に大好きな画家なので、
何でも観られるだけで嬉しいのですが、
この31は、彼ならではの雰囲気のある良品でした。

ラファエリとパヴィオは、
ほかの作品を全然知らないのですが、
33と39については近くに置いて飾りたい、
素敵な作品だと思いました。

ただこの3点、
図録では実物の魅力が
1、2割しか伝わっていません。

実物でみるととても良い絵でした。



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2017年12月4日月曜日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第9・10版(1986年録音)

イスラエルの指揮者
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する

ドイツのオーケストラ
フランクフルト放送交響楽団
(2005年にhr交響楽団に改称)の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第9番&第10番~アダージョを聴きました。

指揮者50歳の時(1986年9月)の録音です


グスタフ・マーラー
①交響曲第9番
②《アダージョ》~交響曲第10番

 エリアフ・インバル(指揮)
 フランクフルト放送交響楽団

録音:1986年9月24-27日、フランクフルト、アルテ・オーバー
【COCO-73282/3】2012年6月発売。

交響曲第9番は、
マーラー49歳から50歳にかけて
(1909年-10年)作曲されました。

初演は没後1年をへた1912年6月に、
ブルーノ・ワルターの指揮する
ウィーン・フィルによって演奏されました。

第10番は第9番の完成後、
1910年に作曲がはじめられたものの、
1911年5月に亡くなったため、未完のまま残されました。

全5楽章の略式総譜
(オーケストレーション前の4、5段の楽譜による総譜)
は最後まで完成されたものの、

オーケストレーションは、
 第1楽章はそのまま演奏できるレベルまで完成、
 第2楽章は一部に不備があるもののほぼ完成、
 第3楽章は最初の30小節目まで一応完成されるという状態でした。

マーラー本人は、
このスケッチを破棄するように伝えましたが、
夫人アルマがこれを保管していたため、
1924年に初めて写真版が公表され、
同年10月に第1・3楽章の初演が行われました。


  ***

さて肝心の演奏ですが、

これまで第3・4・5・6・7・8番と
《大地の歌》を聴いてきた中で、

この第9番のみは、
なぜか全体的にオケのまとまりが悪く、
燃焼度の低い、中途半端な演奏で、
名演には程遠い仕上がりになっていました。

まさかと思い、
何度か聴き直したのですが、
この第9番のみは指揮者の消化不足な印象が残る、
あまり面白くない演奏が展開されていて、
最後まで聴き通すのが苦痛でした。

この時だけ、
オケの調子が悪かったのかもと思いましたが、
同じ時に録音された第10番のほうは、
ふつうに情感のこもった、
インバルの意図がよくわかる演奏だったので、

第9番のみ、
指揮者の解釈にまだ迷いがあったのかもしれません。

まだ聴いていない第1・2番のCDのなかにも、
もしかしたら今一のものがあるかもしれないので、
そちらを聴いてから、
もう一度、第9番に戻って来ようと思います。



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