2015年9月21日月曜日

シュナイダーハンのモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集 その2

オーストリアのウィーン生まれのヴァイオリニスト
ヴォルフガング・シュナイダーハン(1915.5-2002.5)と、

ドイツのブレーメン生まれのピアニスト、
カール・ゼーマン(1910.5-1983.11)の演奏で、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ヴァイオリン・ソナタ集を聴いていきます。

CD4枚中の2枚目を聴きました。
シュナイダーハン38-40歳(1953-55年)の時の録音です


モーツァルト
ヴァイオリン・ソナタ第30番 ハ長調 K.306
ヴァイオリン・ソナタ第32番 ト長調 K.376
ヴァイオリン・ソナタ第33番 ホ短調 K.377

ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)
カール・ゼーマン(ピアノ)
録音:1954年12月18日、ハノーファー、ベートーヴェン・ザール〔K376〕。
1955年10月7-9日、ウィーン、コンツェルトハウス〔K306&377〕。
【POCG-90178】※1998年12月発売。

シュナイダーハンは
38歳から40歳にかけて(1953.9/1954.12/1955.12)、
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを計13曲録音しました。

旧全集の通番(第1-43番)に従って、
どれを録音したのか整理しておきます。

二重丸◎はこのCDの収録曲です。

第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
 第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
 第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕
 第4番 ト長調  K.9 〔1764〕
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕
 第12番 ト長調  K.27〔1766〕
 第13番 ハ長調  K.28〔1766〕
 第14番 ニ長調  K.29〔1766〕
 第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕
 第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕

 第17番 ヘ長調  K.55 (K.Anh.C23.01)※偽作
 第18番 ハ長調  K.56 (K.Anh.C23.02)※偽作
 第19番 ヘ長調  K.57 (K.Anh.C23.03)※偽作
 第20番 変ホ長調 K.58 (K.Anh.C23.04)※偽作
 第21番 ハ短調  K.59 (K.Anh.C23.05)※偽作
 第22番 ホ短調  K.60 (K.Anh.C23.06)※偽作
 第23番 イ長調  K.61 (K.Anh.C23.07)※偽作

◯第24番 ハ長調  K296〔1778〕
◯第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕
・第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕
・第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
◯第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕
◯第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕
◎第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕※未完
◎第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕
◎第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕
◯第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕
◯第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕
◯第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕※未完
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕※未完
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕※未完
◯第40番 変ロ長調 K454〔1784〕
◯第41番 変ホ長調 K481〔1785〕
◯第42番 イ長調  K526〔1787〕
・第43番 ヘ長調  K547〔1788〕

偽作の7曲(第17-23番)を境にして、
おもに後半の作品を録音しています。

未完の作品はのぞかれていますが、
完成された作品も第26・27・43番の3曲は録音されていません。

これ以前の23曲は、
偽作の7曲(第17-23番)はもちろん、

それ以前の16曲も、
モーツァルト10歳までに書かれた初期の作品なので、

ヴァイオリン・ソナタの選集を
録音する場合でも録音されないことが多いです。

  ***

ヴァイオリン・ソナタの
◎第30番 ニ長調  K306
は作曲者22歳の時(1778.11)、
◎第32番 ヘ長調  K376
◎第33番 ヘ長調  K377
は作曲者25歳の時(1781.11)に出版されています。

30番と32番の間に
 第31番 変ロ長調 K372 ※未完
がありますが、
これは25歳の時(1781.3)に、
初めのアレグロ楽章の途中まで作曲された未完の作品です。
1楽章も完成されていないので、
ふつうは演奏されません。

第30番は、
1778年11月にパリで作品1として出版された
「パリ・ソナタ」6曲(第25-30番)のうちの1曲です。

◯第25番 ト長調  K301
・第26番 変ホ長調 K302
・第27番 ハ長調  K303
◯第28番 ホ短調  K304
◯第29番 イ長調  K305
◎第30番 ニ長調  K306

第32・33番は、
1781年11月にウィーンで作品2として出版された
「アウエルンハンマー・ソナタ」6曲(第24番・第32-36番)のうちの2曲です。

◎第32番 ヘ長調  K376
○第24番 ハ長調  K296
◎第33番 ヘ長調  K377
◯第34番 変ロ長調 K378
◯第35番 ト長調  K379
◯第36番 変ホ長調 K380

  ***

これもまた、
1枚目と曲想に大きな違いはなく、

明るく清楚で、
心浮き立つ楽しい瞬間をちりばめた
モーツァルトを聴く醍醐味を満喫できる
ひと時を過ごすことができました。

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタは、
聴いていても退屈に感じられる録音が多く、
あまり聴き込んで来なかったのですが、

初めて満足できる録音に出会えましたので、
シュナイダーハンの演奏でしばらく聴き込んでみようと思います。


シュナイダーハンさんの若いころの演奏は、

ほどよく共鳴した時の
ヴァイオリンの響きが耳に心地良く、

音色を聴くだけで笑みがこぼれて来るのが特徴的です。

美音といっても、
オイストラフのような野太い感じではなく、
節度をわきまえた範囲での清楚な美しさ。

どちらかと言えば、
クライスラーのような趣きですが、

そこまで甘々ではなく、
技巧的にも申し分ないレベルなので、

モーツァルトにはもってこいの演奏家だと思いました。

それでは3枚目に進みましょう。


※Wikipediaの「ヴォルフガング・シュナイダーハン」「カール・ゼーマン」「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」「モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ」を参照。

2015年9月14日月曜日

渡邉暁雄&日本フィルのシベリウス:交響曲全集(1962年録音)

渡邉暁雄(1919.6-1990.6)の指揮する
日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(Jean Sibelius 1865.12-1957.9)の
交響曲全集を聴いていきます。

渡邉暁雄と日本フィルは、
シベリウスの交響曲全集を、
1962年と1981年の2回録音しています。

渡邉氏42-3歳そして62-3歳のときの録音です。
今回聴くのは旧盤(1962)のほうです

私の渡邉氏に対する印象を、
大きく改めるきっかけになったCDです。

渡邊暁雄&日本フィル
シベリウス交響曲全集(第1回録音)

シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 Op.39
〔録音:1962年5月7・8日、東京文化会館〕
交響曲第2番 ニ長調 Op.43
〔録音:1962年、杉並公会堂〕
交響曲第3番 ハ長調 Op.52
〔録音:1962年8月7・8日、東京文化会館〕
交響曲第4番 イ短調 Op.63
〔録音:1962年6月20・21日、東京文化会館〕
交響曲第5番 変ホ長調 Op.82
〔録音:1962年2月18日、文京公会堂〕
交響曲第6番 ニ短調 Op.104
〔録音:1962年、文京公会堂〕
交響曲第7番 ハ長調 Op.105
〔録音:1962年3月7日、杉並公会堂〕

渡邊暁雄(指揮I
日本フィルハーモニー交響楽団
【TWCO-29/32】※2007年5月発売

旧盤より早く、
新盤(1981)のほうを手に入れていたのですが、

新盤はオケのレベルによるのか、
あるいは始まったばかりのデジタル録音で、
録音する側の不慣れなところが影響したのか、

フォルテは暴力的で耳にうるさく、
ピアノも胸に響いてこない、
残響も何もない即物的な録音で、

どれも聴き通すことができませんでした。

リマスターし直せば、
違った印象になる可能性もありますが、

私が所有している盤(2007年発売)についていえば、
歴史的な価値以上のものは見出し難かったです。

初めてシベリウスの全集に挑戦される場合、
新盤(1981)は避けたほうが賢明です。


渡邊暁雄&日本フィル
シベリウス交響曲全集(デジタル再録音盤)

シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 Op.39
 〔録音:1981年9月8日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第2番 ニ長調 Op.43
 〔録音:1981年6月25日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第3番 ハ長調 Op.52
 〔録音:1981年6月19日、習志野文化ホール〕
交響曲第4番 イ短調 Op.63
 〔録音:1981年9月9日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第5番 変ホ長調 Op.82
 〔録音:1981年7月2日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第6番 ニ短調 Op.104
 〔録音:1981年6月22日、習志野文化ホール〕
交響曲第7番 ハ長調 Op.105
 〔録音:1981年7月1日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響詩「トゥオネラの白鳥」Op.22-2
 〔録音:1981年9月8日、昭和女子大学人見記念講堂〕
悲しきワルツ Op.44-1
 〔録音:1981年9月9日、昭和女子大学人見記念講堂〕

渡邊暁雄(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
【COCQ-84283-6】※2007年5月発売

  ***

そもそも渡邉氏のシベリウスは、
京都市交響楽団とのセッション録音を聴いたのが初めてでした。

シベリウス
劇付随音楽「テンペスト」第1組曲 Op.109
交響曲第2番ニ長調Op.43

渡邉暁雄(指揮)
京都市交響楽団
録音:1972年4月、奈良県文化会館
【TOCE-6321】1990年9月発売

《テンペスト》は全くピンと来なかったのですが、
第2番はそれなりに好感のもてる誠実で丁寧な演奏でした。

とはいえ
セッション録音ゆえか生き生きとした情感には乏しく、
職人的に淡々と仕事をこなしているようにも聴こえました。


その後、
ヘルシンキ・フィルとのライブ録音を聴きました。

シベリウス
交響曲第1番ホ短調Op.39
悲しきワルツOp.44

渡邉暁雄(指揮)
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年1月28日、福岡サンパレス
【TDK-OC012】2003年4月発売

各誌絶賛だったのでかなり期待していたのですが、

ライブならではのキズは仕方ないにしても、
何より解釈面でお互いに手探り状態のまま演奏に臨み、
不完全燃焼なまま終わってしまったように感じました。

こちらの演奏が今ひとつだったので、
同時に発売された第4・7番のCDはまだ聴いていません。

初めてシベリウスを聴くのであれば、
それなりに満足できる演奏だとは思うのですが、

渡邉氏のベスト演奏だとはとても言えないと思いました。


それから、
東京都響とのライブ録音も聴きました。


シベリウス
交響曲第1番ホ短調Op.39
交響曲第2番ニ長調Op.43

渡邉暁雄(指揮)
東京都交響楽団
録音:1972年4月28日(第1番)、1973年4月17日(第2番)、東京文化会館
【TFMC-0010/11】2004年7月発売

こちらも、
当時の日本のオケの水準を知る上では有用な演奏で、

同曲のライブを聴きに行って、
これくらいの演奏が聴ければふつうに満足できるレベルではあるのですが、

ほかの名演をさしおいて、
このCDを選びたいかといえば、
それほど特別な魅力は感じませんでした。


 ***

ここまで聴いてきた上で、
先の日本フィルとの新全集(1981)で、
耳にうるさく響く残念なCDを聴いてしまったので、

渡邉暁雄氏のシベリウスについて、
あまり肯定的な印象は持っていませんでした。


そんな私の、
渡邉氏に対するマイナス・イメージを
一気に覆させてくれたのが、

日本フィルとの旧全集(1961)でした。

40代の渡邉氏が、
まさかこれほど覇気にあふれた
熱い演奏を聴かせていたとは思いもよりませんでした。

シベリウスの楽譜への深い読みと、
壮年期の渡辺氏による核心に満ちた解釈で、
ぐいぐいと惹き込まれる魅力のある演奏が繰り広げられていました。

驚かされるのは、
ライブでもなかなか聴けないほどの
「熱さ」が伝わって来ることで、

セッション録音で、
どんな魔法を使ったのかしらと大いに感心させられました。

分裂前の日本フィルの実力も相当なものです。

日本で、音響設備の整った
最新のホールができる前の録音なので

最新の優れた音響のCDに比べれば、
響きに若干の弱さがあることは否めないのですが、

どんな強奏でも無機的に響かず、
意味のある音楽として心に伝わって来るのはなかなかないことです。

シベリウスの交響曲を聴いて、
初めてに近い、新鮮な感動を味わうことができました。

タイプが似ているのは、
ベルグルンド&ボーンマス響
の録音(1975-75)でしょうか。

ベルグルンドの第1回目の全集は、
のちの全集よりも若々しい生命力にあふれた演奏となっていますが、

これをさらに迫力一杯にした感じで、
全然負けていません。

渡邉氏の旧全集は、
初めてシベリウスの全集を聴く方にも、
安心してお薦めできる名盤だと思います。


※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」「日本フィルハーモニー交響楽団」を参照。


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2015年9月7日月曜日

ロバート・バルトのヴァイス:リュートのためのソナタ集 第1集

アメリカ生まれのリュート奏者
ロバート・バルト
(Robert Barto 1950年代生まれ)の演奏で、

ドイツ後期バロック音楽の作曲家
シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス
(Silvius Leopold Weiss 1687.10-1750.10)
リュート作品集を聴いていきます。


S.L.ヴァイス
リュートのためのソナタ集 第1集

 ソナタ第36番ニ短調
 ソナタ第49番変ロ長調
 ソナタ第42番イ短調

ロバート・バルト(バロック・リュート)
1996年2月、カナダ、ニューマーケット、セント・ジョン・クリソストム教会
【NAXOS 8.553773】

ヴァイスって誰?
と思って少し調べてみたのですが、

ヴァイスはもとより、
リュート音楽の歴史について
日本語でわかりやすくまとめられた
手頃な参考書が見つかりませんでした。

歴史的文献として、
ヴァイスと同時代のドイツのリュート奏者
エルンスト・ゴットリーブ・バロン
(Ernst Gottlueb Baron 1696.2-1760.4)
の著書が翻訳されていますが、
古書で高価なので手が出せません。

菊池賞訳/水戸茂雄監修
『リュート ―神々の楽器』
(東京コレギウム、2001年7月。改訂版、2009年8月)

まだ探しはじめたばかりなので、
手頃なものが見つかったらまた報告します。

とりあえず、
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
(1685.3-1750.7)
とほぼ同時期を生き、
親交もあった作曲家であることを把握しておきます。

  ***

さて実際聴いてみると、
これが驚くほどわかりやすい音楽で、

リュートという楽器を通して、

どこまでもやさしく、
穏やかであたたかな音楽が
延々と繰り広げられていきました。

J.S.バッハほど
強い個性に彩られているわけではないので、

聴き終わると
どんな音楽だったのかすぐに忘れてしまいますが、

BGMに最適な、
心地よい癒しの音楽だと思いました。

恐らくふだんクラシックを聴かない人でも
すっと入り込めるくらいわかりやすいので、

実は奏者のバルトさんが作曲した
現代の作品なんだと打ち明けられても、
なるほどと思えるくらいです。


今回のCDには、
短調2曲に長調の1曲がはさまれていました。

 第36番ニ短調
 第49番変ロ長調
 第42番イ短調

個人的な好みからいえば、
長調の曲のほうが、ヴァイスの良さが出ているように思いました。

短調なら、もう少し厳しさのあるバッハが恋しくなりました。

すでに11枚目のCDまで出ているようなので、
気長に1枚ずつ聴き進めて行こうと思います。


※Wikipediaの「シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス」「Robert Barto」「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ」「エルンスト・ゴットリーブ・バロン」を参照。

2015年9月1日火曜日

ノイマン&チェコ・フィルのマーラー:交響曲第3番(1981年&94年録音)

チェコの指揮者
ヴァーツラフ・ノイマン(1920.9-1995.9)の指揮する

チェコのオーケストラ
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、

オーストリアの作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第3番ニ短調を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

マルタ・ヴェニャチコヴァ(アルト)
ミロスラフ・ケイマル(ポストホルン)
プラハ室内合唱団
(合唱指揮:ルボミール・マーテル)
チェコ・フィルハーモニック少年少女合唱団
(合唱指揮:イルジー・フワーラ)

チェコ・フィルハーモニック管弦楽団
ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)

録音:1994年8月31日、9月1-3日、5-7日、プラハ、芸術の家 ドヴォルザーク・ホール
【EXTON OVCL-00253】2006年9月発売

マーラーの交響曲第3番は、

35歳の夏(1895)に第2-6楽章、
翌年に第1楽章が作曲され、8月までに完成されました。

41歳の時(1902.6)に全曲初演されました

交響曲第2番は
35歳の冬(1894.12)に全曲初演されたので、

それほど間を置くこともなく、
第3番が作曲されていたことがわかります。


  ***

ノイマン73歳の時(1994.8)の録音です
(※9月29日が誕生日。あと3週間ほどで74歳。
  翌年9月2日に逝去。)

いろいろ聴いてきたなかで、
現在、一番気に入っているのは
ノイマン&チェコ・フィルの新盤です。

バーンスタインのように
力に任せて押しまくるところが皆無で、
どこも力が抜けているにもかかわらず、

表現の彫りは深く、
心にずっしりと響いてくるのが特徴的です。

自然で穏当な流れを基調としつつも、
無味乾燥に流れていくわけではなく、

すみずみまで指揮者の意図がゆきわり、
楽しく美しく、感動的な演奏が繰り広げていました。

目の覚めるような、
冴え冴えとした何かがあるわけではなく、
物凄い推進力で聴く者を引きずりんでいくこともないので、

初めて聴いて、
強烈な印象を受ける演奏ではないかもしれませんが、

曲がよくわかってくるにつれ、
内容の深さに驚かされる演奏だと思います。

優れた指揮者とオーケストラが、
長い年月をかけて練り上げ到達した境地を聴く思いです。


サロネン盤も良かったのですが、

サロネンの方が、楽譜の読みが独特で、
響きのユニークなマーラーに仕上がっているのに対して、

ノイマン盤のほうが曲の隅々まで知り尽くした上で、
オーソドックスな奏法で極めつきの名演を聴かせてくれていました。

サロネン盤も、
明るく楽しく美しい点では負けていないのですが、
感動面ではさすがに一歩譲ると思います。


  ***

ノイマンはこの11年前、
61歳の時(1981.12)にもマラ3を録音しています。

グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

クリスタ・ルートヴィヒ(コントラルト)
チェコ・フィルハーモニー合唱団
(合唱指揮:ヨゼフ・ヴェセルカ)
キューン児童合唱団
(合唱指揮:イジー・フヴァーラ)

チェコ・フィルハーモニック管弦楽団
ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)
録音:1981年12月16-19日、プラハ、芸術の家
【SUPRAPHON 50CO-2444/45】1988年7月発売

古本屋で偶然、格安で見つけて手に入れました。

演奏は、
旧盤のほうが覇気に富んでいて、
一気に全曲を聴き通せる力のある演奏で、
非常に優れていると思うのですが、
録音に問題がありました。

これまでブログで上げてきたマラ3の中では、
いかにも昭和といった感じの一番古めかしい音がしました。

CDが出始めたころにありがちな、
固めの音質で聴きにくいです。

恐らくリマスタリング次第で、
全然違った演奏に聴こえるはずなので、
もっと最近に再販されたものを探して、
聴き直してみたいと思います。

※WIkipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第3番(マーラー)」を参照。