2011年12月31日土曜日

Bruno Walter Conducts Mozart その4

ブルーノ・ワルター(1876-1962)さんの
モーツァルト(1756-1791)作品集、
4枚目を聴きました。



モーツァルト
レクイエム ニ短調 K.626

ブルーノ・ワルター指揮
コロンビア交響楽団

録音:1956年3月10・12日
【SONY 8 86079 06832 2】CD3


年の暮れに、
レクイエムとは、偶然ですが、
今年にふさわしいかもしれません。

モーツァルトに限らず、
ふだんあまりレクイエムを聴くことはありません。

久しぶりに聴いてみると、
ワルターさんの指揮ゆえか、
すんなり心に響いてきて、
良い曲であることを再認識しました。

惜しむらくは、モノラルで
細部が聴きとり難いことでしょうか。

それともう一つ、
これは昔から感じているのですが、
補筆完成ゆえか、とくに中間部の構成に弱さが感じられました。

あれ?
これはモーツァルトなの?
と思う瞬間がところどころあります。

ジェスマイヤー版からはじまって、
いろいろと版の問題がある曲なので、

ほかの演奏もいくつか聴いて、
私の中のベスト盤を探してみたいと思います。

ワルターさんの演奏は、
曲の良さは十分に伝わって来ましたが、
とくに音質の面で、私には今ひとつでした。

合唱曲のモノラル録音は、
よほどの演奏でないと、今は少々厳しいかもしれません。

柳家小三治10 落語名人会34 「大山詣り・厩火事」(1987・86)

小三治さんの落語、
10枚目は「大山詣り」と「厩火事」です。



落語名人会34
柳家小三治〈10〉

「大山詣り(おおやままいり)」
(1987年5月31日 鈴本演芸場 第6回柳家小三治独演会)

「厩火事(うまやかじ)」
(1986年10月31日 鈴本演芸場 第3回柳家小三治独演会)

〔お囃子〕樋田ひさ/小口けい
〔プロデューサー〕京須偕允
【SRCL-3557】


「大山詣り」は、
志ん生さんと圓生さんの録音を聴いて、
それなりに楽しめたものの、今ひとつ
まとまりが悪いように感じていました。

小三治さんの口演は、
明らかにそれを上回っていて、
私の中でのベストになりました。

このように聞かせてもらえれば、
確かに楽しいお話です。

「厩火事」は、
志ん生さんので聞きなれました。
小三治さんのは、初めて聞くのであれば
十分楽しめたと思うのですが、
細かい部分を詳しく描きすぎて、
全体のテンポ感が今ひとつに感じられました。

これは今後、聞きこんでくると、
違った感想を抱くのかもしれません。


柳家小三治
「大山詣り」87-5/31◎
「厩火事」86-10/31◯

2011年12月26日月曜日

Bruno Walter Conducts Mozart その3

ブルーノ・ワルター
(1876-9/15生 1962-2/17没)さんのモーツァルト集、
3枚目を聴きました。



モーツァルト
交響曲第40番ト短調K.550
 ※1959年1月13~16日録音

交響曲第41番ハ長調K.551
 ※1960年2月25、26、28、29日録音

フリーメイソンのための葬送音楽 ハ短調 K.477
 ※1961年3月8~31日録音

ブルーノ・ワルター指揮
コロンビア交響楽団
【SONY 8 86079 06832 2】CD3


モーツァルトの最後の交響曲2曲に、
フリーメイソンのための葬送音楽を添えた選曲。

強い覇気にあふれた演奏、というよりも、
ゆったりとしたテンポで、ていねいに音楽がつむがれており、
やわらかな雰囲気に包まれた
心が暖かくなる演奏です。

ワルターさんの最晩年の境地、
といっても良いのかもしれません。

ただしそれほど大層な感じもないので、
このCDしか聴いていないと、その真価には
気がつきにくいかもしれません。

ワルターさんのモーツァルトは、
いかにも自然に音楽が流れていくのですが、
それは決して楽譜どおりに、何もしていないわけではないので、

他の楽譜にただ忠実な演奏を聴くと、
かえって戸惑う部分があるかもしれません。

こういうモーツァルトは、
現代ではもう聴けないのかな。

コバケンさんや広上淳一さん、
それから佐渡裕さんも意外に良いかも。

古楽器も悪くはありませんが、
どちらかといえば、現代のフル・オーケストラを
目一杯鳴らした演奏のほうが、私は好きです。

2011年12月24日土曜日

グリュミオー&ハスキルのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第8・9・10番


CD-3
ベートーヴェン

ヴァイオリン・ソナタ 第8番ト長調 作品30の3
同 第9番イ長調 作品47「クロイツェル」
同 第10番ト長調 作品96

アルトゥール・グリュミオー(ヴァイオリン)
クララ・ハスキル(ピアノ)

録音:1956年9月(第8番)、
1957年9月(第9番)、
1956年12月(第10番)ウィーン

【BRILLIANT CLASSICS 93329】



グリュミオーとハスキルによる
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集、
3枚目です。

「クロイツェル・ソナタ」も良いのですが、
とくに他の第8番、第10番がすばらしいです。

この2曲はあまり聴く機会がないこともあり、
なかなか感動する演奏には出会えないのですが、

こうした演奏に接すれば、
十分に聴き映えもして、名曲だと思えます。

あまりどろどろしていない、
吹き抜ける風のような清々しさと、
凛とした真の強さをあわせ持った、美しいベートーヴェンです。


これまでさほど良いとは思えなかった
曲の魅力に気がつけて、とても得をした気分です。
この全集はまた折に触れて、聴き返していきます。

2011年12月22日木曜日

柳家小三治9 落語名人会33 「大工調べ・転宅」(1993・88)

小三治さんの落語、
9枚目は「大工調べ」と「転宅」を聴きました。



落語名人会33
柳家小三治〈9〉

「大工調べ」
(1993年1月31日 鈴本演芸場 第28回柳家小三治独演会)

「転宅」
(1988年3月31日 鈴本演芸場 第10回柳家小三治独演会)

〔お囃子〕樋田ひさ/小口けい
〔プロデューサー〕京須偕允
【SRCL-3556】


「大工調べ」は、
志ん生さんので聴きなれたからか、
後半の「調べ」を省略してあるのは少し違和感がありました。

難しいことをいわなければ、ふつうに楽しめます。

私には、この話は
もう少し軽めの感じでも良かったように思います。

棟梁や家主の表現が真に入りすぎていて、
すなおに笑えないところがありました。


「転宅」は、
泥棒のバカバカしいお話。

はじめは、それだけ?
と思ったのですが、数回聴いていると、
だんだん楽しくなってきました。


柳家小三治
「大工調べ」93-1/31◯
「転宅」88-3/31◯

2011年12月15日木曜日

柳家小三治8 落語名人会32 「茶の湯」(1986.5)

先週に続いて、
柳家小三治さんのCD8枚目、
「茶の湯」を聴きました。



落語名人会32
柳家小三治〈8〉

「茶の湯」
(1986年5月31日 鈴本演芸場 第1回柳家小三治独演会)

〔お囃子〕樋田ひさ/小口けい
〔プロデューサー〕京須偕允
【SRCL-3549】


「茶の湯」は大好きなお話しです。

他の方のをまだ聴いていないのですが、
このレベルをこえるのは大変だろうな、
と思わせられる、非の打ち所のない口演です。

もう何度も聴いているCDですが、
話の筋がよくわかっている分、
前より一層おもしろく感じます。

小三治さんのいいところがぎっしり詰まったCDだと思います。

柳家小三治
「茶の湯」86-5/31◎

2011年12月13日火曜日

柳家小三治7 落語名人会31 「百川・厄払い」(1988・90)

久しぶりに、
落語のCDを聴きました。

十代目柳家小三治(昭和14年〔1939〕- )のCD7枚目、
『百川(ももかわ)』と『厄払い(やくはらい)』です。



落語名人会31
柳家小三治〈7〉

「百川(ももかわ)」
(1988年5月31日 鈴本演芸場 第11回柳家小三治独演会)
「厄払い(やくはらい)」
(1990年1月31日 鈴本演芸場 第19回柳家小三治独演会)

〔お囃子〕樋田ひさ/小口けい
〔プロデューサー〕京須偕允
【SRCL-3548】


久しぶりに聴いて、
車の中で大笑いしました。

しばらく聴かなかったのを後悔しました。
笑いは大切ですね。


『百川(ももかわ)』は、
小三治さんが「六代目三遊亭圓生から直接教わった噺」で、
「師匠五代目柳家小さんから初めて称賛を受けた噺」だそうです。
(京須偕充氏のCD解説を参照。)

絶妙な間合いが楽しく、
大笑いしている私がいました。

圓生さんも悪くありませんが、
この噺は、小三治さんのほうが私は好きです。

百兵衛さんが
何を言っているのかわからなかったときも
それなりに楽しめましたが、

東北訛りがよく聴き取れるようになってなお、
芸の細かさに面白みが増してきました。


『厄払い(やくはらい)』は、
与太郎がご活躍のお噺で、
ほかを聴いたことはありませんが、

ふつうに楽しめました。
お祓い=縁起がよい、と考えてか、
お正月には演じられることが多いようです。


またしばらく、落語を聴いて、
今年の憂さを晴らすことにしましょう。


柳家小三治
「百川」88-5/31◎
「厄払い」90-1/31◯

2011年12月10日土曜日

武久源造のシューベルト:即興曲作品90&142

先にバッハのゴールドベルク変奏曲
の美演を紹介した武久源造さんのCD、

前から気になっていた
シューベルトの即興曲集を手に入れて聴いてみました。



鍵盤音楽の領域 vol.4
[フォルテピアノコレクションⅠ]

ファンツ・シューベルト(1797~1828)
即興曲 作品90 D.899
 第1番 ハ短調
 第2番 変ホ長調
 第3番 変ト長調
 第4番 変イ長調

即興曲 作品142 D.935
 第3番 変ロ長調
 第1番 ヘ短調
 第2番 変イ長調
 第4番 ヘ短調

武久源造(フォルテピアノ)

楽器:マテウス・アンドレアス・シュタイン
(ウィーン ca1820製作)
 古典調律1/8 a430Hz
山本宣夫修復 ヤマモトコレクション所蔵

録音:1997年12月9-11日、入間市市民会館

【ALCD-1019】


フォルテピアノというのは、
倍音をたくさん含んだやわらかな響きで、
現代のピアノほどハッキリくっきりしているわけではないので、
聴いていきなり心をわしづかみにするような力強さには欠けるかもしれません。

しかし聴くごとに
じわりと染み込んでくる味わい深さがあり、
シューベルトの音楽にはもってこいだと思いました。

一つ一つの旋律が心地よく響いてきて、
物悲しくも美しいシューベルトの音楽が、
向こうからじわりと歩み寄ってくるような、
深い感動を味わうことができました。

シューベルトの即興曲は、今まで
それほどの感動は受けずに来たのですが、
武久さんの演奏で、はじめて十二分の感動を得ることができました。

ゴールドベルク変奏曲も、
聴くごとに私の中での価値が高まっていったので、
このCDも時間が経つにつれ、
さらによりよく感じられるようになりそうです。

全集にはあまり興味のない方のようですが、
ぜひソナタの方も、何曲か取り上げていただきたいと思います。

武久さんとは響きの志向が合うのか、
どれも私には好ましい響きがします。

2011年12月8日木曜日

渡邊順生のバッハ:イギリス組曲

バッハのイギリス組曲の名演を探して、
いろいろ聴いています。

最近手に入れたのが、
渡邊順生さんによるこだわりの録音です。



チェンバロの歴史と名器Ⅲ
J.S.バッハ:イギリス組曲(全6曲)

渡邊順生(チェンバロ)

Disc-1
組曲第1番イ長調 BWV806
組曲第2番イ短調 BWV807
組曲第3番ト短調 BWV808
Disc-2
組曲第4番ヘ長調 BWV809
組曲第5番ホ短調 BWV810
組曲第6番ニ短調 BWV811

録音:コルマール市(フランス)ウンターリンデン博物館
   2005年4月27日~5月2日
【ALC1081/2】

渡邊さん本人の解説によると、
楽器は「ヨハネス・ルッカーがアントワープ(現ベルギー)で
1624年に製作した二段鍵盤のチェンバロ」が用いられています。

この楽器は「イギリスの楽器修復家・研究家で、
当代随一のフォルテピアノ製作家として定評のある
クリストファー・クラークによって、1979年に修復」され、

現在「フランスのアルザス地方の古都コルマールの
ウンターリンデン博物館」に所蔵されているそうです。


渡邊さん、驚くほど博識な方です。

演奏は完璧、録音もたいへん優秀なので、
まずは非の打ち所のないCDだと思います。


あとは私の好みの問題です。

チェンバロの場合、
古楽器だからといって、
やわらかい音がするわけではないんですね。

ものすごく良い音がしているそうなのですが、
私にはほんの少しだけ、耳ざわりに響くところがあり、
私にとってのベストではないようです。

演奏も一気呵成に弾き切っているのが
小気味よくもあるのですが、私にはもう少し
ゆったりと味わい深くしていただけた方が好みです。


男性的で、
鮮やかな目の覚めるようなバッハを
聴きたいときにはきっとベストな選択になるでしょう。


ほんの少し、
違和感があるといいながら、
しばらくはこればかり聴いています。

相当にいい演奏であることは間違いありません。

2011年12月6日火曜日

Bruno Walter Conducts Mozart その2

ブルーノ・ワルター
(1876-9/15生 1962-2/17没)さんのモーツァルト集、
2枚目を聴きました。



モーツァルト
交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」
 ※1959年12月2日録音

交響曲第39番変ホ長調K.543
 ※1960年2月20-23日録音

セレナード第13番ト長調K.525
 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
 ※1958年12月17日録音

ブルーノ・ワルター指揮
コロンビア交響楽団
【SONY 8 86079 06832 2】CD2



ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart)はドイツの作曲家。

1756年1月27日に生まれ、
1791年12月5日に亡くなっています。

35歳と10ヶ月ほどの彼の人生です。


交響曲第38番「プラハ」は、
1787年に、モーツァルト自身の指揮により、
プラハで初演されました。
31歳の作品です。

交響曲第39番は、
翌1788年に作曲されました。
32歳のときの作品です。

セレナーデ第13番
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、
交響曲第38番と同じ、1787年に作曲されました。


この1枚は、
モーツァルト31・32歳のときの作品が収められています。

ワルターさんのモーツァルト、
これだけ聴いているとそれほど気がつかないのですが、

楽譜そのままの、というよりは、
ワルターさんが主観的に読み込んで、
今一度、解釈しなおした上での演奏です。

それがこの上なく自然な印象を受けるのは、
ワルターさんとモーツァルトの相性の良さゆえでしょう。

現代オーケストラの機能を十分に生かした演奏として、
まっ先に指折るべき録音だと思います。

とくに感心したのは
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」です。

たいへん美しい作品ですが、
意外に飽きやすく、もういいや、と思いがちなのですが、
さすがワルターさん、改めて曲の良さに感銘を受けました。


1点、問題があるとすれば、音でしょう。

ステレオ初期の、あまり残響を考慮に入れない、
分離の良すぎる録音が、若干耳障りに聴こえるかもしれません。

ホールではまずこのような響きでオケは鳴らないので、
その点、注意が必要です。

でも、ワルターさんの
晩年にたどりついた結論を聴ける演奏として、
やはり外せない演奏だと思います。

小林研一郎&読売日響のブラームス:交響曲第1番(2011/12/4)

週末、岐阜県の多治見市文化会館まで、
コバケンさんのコンサートを聴きに行って参りました。


読売日本交響楽団 コバケンスペシャル in Tajimi 2011

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

バイオリン:荻原尚子
指揮:小林研一郎
読売日本交響楽団

2011年12月4日(日)17:00開演
多治見市文化会館大ホール

先週、コンサートのことを知り、
当日になって電話をかけてみたところ、
まだ少し残っているとのこと、
S席を購入し、電車で1時間半ほどかけて、
聴きに行って参りました。

多治見市文化会館は
ちょうど30年前の昭和56年に開館したそうです。

ほどほどの大きさの、ほどよい響きの、
昭和の多目的ホールでした。


今回の嬉しい誤算は、
メンデルスゾーンを弾いた荻原尚子さんです。

これまで存じ上げていなかったのですが、
ケルンWDR交響楽団のコンサートミストレスを務められている、
豊田市出身のヴァイオリニストだそうです。

メンコンを生で聴いて感動したことはなかったのですが、
今回は音が直接心に響いて来て、とても感動しました。

とくに奇を衒ったところはなく、
正攻法で、心にしっかりとどく音楽を奏でられる方で、
チャンスがあれば、また聴いてみたいと思いました。

アンコールとして、無伴奏曲
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース 作品6
が演奏されました。


コバケンさんのブラームスは
10年以上前に、名フィルとの演奏で、
第2番と第3番を聴いた記憶があります。

今回の第1番、まず感じたのは
読売日本交響楽団の鳴りの良さです。

読売さんは初めてなので、
いつもこうなのかはわかりませんが、
何もここまでと思うくらい、オケが鳴りまくっていて、
ところどころ、ホールの容量をこえているように感じるくらいでした。


コバケンさんの指揮は、
重厚に踏みしめる部分の壮絶さと、
叙情的に歌わせる部分の軽やかさとのコントラストが美しく、

ブラームスの曲の良さを、十分に味わうことができました。

以前と比べて、
コバケンさんの長所を残しつつ、
より彫りの深い、曲の真実に迫る音楽が奏でられていて、
ただただ感動しました。

今後、これをこえるブラ1の実演に接するのは
いつのことになるでしょう。

私の理想からいえば、
枯れた味わいのほとんどないブラームスには、
ごくわずかに違和感があったことも確かですが、

地方公演の初日で、
鳴りの良いオケを相手に、
まずはオケを鳴らしきることに主眼をおくのは、
当然のことでもあったと思います。


最後に、
アンコールとして、弦楽合奏で、
「ダニー・ボーイ」が演奏されました。

何度かコバケンさんの演奏会に足を運んでおりますが、
やっと聴けました。

なるほど。

涙がこぼれました。


コバケンさんと萩原さん、
そして読売日本交響楽団の方々に感謝です。




追記

コバケンさんと読売さんのコンビで、
今のままで120%長所が引き出せるのは、
マーラーが一番だと思いました。

しかしより新しい試みとして、
モーツァルトの後期6大交響曲と、25番、29番あたりを
まとめて取り上げたら、面白いことになるんじゃないかな、
と強く感じました。

そんなことは、誰も感じていないかな。

でもオーソドックスな中に、曲の本質をつらぬいた、
すばらしい演奏になる気がしました。

初めて読売交響楽団を聴いた際の
ひらめきとして記しておきます。

2011年11月29日火曜日

ベルグルンド&ヘルシンキ・フィルのシベリウス:交響曲第3・4番

フィンランドの作曲家、ジャン・シベリウス
(Jean Sibelius, 1865年12月生 1957年9月没)の交響曲、
お次は第3番と第4番です。



シベリウス
交響曲第3番ハ長調op.52
交響曲第4番イ短調op.63

パーヴォ・ベルグルンド 指揮
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1987年7月(3番)
    Culture Hall, Helsinki
   1984年2月(4番)
    All Saints Church, Tooting

【EMI 7243 4 76963 2 9】


第3番は1907年9月、
シベリウス41歳のときに初演。

第4番は1911年4月、
45歳のときに初演されています。

それぞれ作曲者40代半ばまでの作品ということになります。

しかしこの第3番からは、ほんとうに
シベリウス独特の世界が描かれており、
その分、オケと指揮者ともどもに共感に満ちた演奏をするのは難しいようで、
なかなか心から感動できる演奏には出会えないものです。

その点、ベルグルンドさんと
ヘルシンキ・フィルのペアは、万全です。
この1枚もとてもよい出来だと思います。

第3番は清明な、心洗われる、
冬の晴天に明るくやわらかな光が降りそそぐような音楽。

3楽章でよくまとまっていて、
今回はじめて聴くような感動を覚えました。

第1・2番よりも、今の私の好みに合っています。


第4番は、より内向的な作品です。

これまで聴いてきた中では、一番わかりやすく、
シベリウスの心情に近づけた気がしましたが、
やはりまだ、私には少し謎なところが残りました。

また折をみて聴き返しましょう。
今回は、第3番の真価に気がつけたのが収穫です。

2011年11月26日土曜日

今井美樹 『One Night at the Chapel - Special Collection』

秋の夜長に、
今井美樹さんのライブCDを聴いていました。

もともと、すばらしい歌唱力をそなえた方ですが、
2000年をこえた辺りから、特に磨きがかかって来たように感じられます。

殊にライブの魅力は絶大で、
独特の透明な歌声はそのままに、
暖かな色調で、聴く者を大きく包みこむ、懐の深さを持つようになって来たように思います。

以前の歌声には、
もっと心の痛みをじかに訴えかける、
心の苦しみを感じさせるところがあって、
繰り返し聴くのは若干、敬遠したくなるところがあったのですが、

最近の歌声は、
よりのびやかな心地よさを身につけて来たようで、
彼女のライブCDのいくつかは、私の愛聴盤になっております。



今井美樹
 『One Night at the Chapel - Special Collection -』

  1) AQUA (作詞:今井美樹/作曲:布袋寅泰)
  2) Boogie-Woogie Lonesome High-Heel (作詞:戸沢暢美/作曲:上田知華)

  3) amour au chocolat (作詞:今井美樹/作曲:布袋寅泰)
  4) 泣きたかった (作詞:今井美樹/作曲:柿原朱美)
  5) PRIDE (作詞・作曲:布袋寅泰)
  6) 猫の唄 (作詞・作曲:布袋寅泰)
  7) 明るくなるまで (作詞:戸沢暢美/作曲:佐藤博)
  8) あこがれのままで (作詞:岩里祐穂/作曲:上田知華)
  9) 潮騒 (作詞・作曲:布袋寅泰)
 10) Goodbye Yesterday (作詞・作曲:布袋寅泰)
 11) 瞳がほほえむから (作詞:岩里祐穂/作曲:上田知華)
 12) 海辺にて (作詞:岩里祐穂/作曲:上田知華)
 13) 新しい街で (作詞:岩里祐穂/作曲:KAN)
 14) Pray (作詞:岩里祐穂/作曲:柿原朱美)


Recorded at Gloria Chapel, Tokyo
August, 2001
【TOCT-24890】


聴く人によってそれぞれ、
感動する楽曲は異なるでしょうが、
私には後半9曲目、「潮騒」からが絶品です。


  9) 潮騒 (作詞・作曲:布袋寅泰)
 10) Goodbye Yesterday (作詞・作曲:布袋寅泰)
 11) 瞳がほほえむから (作詞:岩里祐穂/作曲:上田知華)
 12) 海辺にて (作詞:岩里祐穂/作曲:上田知華)
 13) 新しい街で (作詞:岩里祐穂/作曲:KAN)
 14) Pray (作詞:岩里祐穂/作曲:柿原朱美)


布袋寅泰さんといえば
「PRIDE」なのかもしれませんが、
詩に共感できないので、
私には今ひとつです。

同じタイプなら「Goodbye Yesterday」の方が好きです。

文句なしに凄いのは「潮騒」で、
ピアノのみのシンプルな伴奏にのせて、
別世界にもっていかれます。

歌唱のテクニックも、
感情表現のバランスも、ピアノの伴奏も、
完璧この上ない「潮騒」はめったに聴けない、
奇跡的なレベルに達していると思います。


岩里祐穂さんと上田知華さんのコンビによる
「瞳がほほえむから」「海辺にて」の2曲も、
完成度の高い楽曲の名唱です。

最後の「Pray」は、
これもピアノ伴奏のみのスタイルで、
彼女の深く透き通った歌声をじか楽しむことができます。


若いころの録音と比べると、
わずかずつだけれども明らかな深化がみられ、
地道な努力の跡が聴かれて嬉しいです。

ピアノ伴奏だけで、
これだけの感銘を与えてくれる歌手が
現在どれくらいいるのか。

私はあまり知りません。

2011年11月21日月曜日

Bruno Walter Conducts Mozart その1



モーツァルト
 交響曲第35番ニ長調 K.385「ハフナー」
  ※録音:1959年1月13・16・19・21日

 交響曲第36番ハ長調 K.425「リンツ」
  ※録音:1960年2月28・29日

 歌劇『劇場支配人』序曲K.486
 歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』序曲K.588
 歌劇『フィガロの結婚』序曲K.492
 歌劇『魔笛』序曲K.620
  ※以上、録音:1961年3月5-31日

ブルーノ・ワルター指揮
コロンビア交響楽団
【SONY 8 86079 06832 2】CD1


ワルターさんのモーツァルト、
最近SONYから出た6枚組のものを購入しましたので、
1枚ずつ聴きなおしていきます。

まず1枚目は、
交響曲第35番「ハフナー」と第36番「リンツ」
そして序曲集です。


「ハフナー」は
現代のきびきびした演奏とは違って、
のんびりおっとりとしたはじまり方で、
それほど肩をはらない感じの、美しい演奏です。

これはこれで十分楽しめますが、
他にもいい演奏はあるかもしれません。

「リンツ」は
同じ傾向の演奏ですが、
より完成度が高く、
曲の魅力がそこかしこにあふれていて、
お薦めの演奏です。

序曲はどれも最上レベルです。


音質は、細かいことをいわなければ、
十分に満足できるレベルです。

この時期のステレオ録音は、
ホールの残響を考慮に入れないからか、
かなり耳にうるさく聴こえることがあるのですが、
その点、耳にやわらかく聴こえるようにまとめてあって、
聴きやすいです。


ワルターさんのモーツァルトは、
かねてより定評がありますので、
この機会にまとめて聴いていきます。

2011年11月17日木曜日

クライスラーの初期ヴァイオリン協奏曲録音(opus蔵)

ワルターさんのSP復刻を聴き直しているのに併せて、
オーパス蔵さんの復刻CDの中から、
クライスラーによるヴァイオリン協奏曲集を聴きました。



クライスラー初期ヴァイオリン協奏曲録音

1.ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
 (mat.HMV CWR631-41)1926年12月14~16日録音

2.モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 K.218
 (mat.HMV CC5396-401,5408-09)1924年12月1・2日録音

3.ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
 (mat.HMV CWR1355-57, 66-70)1927年11月21・23・25日録音

4.メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
 (mat.HMV CWR614-19)1926年12月9・10日録音

(1~4)フリッツ・クライスラー(Vn)
(1・3・4)レオ・ブレッヒ(指揮)
       ベルリン国立歌劇場管弦楽団
(2)ランドン・ロナルド(指揮)
   ロイヤル・アルバート・ホール管弦楽団
【OPK-2073/4】


フリッツ・クライスラー(1875年生-1962年没)は、
「愛の喜び」「愛の悲しみ」といったヴァイオリンの小品の
作曲者として知られておりますが、

演奏家としても優れていて、多くの録音を残しています。

聴いてみたいなと思っていたところに、
オーパス蔵さんから復刻が出たので購入し、
それ以来愛聴しております。


1920年代の録音なので、
ワルターの一連のSP録音を、
さらに10年もさかのぼっておりますので、
音質はかなり良くないです。

幸いヴァイオリンの音色は美しく録られているのですが、
オケはかなり貧弱ですし、針音も相当耳障りです。

なら聴かなければと言われるかもしれませんが、
針音は数回聴いているうちに気にならなくなりますし、

何よりクライスラーの演奏には、
他では聴かれない独特の気品ある節回しが聴かれて、
他をもって代えがたい十分な魅力があります。

独特の節回しは、
他のヴァイオリニストがまねしようとしても、
たいてい下品な感じになって
魅力には結びつかないことが多いのです。

ごく微妙な違いなので、
どうでもよい、と捨ておくことも可能ですが、
そこを楽しんでこその音楽だとも思えます。

このCDの中で、
モーツァルトの協奏曲は、
かなり時代がかった感じがして
あまり馴染めなかったのですが、
他はどれも味わい深く、楽しめました。

私の中では、ベートーヴェン、
メンデルスゾーン、ブラームスの順で好きです。

これのみが一番というわけではないのですが、
一度クライスラーの絶妙な節回しの魅力にはまると、
現代のたいがいの演奏がつまらなく聴こえて来ることも事実です。
時々、聴き直したくなる演奏です。

SP復刻というのは、
少々贅沢な楽しみかもしれませんが、
現代のクラシック演奏に至る道筋を知る上でも、
興味深く、面白いものだと思います。

2011年11月14日月曜日

宇野功芳&新星日本響のベートーヴェン:交響曲第6・2番



ベートーヴェン
交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
交響曲第2番ニ長調 作品36

モーツァルトの子守唄
(フリース、佐々木具 編曲)
 クラリネット・ソロ:荒井伸一

宇野功芳 指揮
新星日本交響楽団

録音:1995年10月5日、東京芸術劇場コンサートホール
【KICC-185/6】


さきにワルターさんが指揮する
ベートーヴェンの「田園」交響曲を紹介しましたので、
同じ「田園」交響曲で、私が一番好きなCDを紹介します。

それは宇野功芳さんが新星日本交響楽団を指揮した時のライブです。

宇野さんの指揮は、
落ちつきのあるオケの豊かな響きが好ましく、
よく練られた独自の解釈を、自然な流れの中で実現していて、
つぼにはまったときの演奏は、すばらしいです。
(アマオケとの録音はのぞく)

惜しむらくは、
宇野さんが好んで取り上げる
ベートーヴェンの「英雄」「運命」「合唱」は、
いびつなテンポ設定がオケのせっかくの有機的な響きを殺しており、
すべて残念な仕上がりとなっていることでしょう。

この3曲をのぞけば、
結構注目すべき演奏を残していると思うのですが、
そちらはめったに聴かれる機会がないので、
評価につながらず、残念です。


宇野さんが指揮するベートーヴェンで、
格別にすばらしいのは「田園」交響曲です。

この曲は意外とまとめるのが難しいようで、
有名な指揮者の演奏でも、途中で眠たくなることが少なくありません。

そんなレベルでないことは当然として、
宇野さんの指揮する「田園」は、曲の大きな枠組は逸脱することなく、
ゆったりしたほどほどのテンポ感で、
「田園」の魅力を存分に引き出した演奏となっております。

聴いていて、
とても豊かな楽しい気持ちにさせられる「田園」です。
私は、「田園」はこの演奏が一番好きです。


合わせて収録されている第2番も
「田園」と同じ路線の演奏で、ゆったりとしたテンポで
この曲の魅力を最大限にひきだした演奏となっております。

この曲については、
ほかにも十分魅力的な演奏がたくさんあるので、
宇野さんだけが、というつもりはありませんが、
個性的な、楽しい第2番であることは間違いありません。

これを聴いて思い出したのは、
広上淳一さんと京都市交響楽団による第4の録音です。
広上さんの方がリズム感はキレキレなので、
それをもう少し野暮ったくしたら、宇野さんに似ているかもしれません。


宇野さんのベートーヴェン、
第1と第7も変わったテンポ設定はないので、
それなりに楽しめますが、これも敢えて宇野さんを選ばなくても良いかもしれません。

どちらかというと、
ベートーヴェンよりは、モーツァルトのほうが、
宇野さんの性質に合っているのではないかと思うのですが、

プロのオーケストラで、
まとめてモーツァルトの交響曲を取り上げる機会はもうないのでしょうか。
できれば聴いてみたい気がします。

2011年11月12日土曜日

ベルグルンド&ヘルシンキ・フィルのシベリウス:交響曲第1・2番

朝比奈さんのシベリウスを聴いて、そういえば、
一番の本命というべきベルグルンドさんの録音を

聴いていなかったことに気がついて、
手に入れて、聴いてみることにしました。



シベリウス
交響曲第1番ホ短調 作品39
交響曲第2番ニ短調 作品43

パーヴォ・ベルグルンド 指揮
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1986年5月(1番)、1986年12月(2番)
   Culture Hall, Helsinki
【EMI 7243 4 76963 2 9】


2枚組のCDで、
2枚目に第3・4番が収録されております。
それはまた後日に取り上げます。


ベルグルンドさんのシベリウスは、
ヨーロッパ室内管弦楽団と3度目の全集に
取り組まれたときに1枚買ってみたのですが、
それほど大きな感銘は受けなかったので、
そのままになっておりました。

ヘルシンキ・フィルとの全集は、
ベルグルンドさん2度目の全集ですが、

シベリウスの交響曲を第1番から第6番まで
初演されていることも関係しているのでしょう、
オケの鳴り方が、これまで記憶していたのと全然違います。

よく知っているはずの曲ですが、

すべての場面場面が生き生きして、
初めて聴くような感動が随所に聴かれて、
新鮮な驚きの連続でした。

とくに第1番は圧倒的な感銘を受けました。

第1と第2は、誰がどのように演奏しても
それなりに楽しめるところがありますが、

ベルグルンドさんとヘルシンキ・フィルの演奏は、
私の中で、基準の演奏になりそうです。


ジャン・シベリウス(Jean Sibelius)は
1865年生まれで、1957年に没しております。

交響曲第1番は1899年、第2番は1902年の初演です。

どちらも30代半ばに作曲されているわけで、
そろそろ40に近づいて来た身としては、
すごいなあ、と感心します。

この2曲だけでも、
おそらくイギリスの作曲家エルガーのような、
十分な評価を得ていたと思われますが、

ここからさらに、
独特の個性が刻まれた交響曲を5曲発表されています。
一つずつ、じっくり楽しんでいこうと思います。

2011年11月8日火曜日

ワルター&ウィーン・フィルのベートーヴェン:「田園」交響曲

Opus蔵によるブルーノ・ワルターさんのSP復刻、
1枚だけ取り上げるのなら、この1枚でしょう。



1.ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番 作品72a
 (mat.Col CHAX109-11)
  ※1936年5月21日録音
2.モーツァルト:セレナード第13番 K.525
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
 (mat. Col 2VH234-37)
  ※1936年12月17日録音
3.ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
 (mat. Col 2VH224-33)
  ※1936年12月5日録音

ブルーノ・ワルター指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
【OPK-2021】


宇野功芳さんの文章で、
かなり前からこの演奏のことは知っていましたが、
実際に聴く機会はなかなかなく、
Opus蔵さんの復刻で初めて聴くことになりました。

今から70年以上前の録音ですから、
現代の鮮明な音になれた耳からすると、
ノイズが少し気になりますが、
音楽を楽しむのには問題ないレベルだと思います。

演奏の内容は、
曲を楽しく聴かせてくれる演奏としては、
同曲の最上レベルだと思いました。

曲が曲だけに、
それほど崇高な何か、
が表現されているわけではないのですが、

ごく自然な流れの中に、
音楽の自由な雰囲気を楽しめる、
リラックスして聴いていられる名演奏だと思います。

それほど特別なことはしていないようにも聴こえますが、

これが他の指揮者で聴くと、
途中で眠たくなって来ることが多く、
なかなかまとめるのが難しい曲だと思います。

ワルターさんがやりたいように振舞うと、
自然と曲のよいところが引き出されて、
楽しく最後まで聞き通せてしまう、
幸福感のある演奏だと思います。

「田園」交響曲の魅力を
存分に引き出した演奏として、
今でもまっ先に上げるべき名演の一つだと思います。

2011年11月5日土曜日

朝比奈隆&大阪フィルの交響組曲「シェエラザード」(1982)

最近、キングレコードから、
1980年代に朝比奈隆さんが大阪フィルと
ライブ収録したCDがまとめて発売されています。

いくつか聴いていた中で、
いちばん感動したのは、意外な1枚、
リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」でした。



リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

録音:1982年11月22日、大阪 フェスティヴァル・ホール
【KICC-3618】


この時期の朝比奈さんならではの
覇気に満ちたオケの豪快な鳴りっぷりはそのままに、
緩徐楽章での魅惑的なメロディーの歌わせ方が、
そのまま心の奥に響いて来て、
すなおに感動できます。

朝比奈さんの指揮は、
現代の切れ味するどい演奏に比べると、
ほんの少しもたつく感はありますが、

晩年ほどのぎこちなさはないので、
サラサラと流れていってしまわない分、
私にはより好ましく感じられます。


私にとって「シェエラザード」は
あまり縁のない曲のようで、

これまでいくつか聴いてきた演奏では、
それほど心動かされることはありませんでしたが、

朝比奈さんのCDで、
はじめてこの曲の良さがわかった気がします。


1000円の廉価盤CDは
音質が今一つのことが間々ありますが、
このシリーズは音質面への気配りも行き届いていて、
お勧めです。

2011年11月4日金曜日

朝比奈隆&大阪フィルのシベリウス:交響曲第2番(1978)

時々聴きたくなるのが、
シベリウスの交響曲第2番です。

第3番以降の深遠な世界には、
いずれ腰を据えてと思いながら、
未だ集中して聞く機会がないままなのですが、

第1・2番はわかりやすい名曲なのでよく聴いています。
第2番でよく聴くのが朝比奈隆&大阪フィルのCDです。


シベリウス:交響曲第2番ニ長調 作品43

ブルックナー:アダージョ第2番
(交響曲第3番第2楽章 L.ノヴァーク校訂第1稿の2)

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

録音:1978年11月22日、大阪フェスティバルホール(シベリウス)
1983年9月16日、東京カテドラル聖マリア大聖堂(ブルックナー)
【VICC-60323】


朝比奈さんとシベリウスはあまりイメージがわかなかったのですが、
買ってびっくり、とびきりの名演でした。

めったにないくらい豪快にオケを鳴らした演奏ですが、

テンポに粘ったところがないので、
シベリウスらしい清明さも感じさせてくれて、

豪快さと清明さをあわせもつ、
朝比奈さんの個性が刻まれた名演だと思います。

70歳をこえたばかりの、
朝比奈さんの覇気に満ちた演奏を聴くことができます。

第2番だからこそ許されるのだと思いますが、
何より感動的なので、私はこの演奏が好きです。


最後に、
ブルックナーの交響曲第3番の第2楽章の異稿が収められています。

残響がよすぎて、細部が聴きとりにくいのが難ですが、
豪快なシベリウスで感動したあとには、
アンコールとして心地よく感じられます。
(17分近くありますが。)

朝比奈さんのベートーヴェン、ブルックナーも大好きなのですが、
CDがいろいろあり過ぎて、どう紹介して行こうか迷いますね。

でも、自分との関わりのもとに語る、のが正直だと思うので、
自分が好きな演奏から、また紹介していきます。

2011年11月3日木曜日

武久源造のバッハ:ゴールドベルク変奏曲



J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲 BWV988

武久源造(チェンバロ)

チェンバロ(Philip Tyre製作)
録音:1994年6月11~13日(旧東伏見宮別邸)、
 8月30日~9月1日(秩父ミューズパーク音楽堂)
【ALCD-1013】


ハイドシェックさんのパルティータに続いて、
ゴールドベルク変奏曲を聴きたくなりました。

ゴールドベルク変奏曲で一番気に入っているのは、
武久源造さんの録音です。

出会ってからもう十年以上たちますが、
聴き込むほどに味わいが増して、
私の中での定番となって来ました。

まず耳を奪われるのが
美しいチェンバロの響きです。

チェンバロの録音は、
最新のものでもキンキンとした響きが耳につくことがあって、
演奏以前にそれでがっかりしてしまうことも多いのですが、

この録音では、
チェンバロの響きがとてもやわらかく、
耳に優しく響いてきて、心地よく感じられます。

演奏はわりとゆっくり目のテンポで、
一つ一つの変奏がていねいに紡がれていきます。

全体が自然な流れになるように、
微妙にテンポを揺らしているので、
ゆっくり目ですが、
意外に自由さを感じさせる演奏です。

まだそんなにたくさん聴いていませんが、

 グールドさん、
 レオンハルトさん、
 ヴァルハさん、
 鈴木雅明さん、
 曽根麻矢子さん、

と聴いてきた中では、一番です。
この中で、グールドさんとヴァルハさんは、
違った味わいもあってわりと好きです。

今期待しているのは、シフさんの最新録音です。
近々聴いてみたいと思っております。

2011年10月29日土曜日

若杉弘&東京都響の武満徹作品集(1991年録音)



武満徹
1.弦楽のためのレクイエム(1957)
2.ノヴェンバー・ステップス
   ― 琵琶、尺八、オーケストラのための(1967)
3.遠い呼び声の彼方へ!
   ― ヴァイオリンとオーケストラのための(1980)
4.ヴィジョンズ(1989)
   Ⅰ‐神秘
   Ⅱ‐閉じた眼

若杉弘 指揮
東京都交響楽団
 2.鶴田錦史(琵琶)、横山勝也(尺八)
 3.堀米ゆず子(ヴァイオリン)

録音:1991年7月29~31日、東京芸術劇場
※武満徹の監修による録音。
【COCO-78083】


最近、秋の花粉の影響で気分が少々沈みがちになり、
何となく、武満さんの響きが聴きたくなりました。
代表曲を集めたCDを買って、聴いてみました。

武満さんの音楽は、
中学生のときに小澤征爾さんとの共著
『音楽』(新潮文庫、昭和59年)を読んでその音楽に憧れました。

とはいえ、現代音楽を聴く機会はあまりなかったので、
時折、ラジオやテレビで眼にし、耳にするその魅惑的な音楽を、
夢中になって聴いた思い出があります。

ここ十年近くは、
わかりにい現代音楽よりも、
誰でもわかりやすい、楽しめる音楽のほうに
より愛着を感じていたため、
武満さんからは少し遠ざかっていたように思います。

しかし久しぶりに
武満さんの音楽を聴き直してみると、
若干憂鬱な感じの今の心境にピタリとはまり、

聴き終わって、
静かで穏やかな心持ちに満たされる、
不思議な感動を引き起こしてくれました。

昔はもう少し、
暗くておどろおどろしい印象が強かったと思うのですが、

今聴くと、
紡ぎだされるいろいろな響きが心にしっくり来て、
西洋的な音楽よりも、むしろ自分たちにとっての身近な音楽を
聴いているように感じました。

とくに感動したのは、
ノヴェンバー・ステップスです。

それから初めて聴くヴィジョンズも、
新しい名曲を発見した気分です。

ドビュッシーやラベルの管弦楽作品よりも、
私には武満さんの方がしっくり来るようです。


どちらかと言えば、
厳しい感じの音楽なので、
いつでも聴きたくなるとは思いませんが、

憂鬱で、若干ふさぎ込みがちなときに、
武満さんが効くことを、今日初めて知りました。

今後、記憶をたどりつつ、
武満さんのよい作品、演奏を紹介していきます。

2011年10月26日水曜日

ハイドシェックのバッハ:イタリア協奏曲とフランス風序曲



J.S.バッハ
イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV987
フランス風序曲 ロ短調(パルティータ)BWV831

エリック・ハイドシェック(ピアノ)
Eric Heidsieck, piano

録音:1977年
【CASSIOPEE 969210】



ハイドシェックさん、
カシオペ録音のバッハ、独奏ではこれが最後です。

なぜこの選曲、と思ったので、
少し調べてみました。

先に取り上げた
「パルティータ」全6曲は、
『クラーヴィア練習曲集』第1巻(1731年出版)として、

今回収録された
「イタリア協奏曲」と「フランス風序曲」は、
『クラーヴィア練習曲集』第2巻(1735年出版)として、

それぞれ出版されたものです。

このときの録音で、ハイドシェックさんは、
『クラーヴィア練習曲集』第1・2巻を
まとめて取り上げていたことがわかります。


イタリア協奏曲は、
それほど深みはありませんが、
聴いてすぐに明るい気持ちにさせられる楽しい作品です。

ハイドシェックさんの演奏は、
一気呵成にかけぬけ、若い息吹を感じさせる、
清々しい演奏です。

自由闊達ながら、全体として
上品な香り高い演奏に仕上がっているのはさすがです。


フランス風序曲(パルティータ)は、
全体に暗い色調なので、
はじめはあまり好きでなかったのですが、

何度か聴いているうちに、
相当な深みのある味わい、といったものが
感じ取れるようになって来ました。

でもまだすごく好き、とはいえないかも。

次からヘンデルに移ります。

2011年10月25日火曜日

プリンツのブラームス:クラリネット・ソナタ集

先日、ブラームスのヴィオラ・ソナタ集を紹介しました。

その後、同じ曲をクラリネットで演奏した
クラリネット・ソナタ集の名演を探していましたが
とても満足のいく1枚を見つけました。

ブラームス : クラリネット・ソナタ集

ブラームス
クラリネット・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.120-1
クラリネット・ソナタ 第2番 変ホ長調 Op.120-2

アルフレート・プリンツ(クラリネット)
Alfred Prinz, clarinet
マリア・プリンツ(ピアノ)
Maria Prinz, piano

録音:1988年4月1・2日
場所:松本市、ザ・ハーモニーホール
【FOCD-2533】


モーツァルトとブラームスの
クラリネット五重奏曲ですばらしい演奏をされていた
プリンツさんならどうだろう、
と思って探してみると、

フォンテックから、
ご夫妻で録音されたCDが出ていることに気がつき、
早速手に入れて聴いてみました。

これがブラームス特有の
愁いを感じさせる味わい深い演奏で、
とても感動しました。

夫婦での演奏というのは、
時に詰めが甘くなってしまいがちですが、
初めて聴くマリアさんのピアノも
十分に実力のある方のようで、
アルフレートさんとぴったり息のあった、
絶妙なアンサンブルを聴かせてくれます。

技術的な点だけをいえば、
カール・ライスターさんの演奏も
文句をつけようのないものだったのですが、

バリバリとこれでもかと力で押すスタイルが、
私には今ひとつに感じられました。


プリンツさんの演奏も、
モーツァルトとブラームスの五重奏曲のときと同じように、
これみよがしなところはなく、

わりとさらりと流れがちでもあるのですが、

少し耳をそばだたせると、
しみじみとしたブラームスの枯れた味わいが伝わってくる優れた演奏です。


惜しむらくは、
日本でこのCDを録音するに至った背景などを、
ライナーノートに何かしら記しておいてほしかったのですが、

そうした表記が何もないのは不親切だと思いました。
一見、プライベート盤のようです。

もしかしたら、
プリンツさん側からの申し出で、
あまり予算がないなかで録音されたのかしら。


ただし外見とは関係なく、
その内容は、まれに聴くレベルの高い演奏といってよいと思います。

2011年10月21日金曜日

グリュミオー&ハスキルのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5・6・7番


CD-2
ベートーヴェン
ヴァイオリン・ソナタ 第5番 へ長調 作品24「春」
 同 第6番 イ長調 作品30の1
 同 第7番 ハ短調 作品30の2

アルトゥール・グリュミオー(ヴァイオリン)
クララ・ハスキル(ピアノ)

録音:1957年1月(第5番)、
   1957年9月(第6番)、
   1956年12月(第7番)ウィーン

【BRILLIANT CLASSICS 93329】



グリュミオーさんとハスキルさんによる
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集、
2枚目です。

有名なスプリング・ソナタ(第5番)を筆頭に、
あまり演奏される機会のない第6・7番を収めてあります。


涼やかな風が吹き抜けてゆくような、
思わずハッとさせられる、凛とした美しさをもった演奏です。

すっきりとした切れ味のよい、
しかし絹のような目の細やかさをもった
ヴァイオリンの音色に、
素朴で味わい深い上品なピアノの伴奏が
絶妙にからみ合って、

室内楽を聴く醍醐味を味あわせてくれます。

第5番が良いのは当然のこととして、
第6・7番も、恐らくはじめて、
十分納得できる演奏に出会えました。

アンサンブル重視で
ここまで練られた演奏で聴けば、
第5・9番以外の曲も、なかなか良くできていると思えます。


おそらくヘッツェルさんが無事に
ベートーヴェンのソナタに取り組めていたなら、
こんな感じの演奏になっていたのではないでしょうか。


もうすぐグリュミオーさんの録音が
まとめて再販売されるようなので、
まずどれか一枚買ってみて、
よい音質であれば、

いろいろ買い揃えようかと思っております。

2011年10月17日月曜日

広上淳一&京都市響のベートーヴェン:交響曲第4番など

広上さんの新譜、やっと手に入れました。
期待以上の出来で、とても満足しました。


広上淳一指揮 京都市交響楽団定期演奏会
名曲ライブシリーズ

CD-1
チャイコフスキー:
イタリア奇想曲 op.45

プロコフィエフ:
ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 op.63
 ※黒川侑(ヴァイオリン)

ラフマニノフ:
パガニーニの主題による狂詩曲 op.43
 ※河村尚子(ピアノ)

 ※以上、第527回定期演奏会、ライブ収録
 (京都コンサートホール、2009年8月9日)


CD-2
ベートーヴェン:
交響曲 第4番 変ロ長調 op.60

 ※第533回定期演奏会、ライブ収録
 (京都コンサートホール、2010年3月27日)

シューマン
交響曲 第3番 変ホ長調「ライン」op.97

 ※第535回定期演奏会、ライブ収録
 (京都コンサートホール、2010年5月21日)

【KSOL-1001/2】



広上淳一さんは、
私が大学生のころに指揮者としてスタートされて、
日本フィル、ノールショッピング交響楽団などでの
ご活躍を目の当たりにして来ました。

これからという時期にしばらく休養もされて、
どうなるかなあ、と思っていたところ、

アメリカのコロンバス交響楽団の音楽監督に就任されて、
いよいよ復活か、と思っていたのですが、
数年で離任することになりました。

しかしコロンバス響を離任する少し前に
常任指揮者への就任が決まった京都市交響楽団と
よい関係が築けているようです。

今回発売されたCDは、たいへん充実した内容となっております。


録音もたいへんすばらしく、
ムントさんと録音で聴いていたときの京響の響きとはまるで違っていて、
オケの洗練された、美しい響きがそのまま伝えられているのが嬉しいです。

広上さんのCDは、
なかなかライブの熱気をそのまま伝えているものが少なかったので、
たいへんありがたいです。

収録された作品のうち、
ずばぬけて良いのは、チャイコフスキーとラフマニノフです。

イタリア奇想曲のほうは、
そもそも録音があまりないのですが、
楽しい佳曲で、広上さんの魅力満載です。

河村さんのピアノはセンスのかたまりで、
広上さんとよいコンビだと思いました。

これまでそんなに好きな曲ではなかったのですが、
広上さんのふるオケともども、
ひらめきに満ちたリズムと、
叙情的な歌にあふれていて、
稀に聴く名演となりました。

今後、パガニーニ狂詩曲といえば、
この演奏を選ぶことが多くなりそうです。

プロコフィエフは、
ライブでこれだけ聴かせてくれれば
大成功といったよいレベルです。


交響曲は、ベートーヴェンの第4番に驚きました。

とくに作為的なことはしていないはずなのですが、
所々この曲こんな響きがしていたっけ、と思わせられる、
ベートーヴェンのオーケストレーションの斬新さが伝わってくる演奏でした。

それでいて大元のベートーヴェンを聴く楽しさ、
感動も十分に伝わってきて、私にとっての大収穫でした。

広上さんのベートーヴェンは、
今後注目していきたいです。


シューマンは
ベートーヴェンと同じような切り口で、
十分成功といってよい演奏だと思いますが、

わたしにはほんの少し、
曲が停滞するようにも聴こえました。

前へ前へと進んでいく推進力といったものが加味されると、
シューマンも鬼に金棒だと思いました。


やはりこれだけ新鮮な響きを、
ひらめく瞬間を多く聴かせてくれる指揮者は他にいないので、
今後も充実したお仕事を続けていただきたいです。


なお、
CDには「名曲ライブシリーズ」とあるので、
ぜひ第2弾、第3弾と続けていただきたいです。

それだけの価値ある演奏をくり広げていると思います。

2011年10月13日木曜日

ハイドシェックのバッハ:パルティータ 第4・5・6番


J.S.バッハ
パルティータ第4番ニ長調 BWV.828
パルティータ第5番ト長調 BWV.829
パルティータ第6番ホ短調 BWV.830

エリック・ハイドシェック(ピアノ)

録音:1975年(4・5番)、1976年(6番)
【Cassiopee 969194】



続いて、2枚目を聴きました。

ハイドシェックさん、
バッハのパルティータの後半です。

際立ったリズム感に美しいタッチ、
ずば抜けた音楽性に支えられた、
聴いていてウキウキ、ワクワクする、
ピアノで弾かれたバッハです。

第4・5番と長調の曲が続くので、
私はどちらかといえば、この2枚目のほうが好きです。

現代ピアノの能力をフルに引き出した
楽しく美しく、バッハを聴く魅力満載の演奏です。

型にはまった
厳しい感じの演奏ではないので、
もしかしたら、バッハらしくない
という批判はありえるのかもしれませんが、

こんなに楽しい、
ハッとする瞬間だらけの
演奏を聴かないのはもったいないので、
これはこれで
一つのスタイルとして認めれば良い、
と私は考えています。


なお、パルティータとは「組曲」という意味です。

J.S.バッハ(1685年生、1750年没)
のパルティータ(鍵盤楽器のための組曲)は、

「クラヴィーア練習曲集第1巻」(全6曲)として、
1726年から1730年の間に出版されました。

大バッハ40代前半の作品ということになります。