ブルーノ・ワルターさんのことを知ったのは、
宇野功芳さんの著書を通じてでした。
ステレオ時代の録音は、いずれ良い音で復刻が出てから、
と考えているうちに、まとめて購入する機会がないまま今に至っています。
SP時代の録音は、
オーパス蔵さんで復刻されたときに、
ひと通りまとめて購入してありますので、
秋の夜長に、改めて聴き直しながら、紹介していこうと思います。
最近聴いていたのはこの1枚です。
1.モーツァルト:「皇帝ティトゥスの慈悲」序曲 K.621
(mat Col 2VH7047)※1938年1月15日録音
2.モーツァルト:「偽の女庭師(恋の花つくり)」序曲 K.196
(mat Col 2VH7048)※1938年1月15日録音
3.ハイドン:交響曲第86番ニ長調
(mat Col 2EA6778-83)※1938年9月13日録音
4.ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 作品90
(mat Col CAX95-102)※1936年5月18・19日録音
ブルーノ・ワルター指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1,2,4)
ロンドン交響楽団(3)
【OPK2054】
今から70年も前の録音ですから、
音質は決して良いとはいえないのですが、
これはこれで十分に感動的な音楽が奏でられており、
ワルターさんの指揮するオーケストラ音楽の妙味を楽しむことができます。
音質はおそらく良いほうがいいのでしょうが、
より大切なのは、奏でられる音楽が感動的かどうか、なので、
SP録音をこうしたかたちで楽しむことができるのは、
とても贅沢なことだなあ、と思います。
ワルターさんの指揮で特徴的なのは、
これしかない、と言いたくなる絶妙のテンポ感です。
音楽の自然なゆらぎが、ワルターさんの指揮で、
ほどよくひっぱり出されて、心のひだに語りかけて来ます。
オーケストラの自然な響きを基調としつつも、
ほどほどにワルターさんの自己主張も織り交ぜられて、
聴いてとても心豊かな気持ちにさせられます。
モーツァルトの小品2曲も素敵ですが、
とくに感銘を受けたのは、ハイドンの交響曲第86番です。
小気味よいテンポ感と立派な造形美で、
意外な名曲を発見した気分です。
ハイドンは基本的に根暗なところのない、陽性の作曲家で、
時代的にもそれほど個性を強く押し出すところがないので、
時にどこが良いのかわからなくなりがちなのですが、
ワルターさんとハイドンは、とても相性が良いようです。
ブラームスは、
ワルターさんが大得意としていたようで、
オケをぐいぐいひっぱりまわして、やりたい放題の演奏ですが、
不思議と空回りせず、音楽的に全体がまとまっているのは、
ワルターさんとウィーン・フィルの相性によるものでしょうか。
ただこのブラームスは、強奏時にところどころ音がわれます。
だんだん慣れてきますが、そこは残念です。
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