ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集、
2枚目は、
ウィーン原典版の通し番号で、
第11~16・18番の7曲を聴きました。
フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
ピアノ・ソナタ 第11番 変ロ長調 HOB.XVI- 2
ピアノ・ソナタ 第12番 イ長調 HOB.XVI- 12
ピアノ・ソナタ 第13番 ト長調 HOB.XVI- 6
ピアノ・ソナタ 第14番 ハ長調 HOB.XVI- 3
ピアノ・ソナタ 第15番 ホ長調 HOB.XVI- 13
ピアノ・ソナタ 第16番 ニ長調 HOB.XVI- 14
ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 HOB.XVI- deest
イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1996年4月、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.553824】
ウィーン原典版の通し番号を、
ホーボーケン番号に並べなおすと、
Hob.XVI- 2 (第11番)
Hob.XVI- 3 (第14番)
Hob.XVI- 6 (第13番)
*
Hob.XVI- 12 (第12番)
Hob.XVI- 13 (第15番)
Hob.XVI- 14 (第16番)
*
Hob.XVI- deest(第18番)
となります。
最後の deest は
ラテン語で「欠けていること」を意味し、
ホーボーケン番号に載っていない作品であることを示しています。
ホーボーケン番号【Hob.XVI-1~52】は
1957年に発表されたので、それ以降に発見された作品ということになります。
これは1961年に、
ジョージ・フェダー(Georg Feder)によって、
チェコのライゲルン修道院(Raigern Abbey)で発見された
2つのソナタのうちの1曲であり、
ウィーン原典版において、
第17・18番の2曲として採用されました。
このとき第18番は第2楽章までしかなかったのですが、
1972年に改めて、
第3楽章まで完備した筆写譜が発見されました。
この筆写譜に、バイエルンの作曲家
イスフリート・カイザー(Isfrid Kayser 1712-1771)
の名が記されていたことから、
第18番はハイドンの作品ではない可能性が高くなり、
同時に発見された第17番のほうも真偽が怪しくなっています。
このCDでは、
ウィーン原典版のまま、
2楽章版で演奏されています(第18番)。
(※福田陽氏のホームページ「ハイドン研究室」上の、
「ホーボーケン作品番号一覧」「クラヴィアソナタの部屋」の項目と、
NAXOSのCD解説を参照しました。)
演奏を聴くと、
初期のハイドンの作品だといわれれば、
そのまま信じられる内容ですが、
さほど感銘を受けなかったことも確かです。
このCDでは最後にこの曲が来るのですが、
いつの間にかはじまって、
いつの間にか終わっている感じがあり、
特別に心は動かされませんでした。
***
さてCD全体の印象ですが、
1枚目と同じような、
ハイドンの明るくすなおな音楽が広がっていき、
それなりに楽しめたことは確かですが、
何となく雑然とし、
まとまり悪く感じました。
なぜだろうと思って聴き直してみると、
曲の様式がバラバラで、
第11・14番(Hob.XVI-2・3)のように、
第3楽章にゆったりしたメヌエットが来ると、
曲が終わったような気がせず、
かなり注意して聴いていないと、
曲の切れ目がわからなくなっていたようです。
第11番 Hob.XVI-2〔Moderato/Largo/Menuet〕
第12番 Hob.XVI-12〔Andante/Menuet/Finale:Allegro molto〕
第13番 Hob.XVI-6〔Allegro/Minuet/Adagio/Finale:Allegro molto〕
第14番 Hob.XVI-3〔Allegretto/Andante/Menuet〕
第15番 Hob.XVI-13〔Moderato/Menuet/Finale:Presto〕
第16番 Hob.XVI-14〔Allegro moderato/Menuet/Finale:Allegro〕
第18番 Hob.XVI-deest〔Allegro/Menuetto〕
この1枚だけ聴いていると、
ホーボーケン番号のままの方がありがたいような気もします。
コンサートで、初期のソナタを
ウィーン原典版の順番のまま取り上げるのは、
確かに難しいだろうなと思いました。
***
このCDの中で、
特別に惹かれたのは、
第12番(Hob.XVI-12)です。
アンダンテからゆったりと始まるのですが、
この第1楽章が美しい。
この1曲を聴くために、
このCDを買ったのだと納得しました。
YouTube で
他の演奏を聴いてもさほど感心しなかったので、
ヤンドーさんの音楽性の勝利かもしれません。
同じような点から、
第13番(Hob.XVI-6)も Adagio が美しく、
琴線に触れてきました。
第15・16番(Hob.XVI-13・14)は、
緩徐楽章が置かれておらず、小ぢんまりとした作品ですが、
それなりにまとまっていて、聴ける作品ではありました。
第11・14番(Hob.XVI-2・3)は、
ホーボーケン番号の通り、最初期のソナタとして聴けば
同じ様式でそれなりに楽しめますが、
この順番に置かれていることは正直不思議な感じがしました。
では次の1枚に参りましょうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿