十代目柳家小三治(1939.12 - )の落語CD、
16枚目「鼠穴(ねずみあな)」を聴きました。
小三治47歳の時(1987.10)の口演です。
落語名人会40
柳家小三治16
「鼠穴(ねずみあな)」
録音:1987年10月31日、
鈴本演芸場、第8回柳家小三治独演会
〔お囃子〕植田ひさ/小口けい
【SRCL-3582】
「鼠穴(ねずみあな)」というお噺、
6代目三遊亭圓生(1900-1979)得意の演目だそうですが、
私はこのCDで初めて聴きました。
小三治さんも
「圓生師匠のままですけどね」と仰られていたそうですが、
もとは上方の人情噺であったものが、
3代目三遊亭圓馬(1882-1945)によって東京に伝えられ、
圓馬から5代目立川ぜん馬(1885-1960)を介して、
圓生(1900-1979)へと伝えられたお噺だそうです。
(京須偕充氏のCD解説を参照)
あらすじもわからぬまま
聴きはじめたわけですが、
兄弟のもともと冷めた間柄が、
お金が絡んでよりいっそうどろどろしていくお噺は、
お腹を抱えて笑うでもなく、
親子愛、兄弟愛にほろりと涙するわけでもなく、
いったいどこを楽しめば良いのだろう、
と思いました。
小三治さんの口演自体は、
迫真に迫った非の打ち所のないもので、
その点かえって精神的に追いつめられるようなところがあって、
確かにこれは、
圓生さんのように、
あとほんの少し飄々としたところがあった方が、
肩の力をぬいて楽しめるように思いました。
まだ圓生さんのは聴いていないので、
近々耳にしてみたいと思います。
※柳家小三治
「鼠穴」87-10/31◯
2012年10月31日水曜日
2012年10月30日火曜日
コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲第1 - 4番
オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732 - 1809)の弦楽四重奏曲全曲を、
コダーイ四重奏団の演奏で聴いていきます。
それではまず1枚目です。
ハイドン
弦楽四重奏曲 第1番 変ロ長調 作品1-1〔Hob.Ⅲ-1〕
弦楽四重奏曲 第2番 変ホ長調 作品1-2〔Hob.Ⅲ-2〕
弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 作品1-3〔Hob.Ⅲ-3〕
弦楽四重奏曲 第4番 ト長調 作品1-4〔Hob.Ⅲ-4〕
コダーイ四重奏団
録音:1991年4月8-11日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550398】
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732-1809)の弦楽四重奏曲は、
ハイドン生前の1801年に、
弟子のイニャス・プレイエル(1757-1831)によって、
最初の全集が刊行されました。
※初版で80曲、第2版で82曲、第3版で83曲を収録。
プライエル版に従って、第1番から83番まで、
通番をつけて呼ぶこともあります。
このとき初期の弦楽四重奏曲について、
◯作品1- 1~6〔Hob.Ⅲ- 1~6〕
◯作品2- 1~6〔Hob.Ⅲ- 7~12〕
◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕
という整理が行われていました。
作品1・2は 1765・66年(ハイドン33・34歳)、
作品3は 1777年(ハイドン45歳)に、
個別に出版されていたそうです。
この分類は、
最晩年(1805年)に作成させた「ハイドン目録」で、
ハイドン自身が認めたものでもあったのですが、
その後の研究によって、
◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕
は、ハイドンの信奉者
ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)の作品が
紛れ込んだ贋作であると考えられるようになりました。
そのほか、
◯作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕は、
交響曲「A」変ロ長調〔Hob.Ⅰ- 107〕からの編曲、
◯作品2- 3〔Hob.Ⅲ- 9〕は、
6声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 21〕からの編曲、
◯作品2- 5〔Hob.Ⅲ- 11〕は、
6声のディベルティメント ニ長調〔Hob.Ⅱ- 22〕からの編曲
であることが明らかにされています。
つまり作品1・2・3の計18曲のうち、
初期の弦楽四重奏曲として確実なのは、
◎作品1- 1~4・6〔Hob.Ⅲ- 1~4・6〕
◎作品2- 1・2・4・6〔Hob.Ⅲ- 7・8・10・12〕
の9曲のみということになります。
さらに本来、
初期の弦楽四重奏曲とすべき1曲が、
◎5声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
に誤分類されていたことも明らかにされています。
これはプレイエル版の全集から欠落しているので、
第0番と呼ばれることがあります。
※コダーイ四重奏団の全集では、CD2で、
作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕とさしかえて録音しています。
***
つまり現在は、第0番を含めた計10曲を、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲と考えるのが通説になっているようです。
作曲年代は、
ハイドン25歳から30歳(1757-62)のころと推定されています。
プレイエル版の通番とともにまとめておきます。
第0番 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
第3番 ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
第4番 ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕
第6番 ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕
第7番 イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕
第8番 ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕
第10番 ヘ長調 作品2- 4〔Hob.Ⅲ- 10〕
第12番 変ロ長調 作品2- 6〔Hob.Ⅲ- 12〕
コダーイ四重奏団による弦楽四重奏曲全集では、
CD1で、このうち
第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
第3番 ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
第4番 ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕
が演奏されていることになります。
***
この全集で演奏を担当した
コダーイ四重奏団(Kodaly Quarte)は、
1966年に、
ブダベストのフランツ・リスト・アカデミーの
学生4名が結成した「セベスチェン四重奏団」がもとになり、
1971年から「コダーイ四重奏団」として活動するようになりました。
1980年に第1ヴァイオリンが、
アッティラ・ファルヴェイ
に替わり、それまでのメンバー、
タマーシュ・ザボ(第2ヴァイオリン)、
ガボール・フィアス(ヴィオラ)、
ヤーノシュ・デヴィチ(チェロ)
とともに世界的に活躍するようになりました。
このメンバーで、NAXOS の
ハイドン全集の録音が行われています。
※CD解説(1991年発売)と
コダーイ四重奏団のHP〈http://www.kodalyquartet.com/〉を参照。
現在は、第1ヴァイオリン以外、メンバーが変わっています。
***
さて肝心の演奏ですが、
しっかりした様式感の中に、
清々しく、明るい気持ちにさせられる
ハイドン独自の世界が描き出されており、
ふつうに楽しむことができました。
とくに Adagio の
清涼で深遠な感じは他にないもので、
第1番と第4番のそれは私のお気に入りになりました。
確かに全体として、
それほど個性を際立たせたところはないので、
一夜のコンサートで、作品1だけ
6曲続けて聴かされるとしたら少々退屈な気もしますが、
ベートーヴェンやシューベルト、
ショスタコーヴィチなどの濃密な曲の合い間に、
1曲選んで演奏したら、
清涼剤的な役割を果たしうる
素敵な作品だと思いました。
コダーイ四重奏団は、
楽譜の表面だけを追うことなく、
ほどほどに作品の内実に迫ろうとするバランスが好ましく、
ハイドンにはとても合っていると思いました。
ほんの少し、
音程で気になるところもあったのですが、
かなり神経質に聴かなければ大丈夫なレベルだと思います。
では、次に進みましょうか。
※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。
※JAIRO でインターネット上に公開されている
飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
(『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。
※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。
日本語の一般書で、最新の研究を踏まえ、
ハイドンの作品の全容を概観してあるものとしては、
中野氏の本書が一番良いようです。
たまたま出版時に購入し、手もとに置いてありました。
※現代音楽作曲家・福田陽氏の
「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732 - 1809)の弦楽四重奏曲全曲を、
コダーイ四重奏団の演奏で聴いていきます。
それではまず1枚目です。
ハイドン
弦楽四重奏曲 第1番 変ロ長調 作品1-1〔Hob.Ⅲ-1〕
弦楽四重奏曲 第2番 変ホ長調 作品1-2〔Hob.Ⅲ-2〕
弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 作品1-3〔Hob.Ⅲ-3〕
弦楽四重奏曲 第4番 ト長調 作品1-4〔Hob.Ⅲ-4〕
コダーイ四重奏団
録音:1991年4月8-11日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550398】
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732-1809)の弦楽四重奏曲は、
ハイドン生前の1801年に、
弟子のイニャス・プレイエル(1757-1831)によって、
最初の全集が刊行されました。
※初版で80曲、第2版で82曲、第3版で83曲を収録。
プライエル版に従って、第1番から83番まで、
通番をつけて呼ぶこともあります。
このとき初期の弦楽四重奏曲について、
◯作品1- 1~6〔Hob.Ⅲ- 1~6〕
◯作品2- 1~6〔Hob.Ⅲ- 7~12〕
◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕
という整理が行われていました。
作品1・2は 1765・66年(ハイドン33・34歳)、
作品3は 1777年(ハイドン45歳)に、
個別に出版されていたそうです。
この分類は、
最晩年(1805年)に作成させた「ハイドン目録」で、
ハイドン自身が認めたものでもあったのですが、
その後の研究によって、
◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕
は、ハイドンの信奉者
ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)の作品が
紛れ込んだ贋作であると考えられるようになりました。
そのほか、
◯作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕は、
交響曲「A」変ロ長調〔Hob.Ⅰ- 107〕からの編曲、
◯作品2- 3〔Hob.Ⅲ- 9〕は、
6声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 21〕からの編曲、
◯作品2- 5〔Hob.Ⅲ- 11〕は、
6声のディベルティメント ニ長調〔Hob.Ⅱ- 22〕からの編曲
であることが明らかにされています。
つまり作品1・2・3の計18曲のうち、
初期の弦楽四重奏曲として確実なのは、
◎作品1- 1~4・6〔Hob.Ⅲ- 1~4・6〕
◎作品2- 1・2・4・6〔Hob.Ⅲ- 7・8・10・12〕
の9曲のみということになります。
さらに本来、
初期の弦楽四重奏曲とすべき1曲が、
◎5声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
に誤分類されていたことも明らかにされています。
これはプレイエル版の全集から欠落しているので、
第0番と呼ばれることがあります。
※コダーイ四重奏団の全集では、CD2で、
作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕とさしかえて録音しています。
***
つまり現在は、第0番を含めた計10曲を、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲と考えるのが通説になっているようです。
作曲年代は、
ハイドン25歳から30歳(1757-62)のころと推定されています。
プレイエル版の通番とともにまとめておきます。
第0番 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
第3番 ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
第4番 ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕
第6番 ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕
第7番 イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕
第8番 ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕
第10番 ヘ長調 作品2- 4〔Hob.Ⅲ- 10〕
第12番 変ロ長調 作品2- 6〔Hob.Ⅲ- 12〕
コダーイ四重奏団による弦楽四重奏曲全集では、
CD1で、このうち
第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
第3番 ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
第4番 ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕
が演奏されていることになります。
***
この全集で演奏を担当した
コダーイ四重奏団(Kodaly Quarte)は、
1966年に、
ブダベストのフランツ・リスト・アカデミーの
学生4名が結成した「セベスチェン四重奏団」がもとになり、
1971年から「コダーイ四重奏団」として活動するようになりました。
1980年に第1ヴァイオリンが、
アッティラ・ファルヴェイ
に替わり、それまでのメンバー、
タマーシュ・ザボ(第2ヴァイオリン)、
ガボール・フィアス(ヴィオラ)、
ヤーノシュ・デヴィチ(チェロ)
とともに世界的に活躍するようになりました。
このメンバーで、NAXOS の
ハイドン全集の録音が行われています。
※CD解説(1991年発売)と
コダーイ四重奏団のHP〈http://www.kodalyquartet.com/〉を参照。
現在は、第1ヴァイオリン以外、メンバーが変わっています。
***
さて肝心の演奏ですが、
しっかりした様式感の中に、
清々しく、明るい気持ちにさせられる
ハイドン独自の世界が描き出されており、
ふつうに楽しむことができました。
とくに Adagio の
清涼で深遠な感じは他にないもので、
第1番と第4番のそれは私のお気に入りになりました。
確かに全体として、
それほど個性を際立たせたところはないので、
一夜のコンサートで、作品1だけ
6曲続けて聴かされるとしたら少々退屈な気もしますが、
ベートーヴェンやシューベルト、
ショスタコーヴィチなどの濃密な曲の合い間に、
1曲選んで演奏したら、
清涼剤的な役割を果たしうる
素敵な作品だと思いました。
コダーイ四重奏団は、
楽譜の表面だけを追うことなく、
ほどほどに作品の内実に迫ろうとするバランスが好ましく、
ハイドンにはとても合っていると思いました。
ほんの少し、
音程で気になるところもあったのですが、
かなり神経質に聴かなければ大丈夫なレベルだと思います。
では、次に進みましょうか。
※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。
※JAIRO でインターネット上に公開されている
飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
(『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。
※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。
日本語の一般書で、最新の研究を踏まえ、
ハイドンの作品の全容を概観してあるものとしては、
中野氏の本書が一番良いようです。
たまたま出版時に購入し、手もとに置いてありました。
※現代音楽作曲家・福田陽氏の
「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。
2012年10月25日木曜日
ヴァルヒャのバッハ:オルガン作品全集(旧盤)その7
ヘルムート・ヴァルヒャ(1907 - 1991)による
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685.3 - 1750.7)の作品全集(旧盤)、
7枚目を聴きました。
J.S.バッハ:オルガン作品全集
CD-7
オルガン小曲集 BWV599-644 より
1) 救いはわれらに来れり BWV 638
2) 主イエス=キリスト、われ汝を呼ぶ BWV639
3) 主よ、汝によりてわれ希望をもつ BWV640
4) われら悩みの極みにありて BWV641
5) ただ神の摂理にまかす者 BWV642
6) 人みな死すべきもの BWV643
7) ああいかに空しく、いかにはかなきこと BWV644
6つのコラール(シュープラー・コラール)BWV645~650
8) 目覚めよ、と呼ぶ声あり BWV645
9) われいずこに逃れ行かん BWV646
10) ただ愛する神の摂理にまかす者 BWV647
11) わが魂は主をたたう BWV648
12) ああわがもとにとどまれ、主イエス=キリストよ BWV649
13) 汝イエスよ、今天より降りたもうや BWV650
18のコラール(ライプツィヒ・コラール)BWV651~668 より
14) ファンタジア:来たれ精霊、主なる神 BWV651
15) 来たれ精霊、主なる神 BWV652
16) バビロン川のほとりに BWV653
17) おお愛する魂よ、汝を飾れ BWV654
18) 主イエス=キリスト、われらを顧みたまえ BWV655
19) おお、穢れなき神の子羊 BWV656
20) いざもろびと神に感謝せよ BWV657
録音:1947年(8-13)、1950年(2,3,14,18-20)、1952年(1,4-7,15-17)
オルガン:カッペル、聖ペテロ=パウロ教会
【Membran 223489】CD-6
CD7枚目は、
オルガン小曲集(BWV599-644)全46曲より
残りの7曲(BWV639-644)
シュープラー・コラール(BWV645-650)全6曲、
ライプツィヒ・コラール(BWV651-668)全18曲より
始めの7曲(BWV651-657)
の3部構成になっています。
オルガン小曲集(BWV599-644)は、
30代前後(1713-1716)の作品集、
シュープラー・コラール(BWV645-650)は、
晩年の63歳(1748年)の作品、
ライプツィヒ・コラール(BWV651-668)は
30代初め(1708-17)までに作曲された旧稿をもとに、
最晩年にまとめられた作品集です。
オルガン小曲集では、
素材がそのままのかたちで断片的に現れて、
まとまりがつかなくなっている感じがありましたが、
シュープラー・コラールは、
より肩の力を抜いた感じで、
晩年の枯淡の境地が表現されているように感じました。
ほどよい長さでまとめられているので、
演奏機会も多いようです。
ライプツィヒ・コラールは、
よりスケールが大きく、若いころの素材を元に、
より高い境地をめざしてまとめられているようでした。
ひと通り聴いてみて、
シュープラー・コラールのような
まとまりのよい小品のほうが、コラールとして模範的といえるように感じました。
しかし、若さと熟練の境地がうまく結合している
ライプツィヒ・コラールの方が、
コンサートなどではより聴き映えするようにも感じ、
今はこちらの方が好きです。
残りの11曲が楽しみです。
※Wikipedia の「ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品一覧」を参照。
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685.3 - 1750.7)の作品全集(旧盤)、
7枚目を聴きました。
J.S.バッハ:オルガン作品全集
CD-7
オルガン小曲集 BWV599-644 より
1) 救いはわれらに来れり BWV 638
2) 主イエス=キリスト、われ汝を呼ぶ BWV639
3) 主よ、汝によりてわれ希望をもつ BWV640
4) われら悩みの極みにありて BWV641
5) ただ神の摂理にまかす者 BWV642
6) 人みな死すべきもの BWV643
7) ああいかに空しく、いかにはかなきこと BWV644
6つのコラール(シュープラー・コラール)BWV645~650
8) 目覚めよ、と呼ぶ声あり BWV645
9) われいずこに逃れ行かん BWV646
10) ただ愛する神の摂理にまかす者 BWV647
11) わが魂は主をたたう BWV648
12) ああわがもとにとどまれ、主イエス=キリストよ BWV649
13) 汝イエスよ、今天より降りたもうや BWV650
18のコラール(ライプツィヒ・コラール)BWV651~668 より
14) ファンタジア:来たれ精霊、主なる神 BWV651
15) 来たれ精霊、主なる神 BWV652
16) バビロン川のほとりに BWV653
17) おお愛する魂よ、汝を飾れ BWV654
18) 主イエス=キリスト、われらを顧みたまえ BWV655
19) おお、穢れなき神の子羊 BWV656
20) いざもろびと神に感謝せよ BWV657
録音:1947年(8-13)、1950年(2,3,14,18-20)、1952年(1,4-7,15-17)
オルガン:カッペル、聖ペテロ=パウロ教会
【Membran 223489】CD-6
CD7枚目は、
オルガン小曲集(BWV599-644)全46曲より
残りの7曲(BWV639-644)
シュープラー・コラール(BWV645-650)全6曲、
ライプツィヒ・コラール(BWV651-668)全18曲より
始めの7曲(BWV651-657)
の3部構成になっています。
オルガン小曲集(BWV599-644)は、
30代前後(1713-1716)の作品集、
シュープラー・コラール(BWV645-650)は、
晩年の63歳(1748年)の作品、
ライプツィヒ・コラール(BWV651-668)は
30代初め(1708-17)までに作曲された旧稿をもとに、
最晩年にまとめられた作品集です。
オルガン小曲集では、
素材がそのままのかたちで断片的に現れて、
まとまりがつかなくなっている感じがありましたが、
シュープラー・コラールは、
より肩の力を抜いた感じで、
晩年の枯淡の境地が表現されているように感じました。
ほどよい長さでまとめられているので、
演奏機会も多いようです。
ライプツィヒ・コラールは、
よりスケールが大きく、若いころの素材を元に、
より高い境地をめざしてまとめられているようでした。
ひと通り聴いてみて、
シュープラー・コラールのような
まとまりのよい小品のほうが、コラールとして模範的といえるように感じました。
しかし、若さと熟練の境地がうまく結合している
ライプツィヒ・コラールの方が、
コンサートなどではより聴き映えするようにも感じ、
今はこちらの方が好きです。
残りの11曲が楽しみです。
※Wikipedia の「ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品一覧」を参照。
2012年10月18日木曜日
ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:クレルヴォ交響曲
フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)が41歳のとき(1970)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した
同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865-1957)の
クレルヴォ交響曲を聴きました。
ジャン・シベリウス(1865-1957)
1) クレルヴォ交響曲 作品7
第1楽章 導入部(アダージョ・モデラート)
第2楽章 クレルヴォの青春(グラーヴェ)
第3楽章 クレルヴォとその妹(アレグロ・ヴィヴァーチェ)
第4楽章 クレルヴォは戦場に行く(アラ・マルチア)
第5楽章 クレルヴォの死(アンダンテ)
2) 劇付随音楽《クオレマ》より
鶴のいる情景 作品44-2
3) 劇音楽組曲《白鳥姫》作品54より
第2曲 ハーブ
第3曲 薔薇を持った乙女たち
第4曲 聞け、コマドリが歌っている
第6曲 白鳥姫と王子
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ライリ・コスティア(メゾソプラノ)
ウスコ・ヴィータネン(バス・バリトン)
ヘルシンキ大学男声合唱団(エンスティ・ポヒョラ指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1970年11月21-22日、サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16019/20】
クレルヴォ交響曲 作品7 は、
フィンランドの民族叙事詩
「カレワラ」にもとづく合唱付きの管弦楽曲です。
原題は
「クレルヴォ ― 独唱者と合唱、管弦楽のための交響詩」ですが、
今は「クレルヴォ交響曲」の通称で呼ばれることの方が多いです。
シベリウスが27歳のとき(1892年)に初演されましたが、
その後、生前に全曲演奏されることはありませんでした。
交響曲第1番が完成するのは、
この7年後、34歳(1899年)のことなので、
シベリウスの最初の交響曲とみることもできます。
ベルグルンド指揮のこのCDが世界初録音となりました。
私は今回初めて聴きました。
『カレワラ』を読んだことがなく、
フィンランド語も解さない身なので、
深く理解するにはまだ時間がかかると思いますが、
荒削りながらも
聴く者の気持ちを高揚させる
魅惑的なメロディがたくさんあって、
「フィンランディア」や交響曲第1・2番が好きな方には
必聴の名曲だと思いました。
伊福部昭の世界をもっと洗練させた感じで、
直接の影響はないようですが、
チャイコフスキーのマンフレッド交響曲(1885年初演)を思い出しました。
構成面での弱さを、
若さでカバーしているような所もありますが、
シベリウスを語る上で外せない1曲だと思います。
わかりやすい曲なので、
もう少し演奏されても良いのでしょうが、
フィンランド語の独唱、合唱が入るのは
ネックになるのかもしれません。
***
劇付随音楽《クオレマ》より
「鶴のいる情景」作品44-2 は、
義兄アルヴィド・ヤルネフェルトの戯曲
「クオレマ」のために作られた劇付随音楽です。
1903年の戯曲初演に際して
まず全6曲のもの(初稿)が作られたのち、
1904年にその第1曲を改訂した
《悲しきワルツ》作品44 が上演され、
大好評を得たのを受けて、
1906年に第3・4曲を改訂した
《鶴のいる情景》が上演されましたが、
そのまま生前は再演されなかったそうです。
シベリウスが40歳前後のときに作曲された作品ということになります。
さすがに「クレルヴォ交響曲」よりこなれた筆致で、
コンサートのアンコールや、逆にコンサートの幕開けなどにふさわしい1曲かな、と思いました。
「悲しきワルツ」に似た曲想ですが、
それほど物悲しい感じはなく、もう少し情景描写の方に重きを置いてある作品です。
劇音楽組曲《白鳥姫》作品54 は、
スウェーデンの作家
ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(1849-1912)の
戯曲「白鳥姫」(1902年)のために作曲された
劇付随音楽にもとづく組曲(全7曲)です。
シベリウスが43歳のとき(1908年)に作曲されました。
こちらもわかりやすく、
楽しく美しい軽めの作品で、
それだけにコンサートでは取り上げにくいかもしれませんが、
聴けて良かったです。
このCDには、
全7曲の中から4曲選んで収録されています。
全曲聴けなかったのが残念です。
***
ボーンマス交響楽団、
フィンランドのオケだと思い込んでいましたが、
調べてみるとイギリスのオケでした。
異国の曲をこれだけハッキリくっきりと
確信を持って演奏できるのは、やはりベルグルンドの手腕によるところが大きいのでしょうか。
洗練さでは他に一歩譲りますが、
荒々しいまでの迫力の中に、寒々としたシベリウス独特の響きを実現できているのは、このオケの長所だと思いました。
次は交響曲第1番へと進みましょう。
※Wikipedia の「ジャン・シベリウス」「クレルヴォ交響曲」
「クオレマ」「白鳥姫(シベリウス)」の項目を参照。
パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)が41歳のとき(1970)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した
同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865-1957)の
クレルヴォ交響曲を聴きました。
ジャン・シベリウス(1865-1957)
1) クレルヴォ交響曲 作品7
第1楽章 導入部(アダージョ・モデラート)
第2楽章 クレルヴォの青春(グラーヴェ)
第3楽章 クレルヴォとその妹(アレグロ・ヴィヴァーチェ)
第4楽章 クレルヴォは戦場に行く(アラ・マルチア)
第5楽章 クレルヴォの死(アンダンテ)
2) 劇付随音楽《クオレマ》より
鶴のいる情景 作品44-2
3) 劇音楽組曲《白鳥姫》作品54より
第2曲 ハーブ
第3曲 薔薇を持った乙女たち
第4曲 聞け、コマドリが歌っている
第6曲 白鳥姫と王子
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ライリ・コスティア(メゾソプラノ)
ウスコ・ヴィータネン(バス・バリトン)
ヘルシンキ大学男声合唱団(エンスティ・ポヒョラ指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1970年11月21-22日、サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16019/20】
クレルヴォ交響曲 作品7 は、
フィンランドの民族叙事詩
「カレワラ」にもとづく合唱付きの管弦楽曲です。
原題は
「クレルヴォ ― 独唱者と合唱、管弦楽のための交響詩」ですが、
今は「クレルヴォ交響曲」の通称で呼ばれることの方が多いです。
シベリウスが27歳のとき(1892年)に初演されましたが、
その後、生前に全曲演奏されることはありませんでした。
交響曲第1番が完成するのは、
この7年後、34歳(1899年)のことなので、
シベリウスの最初の交響曲とみることもできます。
ベルグルンド指揮のこのCDが世界初録音となりました。
私は今回初めて聴きました。
『カレワラ』を読んだことがなく、
フィンランド語も解さない身なので、
深く理解するにはまだ時間がかかると思いますが、
荒削りながらも
聴く者の気持ちを高揚させる
魅惑的なメロディがたくさんあって、
「フィンランディア」や交響曲第1・2番が好きな方には
必聴の名曲だと思いました。
伊福部昭の世界をもっと洗練させた感じで、
直接の影響はないようですが、
チャイコフスキーのマンフレッド交響曲(1885年初演)を思い出しました。
構成面での弱さを、
若さでカバーしているような所もありますが、
シベリウスを語る上で外せない1曲だと思います。
わかりやすい曲なので、
もう少し演奏されても良いのでしょうが、
フィンランド語の独唱、合唱が入るのは
ネックになるのかもしれません。
***
劇付随音楽《クオレマ》より
「鶴のいる情景」作品44-2 は、
義兄アルヴィド・ヤルネフェルトの戯曲
「クオレマ」のために作られた劇付随音楽です。
1903年の戯曲初演に際して
まず全6曲のもの(初稿)が作られたのち、
1904年にその第1曲を改訂した
《悲しきワルツ》作品44 が上演され、
大好評を得たのを受けて、
1906年に第3・4曲を改訂した
《鶴のいる情景》が上演されましたが、
そのまま生前は再演されなかったそうです。
シベリウスが40歳前後のときに作曲された作品ということになります。
さすがに「クレルヴォ交響曲」よりこなれた筆致で、
コンサートのアンコールや、逆にコンサートの幕開けなどにふさわしい1曲かな、と思いました。
「悲しきワルツ」に似た曲想ですが、
それほど物悲しい感じはなく、もう少し情景描写の方に重きを置いてある作品です。
劇音楽組曲《白鳥姫》作品54 は、
スウェーデンの作家
ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(1849-1912)の
戯曲「白鳥姫」(1902年)のために作曲された
劇付随音楽にもとづく組曲(全7曲)です。
シベリウスが43歳のとき(1908年)に作曲されました。
こちらもわかりやすく、
楽しく美しい軽めの作品で、
それだけにコンサートでは取り上げにくいかもしれませんが、
聴けて良かったです。
このCDには、
全7曲の中から4曲選んで収録されています。
全曲聴けなかったのが残念です。
***
ボーンマス交響楽団、
フィンランドのオケだと思い込んでいましたが、
調べてみるとイギリスのオケでした。
異国の曲をこれだけハッキリくっきりと
確信を持って演奏できるのは、やはりベルグルンドの手腕によるところが大きいのでしょうか。
洗練さでは他に一歩譲りますが、
荒々しいまでの迫力の中に、寒々としたシベリウス独特の響きを実現できているのは、このオケの長所だと思いました。
次は交響曲第1番へと進みましょう。
※Wikipedia の「ジャン・シベリウス」「クレルヴォ交響曲」
「クオレマ」「白鳥姫(シベリウス)」の項目を参照。
2012年10月17日水曜日
ルービンシュタインのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1・2番(1975年録音)
ポーランド出身のピアニスト、
アルトゥール・ルービンシュタイン(1887-1982)が、
88歳のときに(1975年)、
アルゼンチン出身のピアニスト兼指揮者
ダニエル・バレンボイム(1942 - )の指揮する
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と録音した
ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の中から、
第1番と第2番を聴きました。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品19
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ダニエル・バレンボイム(指揮)
録音:1975年4月9-11日、ロンドン、キングスウェイ・ホール
【09026-63077-2】
ピアノ協奏曲の第1番と第2番の成立について
少し調べてみましたが、諸説あるようでしたので、
今は、青木やよい著『ベートーヴェンの生涯』
(平凡社新書、平成21年12月)所収の「略年譜」によって、
25歳のとき(1795年)の成立としておきます。
第2番の方が第1番より
10年ほど早く作曲がスタートしたものの、
完成には苦心したようで、
第1番が1801年3月に出版されたのに続き、
同年12月に第2番が出版されたそうです。
※「国立音楽大学 音楽研究所 ベートーヴェン研究部門」
〈http://www.ri.kunitachi.ac.jp/lvb/index.html〉掲載の
「日本語版・ベートーヴェン作品目録」を参照。
実際よく聴いてみると、
第2番の方が多少まとまりが悪いようにも感じますが、
第3番以降の深化に比べれば、
わずかな違いのようにも思います。
なお、第1番第1楽章のカデンツァは、
ベートーヴェン自身によって3種類残されていますが、
ルービンシュタインは、3番目のを用いています。
***
ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、
ルービンシュタイン(ピアノ)と
バレンボイム(指揮)による「皇帝」が飛び抜けて素晴らしく、
長らく愛聴盤になっているので、
機会があれば他の番号もと思っていたのですが、
国内盤では不思議と再販されず、
聴く機会がなかったので、
輸入盤で手に入れることにしました。
もしかしたら「皇帝」以外は
大したことがないのかもと心配しましたが、
聴いてみて安心しました。
「皇帝」と同じレベルの好調さを維持しており、
明るく穏やかで力強くもある
若々しいエネルギーにあふれた演奏で、
私がこれまで聴いてきた中では、
文句なしにベストの出来でした。
1音たりとも弾き飛ばさずに、
しっかりと弾き切っているところが好ましく、
しかし少しももたつかず、重さを感じさせない、
推進力のある演奏は、
第1・2番の魅力を余すところなく伝えてくれていると思います。
意外に良いのがバレンボイムの指揮です。
重すぎず、軽すぎずの充実した響きと、
力強い推進力に支えられた立派な伴奏で、
これも私の中ではベストの出来です。
バレンボイムの指揮は、
最近の良くなったと言われる録音でも、
私とは肌に合わないものがほとんどなのですが、
このルービンシュタインとの協奏曲は、
例外的に良いです。
近いうちに、第3・4番も聴いてみようと思います。
アルトゥール・ルービンシュタイン(1887-1982)が、
88歳のときに(1975年)、
アルゼンチン出身のピアニスト兼指揮者
ダニエル・バレンボイム(1942 - )の指揮する
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と録音した
ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の中から、
第1番と第2番を聴きました。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品19
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ダニエル・バレンボイム(指揮)
録音:1975年4月9-11日、ロンドン、キングスウェイ・ホール
【09026-63077-2】
ピアノ協奏曲の第1番と第2番の成立について
少し調べてみましたが、諸説あるようでしたので、
今は、青木やよい著『ベートーヴェンの生涯』
(平凡社新書、平成21年12月)所収の「略年譜」によって、
25歳のとき(1795年)の成立としておきます。
第2番の方が第1番より
10年ほど早く作曲がスタートしたものの、
完成には苦心したようで、
第1番が1801年3月に出版されたのに続き、
同年12月に第2番が出版されたそうです。
※「国立音楽大学 音楽研究所 ベートーヴェン研究部門」
〈http://www.ri.kunitachi.ac.jp/lvb/index.html〉掲載の
「日本語版・ベートーヴェン作品目録」を参照。
実際よく聴いてみると、
第2番の方が多少まとまりが悪いようにも感じますが、
第3番以降の深化に比べれば、
わずかな違いのようにも思います。
なお、第1番第1楽章のカデンツァは、
ベートーヴェン自身によって3種類残されていますが、
ルービンシュタインは、3番目のを用いています。
***
ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、
ルービンシュタイン(ピアノ)と
バレンボイム(指揮)による「皇帝」が飛び抜けて素晴らしく、
長らく愛聴盤になっているので、
機会があれば他の番号もと思っていたのですが、
国内盤では不思議と再販されず、
聴く機会がなかったので、
輸入盤で手に入れることにしました。
もしかしたら「皇帝」以外は
大したことがないのかもと心配しましたが、
聴いてみて安心しました。
「皇帝」と同じレベルの好調さを維持しており、
明るく穏やかで力強くもある
若々しいエネルギーにあふれた演奏で、
私がこれまで聴いてきた中では、
文句なしにベストの出来でした。
1音たりとも弾き飛ばさずに、
しっかりと弾き切っているところが好ましく、
しかし少しももたつかず、重さを感じさせない、
推進力のある演奏は、
第1・2番の魅力を余すところなく伝えてくれていると思います。
意外に良いのがバレンボイムの指揮です。
重すぎず、軽すぎずの充実した響きと、
力強い推進力に支えられた立派な伴奏で、
これも私の中ではベストの出来です。
バレンボイムの指揮は、
最近の良くなったと言われる録音でも、
私とは肌に合わないものがほとんどなのですが、
このルービンシュタインとの協奏曲は、
例外的に良いです。
近いうちに、第3・4番も聴いてみようと思います。
2012年10月11日木曜日
ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その4
マレイ・ペライア(1947 - )さんによる
モーツァルト(1756.1 - 1791.12)のピアノ協奏曲全集、
4枚目を聴きました。
モーツァルト
ピアノ協奏曲 第11番 ヘ長調 K.413(387a)
ピアノ協奏曲 第12番 変ホ長調 K.414(385p)
マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:〔第11番〕1977年2・6月、〔第12番〕1979年6月、EMIスタジオ、ロンドン。【SONY MUSIC/8 86919 141122】CD4
ピアノ協奏曲の第11番(K.413)以降は、
ウィーン定住後の作品として、
それ以前のものとは分けて考えられています。
11~13番(K.413~415)は、
1782年末から1783年にかけて
モーツァルトが27歳になるときに
立て続けに作曲されたそうです。
確かに、
このCDの2曲は、
中庸な明るさに、ごくわずかなほの暗さもさし込む
同じタイプの曲だと感じました。
第10番から4年、
9番からは6年を隔てているからか、
曲としての完成度も高く、
ふつうに現在のコンサートの1曲に取り上げられても
楽しめると思いました。
第12番は、アシュケナージや
ハイドシェックの演奏で聴きなれていたからか、
第11番より親しみ深く聴こえましたが、
第11番は今回初めて聴いたので、
もう少し聴き込まないと、
第12番>第11番とも言い切れないでしょう。
ペライアさんのピアノ、
メリハリはあまりありませんが、
曲の美しさをよくひき出した素敵な演奏だと思います。
これより安定志向だと
面白みにかけることになりそうですが、
その三歩手前で止まっているので、
私にはありな演奏でした。
※作品の基本情報については、
ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」
【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】
を参照しました。
モーツァルト(1756.1 - 1791.12)のピアノ協奏曲全集、
4枚目を聴きました。
モーツァルト
ピアノ協奏曲 第11番 ヘ長調 K.413(387a)
ピアノ協奏曲 第12番 変ホ長調 K.414(385p)
マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:〔第11番〕1977年2・6月、〔第12番〕1979年6月、EMIスタジオ、ロンドン。【SONY MUSIC/8 86919 141122】CD4
ピアノ協奏曲の第11番(K.413)以降は、
ウィーン定住後の作品として、
それ以前のものとは分けて考えられています。
11~13番(K.413~415)は、
1782年末から1783年にかけて
モーツァルトが27歳になるときに
立て続けに作曲されたそうです。
確かに、
このCDの2曲は、
中庸な明るさに、ごくわずかなほの暗さもさし込む
同じタイプの曲だと感じました。
第10番から4年、
9番からは6年を隔てているからか、
曲としての完成度も高く、
ふつうに現在のコンサートの1曲に取り上げられても
楽しめると思いました。
第12番は、アシュケナージや
ハイドシェックの演奏で聴きなれていたからか、
第11番より親しみ深く聴こえましたが、
第11番は今回初めて聴いたので、
もう少し聴き込まないと、
第12番>第11番とも言い切れないでしょう。
ペライアさんのピアノ、
メリハリはあまりありませんが、
曲の美しさをよくひき出した素敵な演奏だと思います。
これより安定志向だと
面白みにかけることになりそうですが、
その三歩手前で止まっているので、
私にはありな演奏でした。
※作品の基本情報については、
ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」
【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】
を参照しました。
2012年10月8日月曜日
Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その6
Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集、
6枚目を聴きました。
Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS
1) ワーグナー:ジークフリートの葬送行進曲
2) ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~第1幕前奏曲
***
3) ヘンデル:合奏協奏曲 ニ短調 Op.6-10 HWV328
4) ブラームス: ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
5) ヒンデミット:管弦楽のための協奏曲 作品38
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1949年12月19日(1・2)、1950年6月20日(3~5)
ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD6
CD6枚目は、
〈前半〉2曲と〈後半〉3曲に分けられます。
***
まず〈前半〉2曲には、
1949年12月18・19・20日のベルリン・フィル演奏会から、
19日の演奏が収録されています。
このとき演奏会で取り上げられた5曲のうち、
はじめの3曲がCD5に収録されたので、
残る2曲がこのCD6に収録されたことになります。
その2曲とは、ドイツの作曲家
リヒャルト・ワーグナー(1813 - 1883)の作品で、
1曲目は、楽劇「神々の黄昏」より「ジークフリートの葬送行進曲」
2曲目は、
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲
です。
音質、演奏ともに優れているのは、
「葬送行進曲」の方です。彫りの深さに度肝をぬきました。
「マイスタージンガー」前奏曲の方は、
演奏は良いはずですが、音質が今ひとつなので、
あえてこの録音でなければ、という特徴には乏しいように感じました。
***
続いて〈後半〉3曲には、
1950年6月20日のベルリン・フィル特別演奏会が収録されています。
演奏会の曲目4曲のうち、
最後の「英雄」交響曲をのぞく3曲が収録されています。
(「英雄」交響曲は、CD7に収録。)
1曲目は、
ドイツ生まれで、イギリスに帰化した作曲家、
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685 - 1759)の、
12の合奏協奏曲集 作品6 から 第10番ニ短調 HWV328 です。
ヘンデル54歳のとき(1739年)の作品です。
これは原曲を知らないからかもしれませんが、
聴いていても大オーケーストラが放つ音響への
違和感のほうが強く、感動以前に耳が受けつけないところがありました。
2曲目は、ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス(1833 - 1897)の、
ハイドンの主題による変奏曲 作品56a です。
ブラームス40歳のとき(1873年)の作品です。
交響曲第1番ができるのはこの3年後のことです。
これは名曲の名演奏。音質も良いです。
実はこれまでそんなに感動したことはなかったのですが、
初めて、ああこんなに良い曲だったのか、
と思えました。
3曲目は、ドイツの作曲家
パウル・ヒンデミット(1895 - 1963)の、
管弦楽のための協奏曲 作品38です。
ヒンデミット30歳のとき(1925年)の作品です。
これは今回初めて聴きました。
どちらかというと無調に近い印象があるので、
ヒンデミットはほとんど聴いていません。
でもこれは予想外に面白かったです。
短い中にも素材がぎゅっと凝縮されていて、
最後が明るい感じで
さわやかに終わるところも共感を持てました。
ヒンデミットを聴いて、
いいなあと思ったのも、初めてだった気がします。
ヒンデミットさん、
非常に多作な方のようで、
いろいろな曲を書かれているので、
いずれ時期をみて、聴いて行こうと思います。
※作品については、wikipedia の「リヒャルト・ワーグナー」「ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル」「ヨハネス・ブラームス」「パウル・ヒンデミット」の各項目を参照。
※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集、
6枚目を聴きました。
Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS
1) ワーグナー:ジークフリートの葬送行進曲
2) ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~第1幕前奏曲
***
3) ヘンデル:合奏協奏曲 ニ短調 Op.6-10 HWV328
4) ブラームス: ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
5) ヒンデミット:管弦楽のための協奏曲 作品38
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1949年12月19日(1・2)、1950年6月20日(3~5)
ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD6
CD6枚目は、
〈前半〉2曲と〈後半〉3曲に分けられます。
***
まず〈前半〉2曲には、
1949年12月18・19・20日のベルリン・フィル演奏会から、
19日の演奏が収録されています。
このとき演奏会で取り上げられた5曲のうち、
はじめの3曲がCD5に収録されたので、
残る2曲がこのCD6に収録されたことになります。
その2曲とは、ドイツの作曲家
リヒャルト・ワーグナー(1813 - 1883)の作品で、
1曲目は、楽劇「神々の黄昏」より「ジークフリートの葬送行進曲」
2曲目は、
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲
です。
音質、演奏ともに優れているのは、
「葬送行進曲」の方です。彫りの深さに度肝をぬきました。
「マイスタージンガー」前奏曲の方は、
演奏は良いはずですが、音質が今ひとつなので、
あえてこの録音でなければ、という特徴には乏しいように感じました。
***
続いて〈後半〉3曲には、
1950年6月20日のベルリン・フィル特別演奏会が収録されています。
演奏会の曲目4曲のうち、
最後の「英雄」交響曲をのぞく3曲が収録されています。
(「英雄」交響曲は、CD7に収録。)
1曲目は、
ドイツ生まれで、イギリスに帰化した作曲家、
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685 - 1759)の、
12の合奏協奏曲集 作品6 から 第10番ニ短調 HWV328 です。
ヘンデル54歳のとき(1739年)の作品です。
これは原曲を知らないからかもしれませんが、
聴いていても大オーケーストラが放つ音響への
違和感のほうが強く、感動以前に耳が受けつけないところがありました。
2曲目は、ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス(1833 - 1897)の、
ハイドンの主題による変奏曲 作品56a です。
ブラームス40歳のとき(1873年)の作品です。
交響曲第1番ができるのはこの3年後のことです。
これは名曲の名演奏。音質も良いです。
実はこれまでそんなに感動したことはなかったのですが、
初めて、ああこんなに良い曲だったのか、
と思えました。
3曲目は、ドイツの作曲家
パウル・ヒンデミット(1895 - 1963)の、
管弦楽のための協奏曲 作品38です。
ヒンデミット30歳のとき(1925年)の作品です。
これは今回初めて聴きました。
どちらかというと無調に近い印象があるので、
ヒンデミットはほとんど聴いていません。
でもこれは予想外に面白かったです。
短い中にも素材がぎゅっと凝縮されていて、
最後が明るい感じで
さわやかに終わるところも共感を持てました。
ヒンデミットを聴いて、
いいなあと思ったのも、初めてだった気がします。
ヒンデミットさん、
非常に多作な方のようで、
いろいろな曲を書かれているので、
いずれ時期をみて、聴いて行こうと思います。
※作品については、wikipedia の「リヒャルト・ワーグナー」「ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル」「ヨハネス・ブラームス」「パウル・ヒンデミット」の各項目を参照。
※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】
2012年10月4日木曜日
ヘブラーのバッハ:フランス組曲(1979年録音)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
フランス組曲 第1番 BWV812
フランス組曲 第2番 BWV813
フランス組曲 第3番 BWV814
フランス組曲 第4番 BWV815
フランス組曲 第5番 BWV816
フランス組曲 第6番 BWV817
イングリット・ヘブラー(ピアノ)
録音:1979年
【PROA-18/9】
オーストリア出身のピアニスト
イングリット・ヘブラー(1926 - )さんの名演をもう一つ。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685 - 1750)の
フランス組曲 BWV812~817(全6曲)です。
バッハ30代半ばの
1722年頃に作曲されたと推定されています。
平成17年10月に、
TOWER RECORD から1500円(!)で再販された折に購入しました。
そのときは、
曲自体よく知らなかったからか、
あまり印象に残らなかったのですが、
最近久しぶりに聴き直してみたところ、
ゆったりのんびりした流れの中で、
よくピアノを歌わせた典雅な演奏で、
大好きになりました。
飛び跳ねるような
リズムには若干欠けるところがあるので、
はじめて聴く分には、
もう少し刺激のある演奏の方が楽しめるかもしれませんが、
ガチガチに
リズムを殺してしまうところもなく、
自然に呼吸をするように広がりゆくメロディに、
曲本来の美しさを体感し直すことができました。
聴き込むごとに、
味わい深くなって来る、
お薦めの演奏です。
※曲の成立については、
ピティナ・ピアノ曲事典「バッハ」の項目を参照。
【http://www.piano.or.jp/enc/composers/47/】
2012年10月1日月曜日
ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その1
ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集、
1枚目は、
ウィーン原典版の通し番号で、
第1番から第10番までを聴きました。
フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
ピアノ・ソナタ 第1番 ト長調 Hob.XVI-8
ピアノ・ソナタ 第2番 ハ長調 Hob.XVI-7
ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ長調 Hob.XVI-9
ピアノ・ソナタ 第4番 ト長調 Hob.XVI-G1
ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調 Hob.XVI-11
ピアノ・ソナタ 第6番 ハ長調 Hob.XVI-10
ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 Hob.XVII-D1
ピアノ・ソナタ 第8番 イ長調 Hob.XVI-5
ピアノ・ソナタ 第9番 ニ長調 Hob.XVI-4
ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 Hob.XVI-1
イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1996年2月、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.553824】
ウィーン原典版の通し番号を、
ホーボーケン番号で並べなおすと、
Hob.XVI-1(第10番)
*
Hob.XVI-4(第9番)
Hob.XVI-5(第8番)
*
Hob.XVI-7(第2番)
Hob.XVI-8(第1番)
Hob.XVI-9(第3番)
Hob.XVI-10(第6番)
Hob.XVI-11(第5番)
*
Hob.XVI-G1(第4番)
Hob.XVII-D1(第7番)
となります。
途中で抜けているのは、
Hob.XVI-2(第11番)
Hob.XVI-3(第14番)
Hob.XVI-6(第13番)
の3曲です。(次のCDに収録。)
ほかと異なる番号の2曲、
Hob.XVI-G1(第4番)
Hob.XVII-D1(第7番)
は、真作である裏づけの取れない作品で、
特に〈D1〉は偽作とする研究があるそうです。
ただし実際に聴いてみて、
ほかと明らかな違いがあるわけではなく、
とくに〈G1〉は良くまとまった佳曲だと思います。
***
今回、ハイドンの初期のソナタを聴いてみて、
思い浮かんだのは、
毒気を抜いたスカルラッティ。
1楽章完結というわけではありませんが、
簡潔な構成の中で、
前向きで明るく楽しいメロディが次々と展開していき、
思っていた以上に楽しむことができました。
ヤンドーさんのピアノは、もったいぶらずに
どんどん曲の本質に切り込んでくるところが好ましく、
ハイドンにぴったりだと思いました。
これなら眠くなる暇がありません。
ハイドンの音楽には予定調和なところがあるので、
若いころは、今ひとつ良さがわからなかったのですが、
四十を過ぎ、辛いこと、苦しいこと、
悲しいことがたくさん起こる世の中で、
心に平穏をもたらし、
明るく暖かなものとする、
音楽の大切さに気がつくようになると、
ハイドンの音楽が身に染むようになって来ました。
日々こんなに明るく楽しく、透明な心であれたらいいな、と。
※なお、
第4番(Hob.XVI- G1)の第3楽章は、
第5番(Hob.XVI- 11)の第1楽章と同じ曲なので、
CDを聴いていると、突然
同じ楽章がリピートされることになり、
若干戸惑います。
おおむね同じ時期に作曲されたと考えて、
このように並べたのかもしれませんが、
同じ楽章を含む別個のソナタを、
同時に作曲したとも考えにくいので、
コンサートなどで全曲を取り上げる場合に、
頭を悩ますだろうな、と思いました。
今回聴いた印象では、
第4番の方が完成度が高く、
第5番は今ひとつな感じがしました。
(ただし、真作の確証があるのは第5番の方だそうです。)
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集、
1枚目は、
ウィーン原典版の通し番号で、
第1番から第10番までを聴きました。
フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
ピアノ・ソナタ 第1番 ト長調 Hob.XVI-8
ピアノ・ソナタ 第2番 ハ長調 Hob.XVI-7
ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ長調 Hob.XVI-9
ピアノ・ソナタ 第4番 ト長調 Hob.XVI-G1
ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調 Hob.XVI-11
ピアノ・ソナタ 第6番 ハ長調 Hob.XVI-10
ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 Hob.XVII-D1
ピアノ・ソナタ 第8番 イ長調 Hob.XVI-5
ピアノ・ソナタ 第9番 ニ長調 Hob.XVI-4
ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 Hob.XVI-1
イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1996年2月、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.553824】
ウィーン原典版の通し番号を、
ホーボーケン番号で並べなおすと、
Hob.XVI-1(第10番)
*
Hob.XVI-4(第9番)
Hob.XVI-5(第8番)
*
Hob.XVI-7(第2番)
Hob.XVI-8(第1番)
Hob.XVI-9(第3番)
Hob.XVI-10(第6番)
Hob.XVI-11(第5番)
*
Hob.XVI-G1(第4番)
Hob.XVII-D1(第7番)
となります。
途中で抜けているのは、
Hob.XVI-2(第11番)
Hob.XVI-3(第14番)
Hob.XVI-6(第13番)
の3曲です。(次のCDに収録。)
ほかと異なる番号の2曲、
Hob.XVI-G1(第4番)
Hob.XVII-D1(第7番)
は、真作である裏づけの取れない作品で、
特に〈D1〉は偽作とする研究があるそうです。
ただし実際に聴いてみて、
ほかと明らかな違いがあるわけではなく、
とくに〈G1〉は良くまとまった佳曲だと思います。
***
今回、ハイドンの初期のソナタを聴いてみて、
思い浮かんだのは、
毒気を抜いたスカルラッティ。
1楽章完結というわけではありませんが、
簡潔な構成の中で、
前向きで明るく楽しいメロディが次々と展開していき、
思っていた以上に楽しむことができました。
ヤンドーさんのピアノは、もったいぶらずに
どんどん曲の本質に切り込んでくるところが好ましく、
ハイドンにぴったりだと思いました。
これなら眠くなる暇がありません。
ハイドンの音楽には予定調和なところがあるので、
若いころは、今ひとつ良さがわからなかったのですが、
四十を過ぎ、辛いこと、苦しいこと、
悲しいことがたくさん起こる世の中で、
心に平穏をもたらし、
明るく暖かなものとする、
音楽の大切さに気がつくようになると、
ハイドンの音楽が身に染むようになって来ました。
日々こんなに明るく楽しく、透明な心であれたらいいな、と。
※なお、
第4番(Hob.XVI- G1)の第3楽章は、
第5番(Hob.XVI- 11)の第1楽章と同じ曲なので、
CDを聴いていると、突然
同じ楽章がリピートされることになり、
若干戸惑います。
おおむね同じ時期に作曲されたと考えて、
このように並べたのかもしれませんが、
同じ楽章を含む別個のソナタを、
同時に作曲したとも考えにくいので、
コンサートなどで全曲を取り上げる場合に、
頭を悩ますだろうな、と思いました。
今回聴いた印象では、
第4番の方が完成度が高く、
第5番は今ひとつな感じがしました。
(ただし、真作の確証があるのは第5番の方だそうです。)
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