パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)が41歳のとき(1970)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した
同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865-1957)の
クレルヴォ交響曲を聴きました。
ジャン・シベリウス(1865-1957)
1) クレルヴォ交響曲 作品7
第1楽章 導入部(アダージョ・モデラート)
第2楽章 クレルヴォの青春(グラーヴェ)
第3楽章 クレルヴォとその妹(アレグロ・ヴィヴァーチェ)
第4楽章 クレルヴォは戦場に行く(アラ・マルチア)
第5楽章 クレルヴォの死(アンダンテ)
2) 劇付随音楽《クオレマ》より
鶴のいる情景 作品44-2
3) 劇音楽組曲《白鳥姫》作品54より
第2曲 ハーブ
第3曲 薔薇を持った乙女たち
第4曲 聞け、コマドリが歌っている
第6曲 白鳥姫と王子
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ライリ・コスティア(メゾソプラノ)
ウスコ・ヴィータネン(バス・バリトン)
ヘルシンキ大学男声合唱団(エンスティ・ポヒョラ指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1970年11月21-22日、サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16019/20】
クレルヴォ交響曲 作品7 は、
フィンランドの民族叙事詩
「カレワラ」にもとづく合唱付きの管弦楽曲です。
原題は
「クレルヴォ ― 独唱者と合唱、管弦楽のための交響詩」ですが、
今は「クレルヴォ交響曲」の通称で呼ばれることの方が多いです。
シベリウスが27歳のとき(1892年)に初演されましたが、
その後、生前に全曲演奏されることはありませんでした。
交響曲第1番が完成するのは、
この7年後、34歳(1899年)のことなので、
シベリウスの最初の交響曲とみることもできます。
ベルグルンド指揮のこのCDが世界初録音となりました。
私は今回初めて聴きました。
『カレワラ』を読んだことがなく、
フィンランド語も解さない身なので、
深く理解するにはまだ時間がかかると思いますが、
荒削りながらも
聴く者の気持ちを高揚させる
魅惑的なメロディがたくさんあって、
「フィンランディア」や交響曲第1・2番が好きな方には
必聴の名曲だと思いました。
伊福部昭の世界をもっと洗練させた感じで、
直接の影響はないようですが、
チャイコフスキーのマンフレッド交響曲(1885年初演)を思い出しました。
構成面での弱さを、
若さでカバーしているような所もありますが、
シベリウスを語る上で外せない1曲だと思います。
わかりやすい曲なので、
もう少し演奏されても良いのでしょうが、
フィンランド語の独唱、合唱が入るのは
ネックになるのかもしれません。
***
劇付随音楽《クオレマ》より
「鶴のいる情景」作品44-2 は、
義兄アルヴィド・ヤルネフェルトの戯曲
「クオレマ」のために作られた劇付随音楽です。
1903年の戯曲初演に際して
まず全6曲のもの(初稿)が作られたのち、
1904年にその第1曲を改訂した
《悲しきワルツ》作品44 が上演され、
大好評を得たのを受けて、
1906年に第3・4曲を改訂した
《鶴のいる情景》が上演されましたが、
そのまま生前は再演されなかったそうです。
シベリウスが40歳前後のときに作曲された作品ということになります。
さすがに「クレルヴォ交響曲」よりこなれた筆致で、
コンサートのアンコールや、逆にコンサートの幕開けなどにふさわしい1曲かな、と思いました。
「悲しきワルツ」に似た曲想ですが、
それほど物悲しい感じはなく、もう少し情景描写の方に重きを置いてある作品です。
劇音楽組曲《白鳥姫》作品54 は、
スウェーデンの作家
ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(1849-1912)の
戯曲「白鳥姫」(1902年)のために作曲された
劇付随音楽にもとづく組曲(全7曲)です。
シベリウスが43歳のとき(1908年)に作曲されました。
こちらもわかりやすく、
楽しく美しい軽めの作品で、
それだけにコンサートでは取り上げにくいかもしれませんが、
聴けて良かったです。
このCDには、
全7曲の中から4曲選んで収録されています。
全曲聴けなかったのが残念です。
***
ボーンマス交響楽団、
フィンランドのオケだと思い込んでいましたが、
調べてみるとイギリスのオケでした。
異国の曲をこれだけハッキリくっきりと
確信を持って演奏できるのは、やはりベルグルンドの手腕によるところが大きいのでしょうか。
洗練さでは他に一歩譲りますが、
荒々しいまでの迫力の中に、寒々としたシベリウス独特の響きを実現できているのは、このオケの長所だと思いました。
次は交響曲第1番へと進みましょう。
※Wikipedia の「ジャン・シベリウス」「クレルヴォ交響曲」
「クオレマ」「白鳥姫(シベリウス)」の項目を参照。
0 件のコメント:
コメントを投稿