2013年7月22日月曜日

コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲全集 その4

コダーイ四重奏団による

オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732.3 - 1809.5)の
弦楽四重奏曲全集4枚目です。



ハイドン
弦楽四重奏曲 第9番 変ホ長調 作品2-3〔Hob.Ⅲ-9〕
弦楽四重奏曲 第11番 ニ長調 作品2-5〔Hob.Ⅲ-11〕
弦楽四重奏曲 第13番 ホ長調 作品3-1〔Hob.Ⅲ-13〕
弦楽四重奏曲 第14番 ハ長調 作品3-2〔Hob.Ⅲ-14〕

コダーイ四重奏団
録音:2000年6月26-29日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.555703】


ハイドンの弦楽四重奏曲は、
ハイドン生前中(1801年)に
弟子のプレイエル(1757-1831)によって
計83曲が全集としてまとめられました。

このプレイエル版において、
ハイドン初期の弦楽四重奏曲は、

 ◯作品1-1~6〔Hob.Ⅲ-1~6〕第1~6番
 ◯作品2-1~6〔Hob.Ⅲ-7~12〕第7~12番
 ◯作品3-1~6〔Hob.Ⅲ-13~18〕第13~18番

と整理されました。

作品1・2はハイドンが33・34歳のとき(1765・66年)、
作品3は45歳のとき(1777年)に個別に出版され、

ハイドン最晩年(1805年)の「ハイドン目録」でも、
ハイドン本人が認めていたものなのですが、


その後の研究で、

 ◯変ロ長調 作品1-5〔Hob.Ⅲ-5〕は、
  交響曲「A」〔Hob.Ⅰ-107〕の編曲、

 ◎変ホ長調 作品2-3・5〔Hob.Ⅲ-9・11〕は、
  6声のディベルティメント〔Hob.Ⅱ-21・22〕の編曲、

であったことがわかっています(計3曲)。さらに、

 ◎作品3-1~6〔Hob.Ⅲ-13~18〕

の6曲は、ハイドンの信奉者
ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)による
贋作と考えられるようになりました。


つまりこのCDには、

最新の研究では、ハイドンの弦楽四重奏曲から
外して考えられるようになった4作品、

6声のディベルティメント〔Hob.Ⅱ-21・22〕から編曲された2曲

 ◎作品2の3・5(第9・11番)

と、ホフシュテッターによる贋作と考えられる作品2曲

 ◎作品3の1・2(第13・14番)

の計4曲が収録されています。


  ***

まずは前半2曲。

弦楽四重奏曲 第9番 変ホ長調 作品2-3〔Hob.Ⅲ-9〕
弦楽四重奏曲 第11番 ニ長調 作品2-5〔Hob.Ⅲ-11〕

は6声のディベルティメント〔Hob.Ⅱ-21・22〕からの編曲で、
それぞれ5楽章からなる楽しい作品です。

特別な深みのある曲ではありませんが、
4声の作品とは目のつけどころが違ってくるからか、
若干ですが新鮮な印象を受けました。

Hob.Ⅱの系列は、
作品によって編成が少しずつ変化するからか、
国内盤をざっと探した感じではまとまった録音は出ていないようでした。

聴けないとなるとかえって
聴いてみたくなったので、次は輸入盤に手を広げて探してみます。

演奏は最後まで楽しく聴かせてもらえたので、
私には十分の出来でした。


次は後半2曲。

弦楽四重奏曲第13番 ホ長調 作品3-1〔Hob.Ⅲ-13〕
弦楽四重奏曲第14番 ハ長調 作品3-2〔Hob.Ⅲ-14〕

ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)による贋作
と推定されている作品です。

他と比べて多少聴き劣りするのかな、
と思って聴き始めたのですが、

そんなことは全くなく、
ハイドン最初期の弦楽四重奏曲よりも、

技巧的な面で聴かせ上手に仕上がっていて、
飽きずに楽しんで聴くことができました。

この時期のほかの作曲家の作品を
色々聴いたわけではないので一概に言えないのですが、

作品1、作品2が、
初期の作品という前提で聴かないと
多少苦しい部分があったのに対して、

作品3はそのままでふつうに楽しめる作品であり、
ハイドンの順調な成長の証が記されているようにも聴こえました。

書誌学的に、
ホフシュテッターの手になる
原本の楽譜が見つかったわけではないようなので、

それほど決定的に、ハイドン作ではない、と言い切れるのだろうかと疑問を持ちました。

ホフシュテッターは、
これ以外の作品をほとんど残していないようでもあり、
ハイドンに似せて、いきなりこれだけの作品が書けるものなのかな、
とも思いました。

例えば、
ホフシュテッターがハイドンに依頼して、
弦楽四重奏曲を作曲してもらったために、

ホフシュテッターの作品と誤認されることもあったのではないのかな、と。

とはいえ、
残りの4曲をまだ聴いていないので、
そちらを聴いてから、また考えてみたいと思います。



※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
 「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。

※JAIRO でインターネット上に公開されている
 飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
 (『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。

※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。

※現代音楽作曲家・福田陽氏の
 「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。

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