2015年5月11日月曜日

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタの楽譜

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタは、
これまで理想の演奏に出会ってこなかったのですが、
最近これはと思える演奏に出会えました。

そこでいざ聴こうと思ったのですが、
第43番まであるはずなのに、

前半を聴く機会はほとんどなくて、
全体像を知らないことに気がつきました。

そこで今回は、
オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(1756.1-1791.12)の
ヴァイオリン・ソナタについて、

自分に必要な範囲で整理しておきます。


  ***

まず、
モーツァルトの作品分類に用いられる
ケッヘル番号(K.◯◯)とは、

オーストリア生まれの学者
ルートヴィヒ・フォン・ケッヘル(1800.1-1877.6)が編纂した
「モーツァルト全作品年代順主題目録」にもとづく分類番号で、
初版は1862年に刊行されました。

初版の刊行後も改訂が続けられ、
第6版(1964)で大きな改訂が行われたため、

初版の番号とともに、
第6版の番号を併記することが多いです。


  ***

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタに
ふつう付されている通番(第1-43番)は、

1877年から1883年にかけて
ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から刊行された
旧モーツァルト全集にもとづく分類番号です。

ヴァイオリン・ソナタの巻は、
1879年に刊行された

「第18篇
 ピアノ・フォルテとヴァイオリンのためのソナタと変奏曲
 第1・2巻」

に収録されました。
第1巻には、
 第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
 第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
 第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕 
 第4番 ト長調  K.9 〔1764〕
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕 
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕 
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕 
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕 
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕 
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕
 第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕 
 第12番 ト長調  K.27〔1766〕 
 第13番 ハ長調  K.28〔1766〕 
 第14番 ニ長調  K.29〔1766〕 
 第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕 
 第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕
 第17番 ヘ長調  K.55 (K.Anh.C23.01)※偽作
 第18番 ハ長調  K.56 (K.Anh.C23.02)※偽作
 第19番 ヘ長調  K.57 (K.Anh.C23.03)※偽作
 第20番 変ホ長調 K.58 (K.Anh.C23.04)※偽作
 第21番 ハ短調  K.59 (K.Anh.C23.05)※偽作
 第22番 ホ短調  K.60 (K.Anh.C23.06)※偽作
 第23番 イ長調  K.61 (K.Anh.C23.07)※偽作

のソナタ23曲(第1-23番)が収められ、
第2巻には、
 第24番 ハ長調  K296〔1778〕
 第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕 
 第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕 
 第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
 第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕 
 第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕 
 第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕※未完
 第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕 
 第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕 
 第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕 
 第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕 
 第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕※未完
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕※未完
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕※未完 
 第40番 変ロ長調 K454〔1784〕  
 第41番 変ホ長調 K481〔1785〕  
 第42番 イ長調  K526〔1787〕  
 第43番 ヘ長調  K547〔1788〕 
 《羊飼いの娘セリメーヌ》の主題による
 12の変奏曲 ト長調 K.359(K6.374a)〔1781〕 
 《ああ、私は恋人をなくした》の主題による
 6つの変奏曲 ト短調 K.360(K6.374b)〔1782〕 

のソナタ20曲(第24-43番)と変奏曲2曲が収められました。


  ***

この旧全集版(ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社)は、

偽作であることがほぼ断定された
第17-23番を除いたかたちで、

ニューヨークのドーヴァー出版から復刻されています。


Wolfgang Amadeus Mozart,
Complete Sonatas and Variations for Violin and Piano, Series I,
Dover Publications, New York, 1992
 第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
 第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
 第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕
 第4番 ト長調  K.9 〔1764〕
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕
 第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕
 第12番 ト長調  K.27〔1766〕
 第13番 ハ長調  K.28〔1766〕
 第14番 ニ長調  K.29〔1766〕
 第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕
 第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕

 第24番 ハ長調  K296〔1778〕
 第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕
 第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕
 第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
 第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕
 第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕
 第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕※未完


Wolfgang Amadeus Mozart,
Complete Sonatas and Variations for Violin and Piano, Series II,
Dover Publications, New York, 1992
 第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕
 第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕
 第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕
 第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕
 第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕※未完
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕※未完
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕※未完
 第40番 変ロ長調 K454〔1784〕
 第41番 変ホ長調 K481〔1785〕
 第42番 イ長調  K526〔1787〕
 第43番 ヘ長調  K547〔1788〕
 《羊飼いの娘セリメーヌ》の主題による
 12の変奏曲 ト長調 K.359(K6.374a)〔1781〕
 《ああ、私は恋人をなくした》の主題による
 6つの変奏曲 ト短調 K.360(K6.374b)〔1782〕


ドーヴァー版では
旧全集の通番は削除されているのですが、
関係がわかりにくくなるのでそのまま残しておきました。

今は高値がついていますが、
古本で2冊でCD1枚分ほどで手に入れました。

運指等はなにも付されていないので、
このまま演奏に使うのは無理があるのですが、

安く手に入るのなら
聴くだけの者にはそれなりに有用な楽譜です。


  ***

1955年から2007年にかけて
国際モーツァルテウム財団が編集し、
ベーレンライター出版社から刊行された
新モーツァルト全集では、

ヴァイオリン・ソナタは、

「第8篇 室内楽(第92・93巻)
 クラーヴィアとヴァイオリンのためのソナタと変奏曲
 第1・2巻」

として1964年に刊行されました(校訂報告は1977年)。

第1巻には、
旧版の第1-4番、11-16番、25-30番、24・34番
の計18曲のソナタが収められました。
【1】第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
【2】第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
【3】第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕
【4】第4番 ト長調  K.9 〔1764〕

【5】第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕
【6】第12番 ト長調  K.27〔1766〕
【7】第13番 ハ長調  K.28〔1766〕
【8】第14番 ニ長調  K.29〔1766〕
【9】第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕
【10】第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕

【11】第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕
【12】第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕
【13】第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
【14】第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕
【15】第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕
【16】第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
【17】第24番 ハ長調  K296〔1778〕
【18】第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕

第2巻には、
旧版の第35番、32・33・36番、40-43番
の計8曲のソナタと2曲の変奏曲が収められました。
【19】第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕
【20】第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕
【21】第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕
【22】第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
【23】第40番 変ロ長調 K454〔1784〕
【24】第41番 変ホ長調 K481〔1785〕
【25】第42番 イ長調  K526〔1787〕
【26】第43番 ヘ長調  K547〔1788〕
【27】《羊飼いの娘セリメーヌ》の主題による
    12の変奏曲 ト長調 K.359(K6.374a)〔1781〕
【28】《ああ、私は恋人をなくした》の主題による
    6つの変奏曲 ト短調 K.360(K6.374b)〔1782〕


なお1、2楽章の未完のソナタとして
旧全集では通番が与えられていた
ソナタ第31、37-39番の4曲
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕

は、新全集の第2巻に付録として収められました。

そのほか、
旧全集のソナタ第5-10番の6曲
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕

は、新全集では

「第8篇 室内楽(第91巻)クラーヴィア三重奏曲」
 
に分類し直されました。
 
新全集の楽譜は、
すべてインターネット上に公開されています。
「新モーツァルト全集」で検索をかければ、
すぐに見つかります。


  ***
 
新全集をみると、
これでほぼ決定稿と見なせるように思います。

意外に周知されていないように感じるのは、
私が勉強不足なだけかもしれませんが、

著作権などの問題で、
安価に利用しにくいところがあるのかもしれません。


実際に演奏するには
まだ理解が不十分ですが、

聴くだけならまずはこれくらいで良いでしょうか。

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