2017年11月12日日曜日

愛知県美術館の「開館25周年記念 長沢芦雪展」

去る11月3日(金)、
名古屋市東区にある愛知県美術館まで、

「開館25周年記念
 長沢芦雪展
 京のエンターテイナー」

を観に行って来ました。

「会期:平成29年10月 6日(金)
       ~11月19日(日)
 会場:愛知県美術館
 主催:愛知県美術館、中日新聞社、日本経済新聞社、テレビ愛知」

図録のあいさつをみると、

「江戸時代半ば、十八世紀の京都では、
 経済力を蓄え美意識を高めた町人たちに支えられて、

 池大雅や与謝蕪村、円山応挙
 伊藤若冲、曾我蕭白といった画家たちが活躍し、
 百花繚乱の相を呈していました。」

という書き出しで(※改行はブログ編者による)

2013年に愛知県美術館で、
「円山応挙展―江戸時代絵画 真の実力者」
を開催したことを踏まえて、

これに続く企画として、
応挙の弟子である長澤芦雪(ながさわろせつ)
取り上げられたそうです。

長澤芦雪(1754-1799)は
 応挙の門下で若くして高い画力を身につけ、
 さらに大胆奇妙な発想によって個性を発揮しました。

 芦雪は人を驚かせ楽しませようとするサービス精神に富み、
 今日では若冲や蕭白と並んで「奇想」の画家と称されて」

いるそうです(※改行はブログ編者による)

全体の構成
 第1章 氷中の魚:応挙門下に龍の片鱗を現す
 第2章 大海を得た魚:南紀で筆を揮う
 第3章 芦雪の気質と奇質
 第4章 充実と円熟:寛政前・中期
 第5章 画境の深化:寛政後期
にしたがって、
それぞれ個人的に感銘を受けた作品を整理しておきます。


  ***

第1章 氷中の魚:応挙門下に龍の片鱗を現す
からは、

13「花鳥図」1幅
 ※天明前期(1781-85)頃

14「躑躅群雀図」1幅
 ※天明年間(1781-89)

の精緻さと素朴さが同居する
温かみのある作品に感銘を受けました。

あと少し奇抜さに流れてはいるものの、

19「牛図」1幅
 ※天明6年(1786)以前または寛政前期

の力感あふれる黒牛も心に残りました。


なお、興味深かったのは
応挙と芦雪の同じテーマの作品を並べて展示してあったことです。

8「牡丹孔雀図」1幅〔円山応挙作〕
 ※安永3年(1774)

9「牡丹孔雀図」1幅
 ※天明前期(1781-85)頃

9だけを観たらそれで十分に美しいのですが、
ほぼ同じ構図の8を並べられると、
師匠である応挙のほうが、
作品から強い緊張感が伝わって来て、
応挙の画家としての技量の確かさを感じさせていました。

同じことは

33「双鹿図屏風」2曲1双〔円山応挙作〕
 ※天明3年(1783)
34「双鹿図」1幅
 ※寛政4年(1792)頃

37「狗之子図」1幅〔円山応挙作〕
 ※安永年間(1772-81)
36「狗児図」1幅
 ※寛政前期(1789-93)
38「薔薇蝶狗子図」
 ※寛政後期(1794-99)頃

でも言えていて、
芦雪の絵だけをみれば、
それでまずまず満足できるのですが、

応挙と比べてしまうと、
芦雪にはどこか散漫な印象があって、
どうもぴりっとしない、
弛緩したところのある作品のように感じました。


第2章 大海を得た魚:南紀で筆を揮う
は、

この展示の目玉でもある
無量寺の襖絵に感銘を受けました。

21「龍図襖」6面
22「虎図襖」6面
23「薔薇に鶏・猫襖」8面
24「唐子遊図襖」8面
 ※天明6年(1786)

圧倒的なのは
21・22の龍虎図ですが、
両脇を包むように配置される
23・24と合わせて観ると、
より感慨深いものがありました。

 ただ23・24はこれだけ取り上げられるなら、
 そこまで強い印象は残らなかったかもしれません。

21-24に匹敵するのが
高山寺の2点、

31「寒山拾得図」1幅
32「朝顔に蛙図襖」6面
 ※天明7年(1787)

で、特に31から受ける大迫力は、
21・22をしのいでいるようにすら思えました。

32もバランス感覚に優れた見事な作品ですが、
感動にはあと一歩足りないように感じました。


第3章 芦雪の気質と奇質
では、

35「酔虎図」1幅
 ※天明7年(1787)

の猫っぽい少しいい加減な感じの虎に愛着がわきました。
感動とは違いますが、憎めない好きな絵でした。


さてこの後、
第4章 充実と円熟:寛政前・中期
第5章 画境の深化:寛政後期
と続くのですが、

個人的にはどうしても、あと一歩、
絵から受ける印象に緊張感を欠き、
深い感銘を受けるには至りませんでした。

「充実」「円熟」「深化」とはありますが、
私には中だるみの弛緩した印象を受けました。

芸術家としてはまだこれからといえる
45歳で亡くなっているので、
大成する時間的な猶予がなかったのかもしれません。

今回の展示で、
芦雪の二、三十代の作品の中に、
飛び切り優れたものがあることを発見できました。



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