2012年10月30日火曜日

コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲第1 - 4番

オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732 - 1809)の弦楽四重奏曲全曲を、
コダーイ四重奏団の演奏で聴いていきます。

それではまず1枚目です。


ハイドン
弦楽四重奏曲 第1番 変ロ長調 作品1-1〔Hob.Ⅲ-1〕
弦楽四重奏曲 第2番 変ホ長調 作品1-2〔Hob.Ⅲ-2〕
弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 作品1-3〔Hob.Ⅲ-3〕
弦楽四重奏曲 第4番 ト長調 作品1-4〔Hob.Ⅲ-4〕

コダーイ四重奏団
録音:1991年4月8-11日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550398】


フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732-1809)の弦楽四重奏曲は、

ハイドン生前の1801年に、
弟子のイニャス・プレイエル(1757-1831)によって、
最初の全集が刊行されました。

 ※初版で80曲、第2版で82曲、第3版で83曲を収録。
  プライエル版に従って、第1番から83番まで、
  通番をつけて呼ぶこともあります。


このとき初期の弦楽四重奏曲について、

 ◯作品1- 1~6〔Hob.Ⅲ- 1~6〕
 ◯作品2- 1~6〔Hob.Ⅲ- 7~12〕
 ◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕

という整理が行われていました。

作品1・2は 1765・66年(ハイドン33・34歳)、
作品3は 1777年(ハイドン45歳)に、
個別に出版されていたそうです。

この分類は、
最晩年(1805年)に作成させた「ハイドン目録」で、
ハイドン自身が認めたものでもあったのですが、


その後の研究によって、

 ◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕

は、ハイドンの信奉者
ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)の作品が
紛れ込んだ贋作であると考えられるようになりました。


そのほか、

 ◯作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕は、
  交響曲「A」変ロ長調〔Hob.Ⅰ- 107〕からの編曲、

 ◯作品2- 3〔Hob.Ⅲ- 9〕は、
  6声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 21〕からの編曲、

 ◯作品2- 5〔Hob.Ⅲ- 11〕は、
  6声のディベルティメント ニ長調〔Hob.Ⅱ- 22〕からの編曲

であることが明らかにされています。


つまり作品1・2・3の計18曲のうち、
初期の弦楽四重奏曲として確実なのは、

 ◎作品1- 1~4・6〔Hob.Ⅲ- 1~4・6〕
 ◎作品2- 1・2・4・6〔Hob.Ⅲ- 7・8・10・12〕

の9曲のみということになります。


さらに本来、
初期の弦楽四重奏曲とすべき1曲が、

 ◎5声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕

に誤分類されていたことも明らかにされています。

これはプレイエル版の全集から欠落しているので、
第0番と呼ばれることがあります。

 ※コダーイ四重奏団の全集では、CD2で、
  作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕とさしかえて録音しています。


   ***

つまり現在は、第0番を含めた計10曲を、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲と考えるのが通説になっているようです。

作曲年代は、
ハイドン25歳から30歳(1757-62)のころと推定されています。

プレイエル版の通番とともにまとめておきます。

 第0番 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
 第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
 第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
 第3番  ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
 第4番  ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕
 第6番  ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕
 第7番  イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕
 第8番  ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕
 第10番  ヘ長調 作品2- 4〔Hob.Ⅲ- 10〕
 第12番 変ロ長調 作品2- 6〔Hob.Ⅲ- 12〕

コダーイ四重奏団による弦楽四重奏曲全集では、
CD1で、このうち

 第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
 第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
 第3番  ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
 第4番  ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕

が演奏されていることになります。


   ***

この全集で演奏を担当した
コダーイ四重奏団(Kodaly Quarte)は、

1966年に、
ブダベストのフランツ・リスト・アカデミーの
学生4名が結成した「セベスチェン四重奏団」がもとになり、
1971年から「コダーイ四重奏団」として活動するようになりました。

1980年に第1ヴァイオリンが、
 アッティラ・ファルヴェイ
に替わり、それまでのメンバー、
 タマーシュ・ザボ(第2ヴァイオリン)、
 ガボール・フィアス(ヴィオラ)、
 ヤーノシュ・デヴィチ(チェロ)
とともに世界的に活躍するようになりました。

このメンバーで、NAXOS の
ハイドン全集の録音が行われています。

 ※CD解説(1991年発売)と
  コダーイ四重奏団のHP〈http://www.kodalyquartet.com/〉を参照。
  現在は、第1ヴァイオリン以外、メンバーが変わっています。


   ***

さて肝心の演奏ですが、

しっかりした様式感の中に、
清々しく、明るい気持ちにさせられる
ハイドン独自の世界が描き出されており、

ふつうに楽しむことができました。

とくに Adagio の
清涼で深遠な感じは他にないもので、
第1番と第4番のそれは私のお気に入りになりました。


確かに全体として、
それほど個性を際立たせたところはないので、

一夜のコンサートで、作品1だけ
6曲続けて聴かされるとしたら少々退屈な気もしますが、


ベートーヴェンやシューベルト、
ショスタコーヴィチなどの濃密な曲の合い間に、
1曲選んで演奏したら、

清涼剤的な役割を果たしうる
素敵な作品だと思いました。


コダーイ四重奏団は、
楽譜の表面だけを追うことなく、
ほどほどに作品の内実に迫ろうとするバランスが好ましく、
ハイドンにはとても合っていると思いました。

ほんの少し、
音程で気になるところもあったのですが、
かなり神経質に聴かなければ大丈夫なレベルだと思います。

では、次に進みましょうか。



※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
 「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。

※JAIRO でインターネット上に公開されている
 飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
 (『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。

※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。
 日本語の一般書で、最新の研究を踏まえ、
 ハイドンの作品の全容を概観してあるものとしては、
 中野氏の本書が一番良いようです。
 たまたま出版時に購入し、手もとに置いてありました。


※現代音楽作曲家・福田陽氏の
 「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。


2 件のコメント:

  1. とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。。

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  2. ご訪問ありがとうございます。関心のおもむくままなので、分野がバラバラですが、よろしければまたお立ち寄りください。

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