2013年1月18日金曜日

コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲全集 その2

コダーイ四重奏団による

オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732 - 1809)の弦楽四重奏曲全集、

2枚目です。


ハイドン
弦楽四重奏曲 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕第0番
弦楽四重奏曲 ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕第6番
弦楽四重奏曲 イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕第7番
弦楽四重奏曲 ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕第8番

コダーイ四重奏団
録音:1991年6月12-15日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550399】

はじめに、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲について。
(全集その1のときのブログと、ほぼ同内容です。)


フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732-1809)の弦楽四重奏曲は、

ハイドン生前中(1801年)に、
弟子のプレイエル(1757-1831)によって、
最初の全集が刊行されました〔プレイエル版〕。

 ※初版で80曲、第2版で82曲、第3版で83曲を収録。
 ※プライエル版に従い、第1番から83番まで
  通番で呼ぶこともあります


このとき初期の弦楽四重奏曲について、

 ◯作品1- 1~6〔Hob.Ⅲ- 1~6〕
 ◯作品2- 1~6〔Hob.Ⅲ- 7~12〕
 ◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕

という整理が行われました。

 作品1・2はハイドンが33・34歳のとき(1765・66年)、
 作品3は45歳のとき(1777年)に、
 個別に出版されていたそうです。

この作品1・2・3は、
ハイドン最晩年(1805年)の「ハイドン目録」でも、
本人が認めていたはずなのですが、


その後の研究によって、

 ◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕

は、ハイドンの信奉者
ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)の贋作が
紛れ込んだと考えられるようになりました。


そのほか、

 ◯作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕は、
  交響曲「A」変ロ長調〔Hob.Ⅰ- 107〕の編曲、

 ◯作品2- 3〔Hob.Ⅲ- 9〕は、
  6声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 21〕の編曲、

 ◯作品2- 5〔Hob.Ⅲ- 11〕は、
  6声のディベルティメント ニ長調〔Hob.Ⅱ- 22〕の編曲

であることが明らかにされています。


つまり作品1・2・3の計18曲のうち、
初期の弦楽四重奏曲として確実なのは、

 ◎作品1- 1~4・6〔Hob.Ⅲ- 1~4・6〕
 ◎作品2- 1・2・4・6〔Hob.Ⅲ- 7・8・10・12〕

の9曲のみということになります。


さらに本来、
初期の弦楽四重奏曲とすべき1曲が、

 ◎5声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕

に誤って分類されていたことも明らかにされています。

これはプレイエル版の全集から欠落しているので、
第0番と呼ばれることがあります。


つまり現在は、第0番を含めた計10曲を、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲と考えるのが通説になっているようです。

これらの作曲年代は、
ハイドン25歳から30歳(1757-62)のころと推定されています。

プレイエル版の通番とともにまとめておきます。

 第0番 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
 第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
 第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
 第3番  ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
 第4番  ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕
 第6番  ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕
 第7番  イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕
 第8番  ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕
 第10番  ヘ長調 作品2- 4〔Hob.Ⅲ- 10〕
 第12番 変ロ長調 作品2- 6〔Hob.Ⅲ- 12〕

本CDには、このうち

 第0番 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
 第6番 ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕
 第7番 イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕
 第8番 ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕

の4曲が収録されています。

なおこのCDのケース裏面では、

 変ホ長調「作品1- 5」
 ハ長調 作品1- 6
 「ニ長調」作品2- 1
 「ト長調」作品2- 2

の4曲を収録曲とし、作品番号と調性に誤りがあります。
CD解説の方は正確です。


   ***

さて曲の内容および演奏ですが、

0番も含めて、
1枚目と同じ路線の、

瑞々しい若い感性に支えられた、
軽めの明るい曲が続きます。

ただし1枚目のように、
心洗われる清新な印象は多少弱まったようで、

特定の一楽章に心を奪われることもなく、
平穏な明るい音楽が流れていきました。

若い感性だけで勝負するには限界があって、
多少足踏みをしている感がありました。


これは単に、
私の好みの問題かもしれませんし、
演奏の加減もあるかもしれません。

コダーイ四重奏団は、
曲の内実にまで踏み込んだ充実した演奏で、
曲の魅力を十分に伝えられていると思います。


数ヶ月聴いて、
昨日次の1枚が届きましたので、
3枚目に進みましょうか。


※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
 「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。

※JAIRO でインターネット上に公開されている
 飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
 (『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。

※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。

※現代音楽作曲家・福田陽氏の
 「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。

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