フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929.4-2012.1)が44-46歳のときに(1973.11)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した
同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12.8-1957.9.20)の
交響曲第7番と、交響詩《海の精》《タピオラ》を聴きました。
シベリウス
1) 交響曲 第7番 ハ長調 作品105
2) 交響詩《海の精》作品73
3) 交響詩《タピオラ》作品112
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1972年5月(1)、1972年5月7・8日(2・3)
サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16017】
交響曲 第7番 ハ長調 作品105 は、
シベリウスが58歳のとき(1924年)に完成され、
同年3月に初演された単一楽章の交響曲です。
第5・6・7番は48歳(1914年)のとき、
ほぼ同時期に着想されたことが知られています。
第5番が初演(1915年12月)されてから、
しばらくその改訂作業が続いたため
(1916年に改訂稿、1919年に最終稿)、
第6番の初演は、
57歳(1923年2月)まで持ち越されました。
第7番はその翌年1924年に初演されています。
シベリウスは91歳(1957年)まで長生きしますが、
第7番以降、交響曲が完成されることはありませんでした。
第7番は今回ほぼ初めて聴きました。
感動しました。
第1番から第6番まで聴いてきた中では、
明らかに一つ高いところにある音楽で、
モーツァルトのクラリネット協奏曲や五重奏曲、
ベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲のみに聴かれる、
悟りの境地にある特別な感慨を味わうことができました。
他の方の演奏もぜひ聴いてみたいと思います。
***
交響詩《海の精》作品73 は、
48歳(1914年)のときに完成、
同年6月4日に初演された交響詩です。
《大洋の女神》《波の娘》などとも訳されます。
第7番の初演を10年さかのぼりますが、
第5-7番の曲想を得たのは1914年なので、
第5番に取りかかる前に完成された作品ということになります。
これも初めて聴きました。
わかりやすいシンプルな曲です。
何もないところから、
終末に明確なクライマックスが築かれていくので、
第7番のスケールを小さくした感じがありました。
ただし暗めの曲想なので、
聴いた印象はだいぶ違っていると思います。
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交響詩《タピオラ》作品112 は、
交響曲第7番を完成した翌年(1925年)に完成され、
翌1926年12月26日(シベリウス61歳)に初演されました。
シベリウス最後の交響詩であり、
彼の交響詩の最高傑作と評価されているそうです。
確かに、
いくつか聴いてきたシベリウスの交響詩の中では、
さまざまな要素が凝縮され、
よく創り込まれた作品であることは十分伝わって来ました。
ただし一つの管弦楽曲としてみたとき、
他を圧倒する感動を与えられるところまでは行きませんでした。
恐らく今後聴き直していくことで、
より深く気がつけるところが出てくるように思います。
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さてベルグルンドとボーンマス交響楽団による
シベリウスの交響曲全集はこれで終わりです。
(あと1枚、管弦楽曲集を残しています。)
多少、録音の古さを感じさせる点をのぞけば、
どれもシベリウスの真価を教えてくれる演奏で、
楽しい有意義な時間を過ごすことができました。
ただ、この全集を聴き出してから間もなく、
格安(1,300円程)の輸入盤で同じコンビの全集が発売されました。
そんなに違わないだろうと思っていたのですが、
最近買って聴いてみたところ、
同じ演奏とは思えないほど、
冴えわたった清新さを感じさせる録音でした。
国内盤で
唯一不満だった録音の古さをまったく感じさせずに、
熱く彫りの深い演奏が繰り広げられていたので驚きました。
国内では、一番大もとの原盤にはさかのぼりにくいでしょうから、
どうしても音質面でいま一歩になりがちなのかな、と思いました。
こちらで聴くと、まったく印象が異なりますので、
輸入盤でもう一度聴き直していこうかな、と考えているところです。
※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」
「交響曲第7番(シベリウス)」「大洋の女神」「タピオラ」を参照。