2013年12月31日火曜日

柳家小三治19 落語名人会43 「文七元結」(1990.10)

十代目柳家小三治
(やなぎやこさんじ 昭和14年〔1939〕12月-)
の落語CD19枚目は、

「文七元結(ぶんしちもっとい)」を聴きました。

小三治50歳の時(1990.10)の公演です。


落語名人会43
柳家小三治19
「文七元結」

録音:1990年10月31日、鈴本演芸場
第21回柳家小三治独演会
【SRCL-3615】


「文七元結(ぶんしちもっとい)」は、

初代三遊亭圓朝
(さんゆうていえんちょう 天保10年〔1839〕-明治33年〔1900〕)
の創作による人情噺の大ネタです。

ほかをほとんど聴いていないので、
ほかと比べてどうなのかはわからないのですが、
個人的にはこれで十分満足しています。
確かにこれは、笑いあり、涙ありの、
出来過ぎなくらいに良く出来たお噺です。

人情にホロリとさせられ、
終わりは明るくはなやか気持ちにさせられるので、

初めて聴いて以来、
好きな演目の一つになっています。


最初のうち、
おしまいの締めが思ったよりあっけなかったので
あれっと思うところもあったのですが、

今では、
クライマックスに至るまでの場面場面を楽しむお噺として、
全体のバランスをうまく理解できるようになって来ました。


繰り返し聴いて、
次に何を言うのかも覚えて来ましたので、
そろそろほかの落語家さんのも聴いてみようと思っています。


※WIkipediaの「柳家小三治」「文七元結」を参照。

古今亭志ん生 名演大全集1「火焔太鼓・黄金餅・後生うなぎ」

五代目古今亭志ん生
(ここんていしんしょう 明治23年〔1890〕6月-昭和48年〔1973〕9月)
は、落語にはまったきっかけになった方です。

音質があまり良くないものもあるので、
一回聞いただけでは何と言っているのかわからないこともあるのですが、

声質が聴き取りにくいわけではないので、

とぼけた感じの声だけでもけっこう面白いですし、
しばらく聴いているうちに細部がわかって来ると、なお一層面白い。

CDもいろいろなところから出ているのですが、
こちらの「名演大全集」は出処をかなり詳しく明らかにしてくれているので、
のんびりと1枚ずつ聴いていこうと思います。


五代目古今亭志ん生 名演大全集1

1) 火焔太鼓(かえんだいこ)
 〔ニッポン放送『志ん生十八番』昭和31年9月3日放送〕
  ※リマスタリング音源

2) 黄金餅(こがねもち)
 〔ニッポン放送『演芸くらぶ』昭和34年3月2日放送〕
  ※リマスタリング音源

3) 後生うなぎ(ごしょううなぎ)
 〔ニッポン放送『演芸お好み劇場』昭和36年11月1日放送〕
  ※本シリーズ初収録音源

4) どどいつ/小唄
 〔ニッポン放送、昭和35年5月録音〕
  ※本シリーズ初収録音源

【PCCG-00693】

「火焔太鼓」(かえんだいこ)[長屋噺・滑稽噺]は、

志ん生の前座時代、初代三遊亭遊三
(さんゆうていゆうざ 天保10年〔1839〕-大正3年〔1914〕)
の口演を聴き覚え、

昭和初期に自己流に仕立て直し、
現在のかたちが出来上がったそうです。

実際、志ん生の代名詞といってよい演目なので、
このほかにも数種類耳にして来ていますが、

どれも音質は今一つで、
細部が聴き取りにくいのが残念です。

それでも、繰り返し聴くに足る魅力、
愛嬌のある可笑しさにあふれていますので、

繰り返し聴いているうちに、
自然に細部も聴き取れるようになって来ます。

志ん生66歳の時(1956.9)の録音で、
多少もたつく感もあるのですが、志ん生の日常を切り取ってある、
普段着の「火焔太鼓」だと思いました。


「黄金餅」(こがねもち)[滑稽噺・圓朝作品]は、

初代三遊亭圓朝
(さんゆうていえんちょう 天保10年〔1839〕-明治33年〔1900〕)
による新作ですが、明治期までのものは古典落語に分類されるそうです。

志ん生が「黄金餅」を演るに至る経緯は、
CD解説には見えていませんが、志ん生得意の演目のようで、
これ以外にも何種類か聴いたことがあります。

人間の醜い部分を暴いている、
グロテスクな面もある落語なのですが、

飄々とした明るさを基調とする
志ん生の語り口に、

すべてを笑い飛ばす豪快さを感じる、
志ん生ならではの口演だと思いました。

志ん生68歳の時(1959.3)の録音です。


「後生うなぎ」(ごしょううなぎ)[滑稽噺・禁演落語]は、

このCDで初めて聴きました。
軽めの楽しいお噺です。

あら筋だけ聴くと、オチが残酷なので
戦時中「禁演落語」とされていたそうですが、

冗談であることがわかっているわけですから、
これくらいなら有りなのかなと。

でも確かに、
今でも小中学生を前にして、
これを演るわけにはいかない位の危なさはあると思います。

志ん生71歳の時(1961.11)の録音です。


「どどいつ」小唄[音曲噺]については、

何も知らないので何も語れません。
風流だな、と感じる小品でありました。

志ん生69歳の時(1960.5)の録音です。


※Wikipediaの「古今亭志ん生(5代目)」「初代三遊亭遊三」「三遊亭圓朝」「火焔太鼓」「黄金餅」「後生鰻」を参照。

※CDの解説(小島貞二氏)を参照。

Sonny Rollins の 『Worktime』(1955.12)


Worktime
Sonny Rollins Quartet

1) There's No Business Like Show Business(Irving Berlin)
2) Paradox (Sonny Rollins)
3) Raincheck (Billy Strayhorn)
4) There Are Such Thing (Adams-Baer-Meyer)
5) It's Alright With Me (Cole Parter)

Sonny Rollins, tenor sax
Ray Bryant, piano
Max Roach, drums
George Morrow, bass

Recorded December 2,1955
【VICJ2052】

ソニー・ロリンズ(1930.9-)のCD、
9月末に『サキソフォン・コロッサス』について書いてから、
だいぶ時間がたってしまいました。

書く内容は決めてあったのですが、
ありがたいことに、仕事が忙しかったのです。

家に買ってあったのを何枚か聴き直してみて、
そういえばこれはとても良かったんだよな、
と思い出したのが、

25歳の時(1955.12)

ピアノにレイ・ブライアント、
ベースにジョージ・モロウ、
ドラムにマックス・ローチを迎えて収録した

アルバム『ワークタイム』です。


これはカッコイイ!

カッコ良さではアルバム『サキソフォン・コロッサス』より上です。

それも決して上っ面に終わることのない、
聴く人の心をしっかり掴んで離さない、
中身が感じられるのはロリンズならではでしょうか。


疾走感あふれる
「ショウほど素敵な商売はない」(1曲目)と
「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」(5曲目)を挟んで、

若干「セント・トーマス」に似た趣きのある
ロリンズのオリジナル曲「パラドックス」(2曲目)に、

自由な感じの「レインチェック」(3曲目)をへて、

渾身のバラード「ゼア・アー・サッチ・シングス」(4曲目)は、
聴いていて恥ずかしくなるような演歌調のところがなく、
なぜだか心洗われるような歌があふれる名演です。


『サキソフォン・コロッサス』よりも、
全体的な曲調は似ている感じがするので、
バランスの取れた1枚だと思います。

1曲目「ショウほど素敵な商売はない」と
5曲目「ゼア・アー・サッチ・シングス」が、私は特に気に入りました。

2013年12月30日月曜日

シュナーベルのベートーヴェン:ピアノソナタ全集 その4

オーストリア出身のピアニスト
アルトゥール・シュナーベル
(Artur Schnabel 1882.4-1951.8)が、
50歳から53歳にかけて(1932-35)録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven 1770.12-1827.3)の
ピアノソナタ全集の4枚目です。


ベートーヴェン・ピアノソナタ録音協会全集第4集

ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノソナタ 第11番 変ロ長調 作品22
ピアノソナタ 第12番 変イ長調 作品26《葬送》
ピアノソナタ 第13番 変ホ長調 作品27-1《幻想風》

アルトゥル・シュナーベル(ピアノ)
録音:1933年4月12・13日〔11番〕、1934年4月25-27日・5月7日〔12番〕、1932年11月1日〔13番〕、EMIアビー・ロード第3スタジオ、ロンドン
【Naxos 8.110756】


ピアノ・ソナタ第11番 変ロ長調 作品22 は、

 29歳の時(1800)に作曲され、
 31歳の時(1802.3)に出版された作品です。

ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 作品26《葬送》 は、

 30歳の時(1801.4以降)に完成され、
 31歳の時(1802.3)に出版された作品です。

ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 作品27-1《幻想風》 は、

 30歳の時(1801.4以降)に完成され、
 第14番《月光》とともに作品27として、
 31歳の時(1802.3)に出版された作品です。


3曲とも同時期に完成しているだけあって、
似た雰囲気です。

はじめのころのような、
古典的なたたずまいからは相当逸脱しているのですが、
この後の《テンペスト》や《熱情》のような強烈な個性は、
まだ感じません。

元気溌剌とした青春の明るさにつらぬかれた中で、
最大限、ベートーヴェンの個性が発揮された作品であるように感じました。


さらっと聴くだけだと、
あまりピンと来ないのですが、
シュナーベルの雄弁な演奏で聴き込むと、
それぞれに独特の個性をもった名曲であることがわかって来ました。


この中で第12番《葬送》は、
ゆるやかで慈しむような出だしが心地良く、
お気に入りの1曲になりました。

第11番は、演奏効果の高い、
聴き映えのする1曲だと思いますが、
これだけが孤立して存在している感じで、
位置付けが難しいように思いました。

第13番は、
かたちがだいぶ崩れていて不思議な感じがしましたが、
第14番《月光》とセットになっていると言われたら、
わかるように思いました。



※L.v.ベートーヴェン全作品目録(国立音楽大学 音楽研究所)
 【http://www.ri.kunitachi.ac.jp/lvb/bdb/bdb_index.html】を参照。

※ペティナ・ピアノ曲事典「ベートーヴェン」
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/61/】を参照。

※Wikipedia の「アルトゥル・シュナーベル」
 「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」
 「ベートーヴェンの楽曲一覧」を参照。

2013年12月10日火曜日

グルダのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1・2番(1970・71年)

オーストリアのピアニスト、
フリードリヒ・グルダ(1930.5-2000.1)が
40歳の時(1970.6/1971.4)に、

ドイツの指揮者
ホルスト・シュタイン(1928.5-2008.7)、

オーストリアのオーケストラ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とともに録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の
ピアノ協奏曲第1・2番を聴きました。


ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品19

フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ホルスト・シュタイン(指揮)

録音:1971年4月19-21日(第1番)、1970年6月9-17日(第2番)、ウィーン、ゾフィエンザール
【UCCD-7258】2013年発売

ベートーヴェンが30・31歳のときに出版された作品です。

出版順に、
 ピアノ協奏曲第1番(1801.3 出版)
 ピアノ協奏曲第2番(1801.12 出版)
とされていますが、

作曲に取りかかったのは第2番のほうが先で、
完成まで改稿を重ねたため出版が遅れたそうです。

実際、第1番のすぐ後に第2番を聴くと、
多少まとまりの悪さが感じられるのですが、

第2番→第1番の順に聴くと、
わずかですが成長の跡が感じられ、
違和感なく聴き進めることができるのに気がついたのは最近のことです。

若々しい感情がほとばしり、
聴いていて明るく元気にさせてくれる名曲だと思います。


グルダとシュタイン&ウィーン・フィルの演奏、
以前に1,000円で出たときにも購入していたのですが、

ピアノはまだしも
オケの響きが耳にうるさく、

こんな筈ではないと思って聴くのを止めておりました。

今回、リニューアル版が登場したので、
それほど期待せずに1枚聴いてみたところ、

ウィーン・フィルの有機的な響きに絡みあう
ピアノの美しい音色を隅々まで聴き取ることができ、
とても満足しました。

ジャケットは前回のと同じですが、
音質はかなり向上していると思います。


グルダの録音、これまでは
それほど共感するものに出会って来なかったのですが、

定評あるピアノ協奏曲全集で、
その実力を大いに見直すことができそうです。

自由で若々しい演奏ではありますが、
私には、ウィーンの流儀を逸脱しない範囲での、
節度ある自由が、彼の魅力であるように思いました。


※Wikipediaの「フリードリヒ・グルダ」
「ホルスト・シュタイン」
「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」
「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」
「ベートーヴェンの楽曲一覧」

2013年11月30日土曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その9

アメリカのピアニスト
マレイ・ペライア(1947-)と
イギリス室内管弦楽団による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(1756.1-1791.12)のピアノ協奏曲全集
9枚目を聴きました。


モーツァルト
ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467
ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K.482

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:1976年9月20日(第21番)、1979年9月(第22番)、EMIスタジオ、ロンドン
【SONY MUSIC 88691914112】CD9

29歳の時に、
第20・21・22番の3つのピアノ協奏曲が作曲されました。

第20番完成のひと月のち、
1785年3月9日に完成されたのが、

 第21番 ハ長調 K.467

年末の12月16日に完成されたのが、

 第22番 変ホ長調 K.482

でした。

どちらも充実した内容で、
聴けば必ず美しさに惚れ惚れするのですが、

聴き終わってどんな曲だったのか尋ねられても、
今ひとつ思い出せないところがあって、

私の中では、まだ強い印象がありません。


ペライアの演奏は、他の番号のと同じように、
一聴しただけではあまり際立ったところがないのですが、

違和感を感じることはないので、
繰り返し聴いているうちに味わいが増して来て、
ああいい曲だなと思えるようになりました。

冴え冴えとはしていませんが、
モーツァルトのオーソドックスな演奏だと思います。


両曲とも、ふた月ほど聴き込んで、
前よりも、良い曲であることは認識してきましたが、

やはり後の記憶に、
それほど残らないのはそのままでありました。


※Wikipediaの「マレイ・ペライア」
 「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」
 「モーツァルトの楽曲一覧」
 「ピアノ協奏曲第21番(モーツァルト)」
 「ピアノ協奏曲第22番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

ルービンシュタインのショパン:夜想曲集 その2

ポーランド出身のピアニスト、
アルトゥール・ルービンシュタイン(1887.1-1982.12)が

78・80歳の時(1965・1967)に録音した

ポーランドの作曲家
フレデリック・ショパン(1810.3-1849.10)の
夜想曲集、CD2枚目を聴きました。


ショパン
夜想曲集(全19曲)のうち9曲

/CD2
 第11番 ト短調 作品37-1
 第12番 ト長調 作品37-2

 第13番  ハ短調 作品48-1
 第14番 嬰ヘ短調 作品48-2

 第15番 ヘ短調 作品55-1
 第16番 変ホ長調 作品55-2

 第17番 ロ長調 作品62-1
 第18番 ホ長調 作品62-2

 第19番 ホ短調 作品72-1

アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
録音:1965年8月31日(第11-13番)、9月1日(第14・15・17・18番)、9月2日(第19番)、RCA Italiana Studio A、ローマ。1967年2月21日(第16番)Webster Hall、ニューヨーク。
【SICC30054~5】


2つの夜想曲 作品37-1・2 は、

ショパン30歳の時(1840)に出版された作品、

2つの夜想曲 作品48-1・2 は、

ショパン32歳の時(1842)に出版された作品、

2つの夜想曲 作品55-1・2 は、

ショパン34歳の時(1844)に出版された作品、

2つの夜想曲 作品62-1・2 は、

ショパン36歳の時(1846)に出版された作品です。

そして

夜想曲 作品72-1(遺作)は、

ショパン17歳の時(1827)に作曲されるも発表されず、
没後1855年に初めて出版された作品です。

ショパンにはあと2曲、
遺作の夜想曲がありますが、未収録です。


夜想曲の後半の曲は、
これまで暗すぎるというか、

物哀しい雰囲気を強めに感じて
あまり好きになれなかったのですが、

年齢的な変化なのか、
今年の秋の物哀しい雰囲気に合っているように感じ、

名曲ぞろいであることを再認識しました。


ルービンシュタインのピアノは、

老齢を迎えていた時期の録音で、
それなりに抑制した表現になのですが、

「Bluw-spec CD2」版で聴く分には、
タッチの繊細な部分でのコントロールまでよく聴こえ、

ルービンシュタインの意志を感じ取ることが出来たので、
予想以上に楽しむことができました。


ただし、まったく初めてこの曲を聴く場合には、
多少物足りなく感じられる演奏かもしれません。


※Wikipedia の「アルトゥール・ルービンシュタイン」「フレデリック・ショパン」「ショパンの楽曲一覧」を参照。

2013年11月4日月曜日

ヴァルヒャのバッハ:オルガン作品全集(旧盤)CD10

ヘルムート・ヴァルヒャ(1907 - 1991)による
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685.3 - 1750.7)の作品全集、
10枚目を聴きました。最後の1枚です。


J.S.バッハ:オルガン作品全集
CD-10
1) パルティータ「ようこそ、慈悲あつきイエスよ」BWV768
2) カノン風変奏曲「高き天よりわれは来れり」BWV769

3)「バビロン川のほとりに」BWV653b
 (18のライプツィヒ・コラール BWV651-668 より)

4)「高き天より、われは来れり」BWV700
5)「われ心よりこがれ望む」 BWV727
6)「わが魂は主をあがめ」 BWV733
7)「今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ」BWV734
8)「われ汝に別れを告げん」BWV736

ヘルムート・ヴァルヒャ(オルガン)
録音:1947年(1)、1950年(2-4,6-8)、1952年(5)
オルガン:リューベック、聖ヤコビ教会(1)
カッペル、聖ペテロ=パウロ教会(2-8)
【Membran 223489】CD10


CD6 からは、
コラール(賛美歌)にもとづく編曲集が続いてきました。

CD6
オルガン小曲集〔BWV599-644
 ※BWV634は省略(633とほぼ同じ)

CD7
6つのシュプラー・コラール〔BWV645-650
18のライプツィヒ・コラール〔BWV651-668

CD8・9
ドイツ・オルガン・ミサ(クラーヴィア練習曲集第3巻)
21の教理問答書コラール〔BWV669-689
・前奏曲とフーガ《聖アン》〔BWV552〕
・4つのデュエット〔BWV802-805〕


 ***

最後の CD10 も、
コラール(賛美歌)にもとづく編曲集ですが、

バッハのオルガン曲の最後を飾る、規模の大きな
コラール変奏曲〔BWV766-771〕の6曲中2曲〔768・769〕に、

18のライプツィヒ・コラールからの1曲〔BWV653b〕をはさんで、

バッハ没後に編集された
キルンベルガー・コラール〔BWV690-713〕から1曲〔700〕と、
27のコラール〔BWV717-740〕から4曲〔724・33・34・36〕が選ばれています。


BWV のバッハ作品主題目録番号をみると、
BWV525-771 がオルガン曲なので、

ヴァルヒャの旧全集では、
BWV688 まではほぼ網羅的に取り上げてありますが、

 BWV669-713 の「キルンベルガー・コラール集」
 BWV714-740 の「27のコラール編曲」
 BWV741-765 の「25のコラール編曲」
 BWV766-771 の「コラール変奏曲」

は、一部しか取り上げられていないことになります。


BWV669-765 のコラール編曲については、
バッハの没後にまとめられたものなので、

他人の作品が紛れ込んでいたり、
統一感が取られていなかったりするようなので、

まとめて取り上げなかったのかと推測されますが、

その辺りの経緯については、手元にもう少し、
バッハについて調べるための基本文献が揃ってから、
取り上げたいと思います。


  ***

ヴァルヒャの旧全集、
バッハのオルガン曲について何も知らずに、
とりあえず一通り聴いてみたい身には格好の録音となりました。

モノラルですが、
かえって耳に心地よく、誇張のない清廉な演奏で、
心がしゃんとする、ほどよい時間を送らせてもらいました。

ただし
膨大なオルガン曲の全容は、
まだつかみ切れていない感じなので、

次はヴァルヒャの弟子、
ヴォルフガング・リュプザム(1946-)が
NAXOSレーベルに録音した全集を聴いていこうと思っています。


※Wikipedia の「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ」「ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品一覧」「バッハ作品主題目録番号」「ヨハン・フィリップ・キルンベルガー」を参照。

2013年10月30日水曜日

ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その5

ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集

5枚目は、
ウィーン原典版(旧版)の通し番号で、
第29、33-35番のソナタ4曲を聴きました。


フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
 1) ピアノ・ソナタ 第29番 変ホ長調 作品54-2 Hob.XVI:45
 2) ピアノ・ソナタ 第33番 ハ短調 作品30-6 Hob.XVI:20
 3) ピアノ・ソナタ 第34番 ニ長調 作品41-1 Hob.XVI:33
 4) ピアノ・ソナタ 第35番 変イ長調 作品41-4 Hob.XVI:43

イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1995年4月6-8日、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.553800】

5枚目で一区切りできるので、
全体の構成を整理しておきます。

ウィーン原典版(旧版)の通番でまとめると、

 ピアノ・ソナタ
 第1-10番【8.553824】
 第11-16、18番【8.553824】
 第19、17、28番【8.553826】
 第20、30-32番【8.553364】
 第29、33-35番【8.553800】

となっています。

 第21-27番 Hob.XVI:2a-e,g,h

は、目録によって冒頭主題のみ伝存する曲なので、
CD5枚で第1-35番まですべて聴けることになります。

ちなみにこれは、
ウィーン原典版(旧版)の 1a1b の2巻分に相当します。


ウィーン原典版(旧版)の通番順に、
調性、作品番号、ホーボーケン番号を整理しておきます。

◯第1番 ト長調 Hob.XVI:8 【◯8.553824】
◯第2番 ハ長調 Hob.XVI:7
◯第3番 ヘ長調 Hob.XVI:9
◯第4番 ト長調 Hob.XVI:G1
◯第5番 ト長調 Hob.XVI:11
◯第6番 ハ長調 Hob.XVI:10
◯第7番 ニ長調 Hob.XVⅡ:D1
◯第8番 イ長調 Hob.XVI:5
◯第9番 ニ長調 Hob.XVI:4
◯第10番 ハ長調 Hob.XVI:1

▼第11番 変ロ長調 Hob.XVI:2 【▼8.553824】
▼第12番 イ長調 Hob.XVI:12
▼第13番 ト長調 Hob.XVI:6
▼第14番 ハ長調 Hob.XVI:3
▼第15番 ホ長調 Hob.XVI:13
▼第16番 ニ長調 Hob.XVI:14
☆第17番 変ホ長調 Hob.deest 【☆8.553826】
▼第18番 変ホ長調 Hob.deest
☆第19番 ホ短調 Hob.XVI:47bis
◆第20番 変ロ長調 Hob.XVI:18 【◆8.553364】

「第21番 ニ短調 Hob.XVI:2a
 第22番 イ長調 Hob.XVI:2b
 第23番 ロ長調 Hob.XVI:2c
 第24番 変ロ長調 Hob.XVI:2d
 第25番 ホ短調 Hob.XVI:2e
 第26番 ハ長調 Hob.XVI:2g
 第27番 イ長調 Hob.XVI:2h 」〔目録のみ〕

☆第28番 ニ長調 Hob.XVI:5bis
  (近年楽譜を発見〔一部欠落〕。目録の Hob.XVI2f に同じ)

◎第29番 変ホ長調 作品54-2 Hob.XVI:45 【◎8.553800】
◆第30番 ニ長調 作品53-2 Hob.XVI:19

◆第31番 変イ長調 作品54-3 Hob.XVI:46
◆第32番 ト短調 作品54-1 Hob.XVI:44
◎第33番 ハ短調 作品30-6 Hob.XVI:20
◎第34番 ニ長調 作品41-1 Hob.XVI:33
◎第35番 変イ長調 作品41-4 Hob.XVI:43

となります。

第1-20・28番の21曲には作品番号がなく、
第29番からは作品番号が付されています。

作品番号は原則、
楽譜の出版時に付されたものと推測されるので、

ウィーン原典版(旧版)の第29番からは、
作品番号が付され生前に出版された作品として、

それ以前のものと区別して聴くことが可能です。


出版の際に、新しい作品とともに、
過去の未出版の作品を合わせて出版したため、
作品番号=作曲順といえなくなっているようですが、

現状でも十分にぐちゃぐちゃなので、

作品番号があるものは他と別格にして、
ハイドン生前に出版された作品番号の順にならべ直してみたら、
どのように聴こえるのだろうと思いました。


   ***

さて今回のCD、
3楽章制のソナタ4曲を収録してあります。

 第29番 変ホ長調 作品54-2 Hob.XVI:45
 第33番 ハ短調 作品30-6 Hob.XVI:20
 第34番 ニ長調 作品41-1 Hob.XVI:33
 第35番 変イ長調 作品41-4 Hob.XVI:43

初期の頃とは明らかに異なり、
ほどよくまとまった感じの、充実した内容を聴かせてくれます。

それほど個性が際立っているわけではないので、
少し聴いただけでは似た感じの曲が続いていくのですが、

所々にハッとする美しい瞬間があって、
飽きることなく聴き続けることができました。


仕事のBGMには、
一番ハツラツと勉強をする気にさせてくれるのが
このCDでした。


※Wikipediaの
 「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンのピアノソナタ一覧」
 「ハイドンのピアノ曲一覧」
 「ホーボーケン番号」の各項目を参照。

※ピティナ・ピアノ曲事典の「ハイドン」を参照。

※ハイドン研究室「クラヴィア・ソナタの部屋」を参照。

2013年10月25日金曜日

マリナー&アカデミー室内管のメンデルスゾーン:交響曲第3・4番

イギリスの指揮者
ネヴィル・マリナー(Neville Marriner 1924.4-)の指揮する

イギリスのオーケストラ
アカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin-in-the-Fields)による

ドイツの作曲家
フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn 1809.2-1847.11)の
交響曲第3・4番を聴きました。


メンデルスゾーン
交響曲 第3番 イ短調 作品56《スコットランド》
交響曲 第4番 イ長調 作品90《イタリア》

アカデミー室内管弦楽団
ネヴィル・マリナー指揮
録音:1993年7月8-10日 ロンドン
【UCCD-7084】

メンデルスゾーンの交響曲といえば、
《スコットランド》と《イタリア》が取り上げられることが多いのですが、

これまでこの曲を聴いて、
特別な感動を味わったことがあるかと問われると、

それほど心惹かれる演奏に出会ったことはなく、
あまり深く印象に残らない曲でありました。


ドイツの作曲家なのですが、
ベートーヴェンやブラームスのように、

精神的にずっしり響いてくるところがないので、
どこを聴けばいいのか捉えどころがなかったのだと思います。


今回、古本屋で偶然手に入れた、
マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団のCDを聴いて、

初めてこの曲の真価がわかったように思いました。


マリナー氏のメンデルスゾーンは、

しみじみと丁寧に、どこも野暮ったくならずに、
典雅で上品なメンデルスゾーンの本質を、

見事に再現した演奏であるように思われました。


ふつうに振る舞いながら、
どこも美しく共感に満ちた音楽が広がっていき、
心から楽しむことができました。


いったん曲がわかってみると、
もう少し個性的な演奏の魅力もわかって来るかもしれません。

他の指揮者の演奏も、
いろいろ聴いてみようと思います。


マリナー氏が、
かつて頻繁に録音を発表されていたころは、
何でも取り上げ過ぎて、特徴をつかみにくいところがありました。

最近改めて、録音を聴き直してみると、
極上なのはやはりイギリス音楽であり、

後は同じ路線の、それほど深刻ぶらずに、
典雅な、上品な、愉悦な音そのものを楽しみたい時には、

最善の仕事をされていると感じました。


  ***

以下、
メンデルスゾーンの交響曲について、
自らの心覚えのためにまとめました。


メンデルスゾーンの交響曲は、

12-14歳の時(1821-1823)に
「弦楽のための交響曲」全13曲が作曲されていますが、
(3楽章形式の第1-12番と、単1楽章の1曲)

こちらは習作扱いされることが多く、

15歳の時(1824)に作曲された
最初の管弦楽のための交響曲が、

◎交響曲第1番 ハ短調 作品11

として出版されました(初演:1827年)。


その後、

23歳の時(1832)に

 交響曲 第5番 ニ長調《宗教改革》作品107

24歳の時(1833)に

 交響曲 第4番 イ長調《イタリア》作品90

が初演されているのですが、

この2曲は生前中に出版されなかったため、
没後の出版順に、第4・5番の番号がふられることになりました。


それから、

31歳の時(1840)に

◎交響曲 第2番 変ロ長調《賛歌》作品52

33歳の時(1842)に

◎交響曲 第3番 イ短調《スコットランド》作品56

が初演されています。

このうち ◎第1-3番 が、
メンデルスゾーンの生前に出版された交響曲ということになります。


  ***

このCDに収録されている
《スコットランド》と《イタリア》について
もう少し詳しく見ておくと、


交響曲 第3番 イ短調《スコットランド》作品56

は、20歳の時のイギリス旅行(1829.5-)で着想を得、
33歳の年に完成し、初演(1842.3)され、
翌年(1843)出版された作品です。


交響曲 第4番 イ長調《イタリア》作品90

は、21歳の時のイタリア旅行(1830.10-)で着想を得、
24歳の時に完成し、初演(1833.5)された作品です。

その後、亡くなるまで改訂作業が続けられたため、
生前に出版されることはありませんでした(初出版:1851)。


※Wikipediaの「アカデミー室内管弦楽団」「ネヴィル・マリナー」「フェリックス・メンデルスゾーン」「メンデルスゾーンの作品一覧」

2013年10月10日木曜日

ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:交響曲第7番(1972)

フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929.4-2012.1)が44-46歳のときに(1973.11)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した

同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12.8-1957.9.20)の
交響曲第7番と、交響詩《海の精》《タピオラ》を聴きました。


シベリウス
1) 交響曲 第7番 ハ長調 作品105
2) 交響詩《海の精》作品73
3) 交響詩《タピオラ》作品112

パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1972年5月(1)、1972年5月7・8日(2・3)
サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16017】


交響曲 第7番 ハ長調 作品105 は、

シベリウスが58歳のとき(1924年)に完成され、
同年3月に初演された単一楽章の交響曲です。


第5・6・7番は48歳(1914年)のとき、
ほぼ同時期に着想されたことが知られています。

第5番が初演(1915年12月)されてから、
しばらくその改訂作業が続いたため
(1916年に改訂稿、1919年に最終稿)、

第6番の初演は、
57歳(1923年2月)まで持ち越されました。

第7番はその翌年1924年に初演されています。


シベリウスは91歳(1957年)まで長生きしますが、
第7番以降、交響曲が完成されることはありませんでした。



第7番は今回ほぼ初めて聴きました。

感動しました。

第1番から第6番まで聴いてきた中では、
明らかに一つ高いところにある音楽で、

モーツァルトのクラリネット協奏曲や五重奏曲、
ベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲のみに聴かれる、

悟りの境地にある特別な感慨を味わうことができました。

他の方の演奏もぜひ聴いてみたいと思います。


  ***

交響詩《海の精》作品73 は、

48歳(1914年)のときに完成、
同年6月4日に初演された交響詩です。
《大洋の女神》《波の娘》などとも訳されます。

第7番の初演を10年さかのぼりますが、
第5-7番の曲想を得たのは1914年なので、

第5番に取りかかる前に完成された作品ということになります。


これも初めて聴きました。
わかりやすいシンプルな曲です。

何もないところから、
終末に明確なクライマックスが築かれていくので、
第7番のスケールを小さくした感じがありました。

ただし暗めの曲想なので、
聴いた印象はだいぶ違っていると思います。


   ***

交響詩《タピオラ》作品112 は、

交響曲第7番を完成した翌年(1925年)に完成され、
翌1926年12月26日(シベリウス61歳)に初演されました。

シベリウス最後の交響詩であり、
彼の交響詩の最高傑作と評価されているそうです。

確かに、
いくつか聴いてきたシベリウスの交響詩の中では、

さまざまな要素が凝縮され、
よく創り込まれた作品であることは十分伝わって来ました。

ただし一つの管弦楽曲としてみたとき、
他を圧倒する感動を与えられるところまでは行きませんでした。

恐らく今後聴き直していくことで、
より深く気がつけるところが出てくるように思います。


   ***

さてベルグルンドとボーンマス交響楽団による
シベリウスの交響曲全集はこれで終わりです。
(あと1枚、管弦楽曲集を残しています。)

多少、録音の古さを感じさせる点をのぞけば、
どれもシベリウスの真価を教えてくれる演奏で、
楽しい有意義な時間を過ごすことができました。

ただ、この全集を聴き出してから間もなく、
格安(1,300円程)の輸入盤で同じコンビの全集が発売されました。


そんなに違わないだろうと思っていたのですが、
最近買って聴いてみたところ、

同じ演奏とは思えないほど、
冴えわたった清新さを感じさせる録音でした。

国内盤で
唯一不満だった録音の古さをまったく感じさせずに、
熱く彫りの深い演奏が繰り広げられていたので驚きました。

国内では、一番大もとの原盤にはさかのぼりにくいでしょうから、
どうしても音質面でいま一歩になりがちなのかな、と思いました。

こちらで聴くと、まったく印象が異なりますので、
輸入盤でもう一度聴き直していこうかな、と考えているところです。



※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」
「交響曲第7番(シベリウス)」「大洋の女神」「タピオラ」を参照。

2013年9月30日月曜日

Sonny Rollins の 『Saxophone Colossus』 (1956.6)


Saxophone Colossus
Sonny Rollins Quartet

1) St.Thomas (Sonny Rollins)
2) You Don't Know What Love Is (Roye-DePaul)
3) Strode Rode (Sonny Rollins)
4) Moritat (Brecht-Weill)
5) Blue Seven (Sinny Rollins)

Sonny Rollins, tenor sax
Tommy Flanagan, piano
Doug Watkins, bass
Max Roach, drums

Recorded June 22,1956
【VICJ2068】

ニューヨーク生まれの
ジャズ・サックス奏者
ソニー・ロリンズ(1930.9-)が、

25歳の時(1956.6)に、

ピアノにトミー・フラナガン、
ベースにダグ・ワトキンス、
ドラムにマックス・ローチを迎えて収録した

アルバム『サキソフォン・コロッサス』を聴きました。


もう10年以上前に、
ロリンズを聴いてみようと思い立ち、

誰もが推していたアルバムだったので、
聴いてみたところそのままハマりました。

それから時折ひっぱり出しては繰り返し聴いているアルバムです。


始めのうちは、
明るく軽快な「セント・トーマス」と、
モールス信号のような出だしで駆け抜けていく「ストリード・ロード」
そして軽妙な歌いまわしの「モリタート」に心奪われていたのですが、

最近聴き直して、
日本のど演歌を聴くようなバラード
「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」の魅力もそれなりにわかって来ました。


ただその後、
ロリンズってこんな感じなんだと思って、
他のアルバムに手を出してみたところ、

これほどわかりやすくはない、
結構ハードボイルドな、渋目のアルバムに当ってしまい、

相性のいい次の1枚にはなかなか出会うことができませんでした。

さて愛聴する次の1枚とは?

2013年9月26日木曜日

Keith Jarrett & Charlie Haden の『Jasmine』(2007年)


Keith Jarrett / Charlie Haden
Jasmine

1) For All We Know
2) Where Can I Go Without You
3) No Moon At All
4) One Day I'll Fly Away
5) Intro / I'm Gonna Laugh You Right Out Of My Life
6) Body And Soul
7) Goodbye
8) Don't Ever Leave Me

Keith Jarrett (piano)
Charlie Haden (double-bass)
Recorded at Cavelight Studio
2007年3月24、25日録音
【ECM UCCE-1125】


こちらはつい最近知ったアルバムです。

キース・ジャレット(1945.5-)のピアノに、
チャーリー・ヘイデン(1937.8-)のベースが寄り添う、

スタンダードのバラード集です。


先月紹介した
ジャレットのソロ・アルバム

『The Melody At Night, With You』

の続編的な聴き方をされていることを知り、
買って聴いてみましたが、とても良かったです。


『The Melody …』と同じく、
どれもゆったりとした曲調なので、

数ヶ月聴いただけで、
全8曲を明確に聴き分けられるのかといえば、
正直心もとないのですが、

もともと

内へ内へと沈み込んでいく感のあった
『The Melody …』の時よりも少しだけ自在な感じになり、

仕事後の疲れた神経を休めるのにもってこいのアルバムでした。

恐らく今後も聴きこんで、
私にとっての定盤になりそうな1枚に出会えました。


ヒーリング音楽は軽く思われがちですが、
なかなかここまで極めることは難しく、
ただ頭が下がりました。

ルービンシュタインのショパン:夜想曲集 その1

ポーランド出身のピアニスト、
アルトゥール・ルービンシュタイン(1887.1-1982.12)が

78歳の時(1965)に録音した

ポーランドの作曲家
フレデリック・ショパン(1810.3-1849.10)の
夜想曲集を聴いていきます。

CD2枚に収録されていますが、
今回はCD1を取り上げます。


ショパン
夜想曲集(全19曲)のうち10曲

/CD1
 第1番 変ロ短調 作品9-1
 第2番 変ホ長調 作品9-2
 第3番  ロ短調  作品9-3

 第4番  ヘ長調  作品15-1
 第5番 嬰ヘ長調 作品15-2
 第6番  ト短調  作品15-3

 第7番 嬰ハ短調 作品27-1
 第8番 変ニ長調 作品27-2

 第9番  ロ長調  作品32-1
第10番 変イ長調 作品32-2

/CD2(省略)

アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
録音:1965年8月30日(第1-7番)、31日(第8-10番)、RCA Italiana Studio A、ローマ
【SICC30054~5】


3つの夜想曲 作品9-1~3 と、

3つの夜想曲 作品15-1~3 は、

ショパン23歳の時(1833)に出版された作品、

2つの夜想曲 作品27-1・2 は、

ショパン26歳の時(1836)に出版された作品、

2つの夜想曲 作品32-1・2 は、

ショパン27歳の時(1837)に出版された作品です。


どれも名曲ですが、
個人的には、作品9の3曲がとても好きです。

とくに第2番は、
ここまで美しいメロディを書いてしまうと、
この先続いていかないんじゃないかな、と思うほど。


作品15の3曲は多少、試行錯誤しているというか、
訴えかけてくる力に弱いのか、

注意して聴いていないと、
いつの間にか通り過ぎていく感じがありました。

次の作品27・作品32からは、
夜想曲で描いていく世界が定まったのか、
ぐっと深まって心に響いてくるものがありました。


  ***

ルービンシュタインのショパンは定評のあるものですが、

聴き方によっては、

落ちつきすぎているというか、
もっといくらでも情熱的に弾けるところを
あえて抑制しているように聴こえるかもしれません。

確かにこれは、

タッチの微妙な加減、
ごく僅かなテンポの揺らしによって
十全な表現が成し遂げられていて、

長年繰り返し演奏されてきた経験を踏まえた上での、
ルービンシュタインの結論が示されていて、

多少枯れた印象があるのは疑いないと思います。


以前の国内盤では、
リマスタリングの加減なのか、
タッチの微妙なニュアンスが消し飛んでいたため、

枯れた味わいを通りこして、
ただただ退屈な演奏のように感じられていました。


しかし今回の〈Blu-spec CD2〉を聴いて、

これまでの国内盤では伝わりにくかった
タッチの微妙な変化がよく聴きとれて、

初めてこの演奏の真価を知られた気がしました。


多少枯れてはいますが、よく練られた解釈で、
聴くほどに魅力の増す味わい深いノクターンだと思います。


※Wikipedia の「アルトゥール・ルービンシュタイン」「フレデリック・ショパン」「ショパンの楽曲一覧」を参照。

2013年9月17日火曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その8

アメリカのピアニスト
マレイ・ペライア(1947-)と
イギリス室内管弦楽団による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ピアノ協奏曲全集、8枚目を聴きました。


モーツァルト
ピアノ協奏曲 第19番 ヘ長調 K.459
ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:1983年9月21日、セント・ジョン・スミス・スクエア、ロンドン(第19番)、1977年2・6月、EMIスタジオ、ロンドン(第20番)
【SONY MUSIC 88691914112】CD8


28歳(1784年)のときに、
ウィーンで作曲された6曲のピアノ協奏曲
K.449・450・451・453・456・459(第14~19番)
の最後を飾るのが、

 第19番 ヘ長調 K.459

です。1784年12月11日に完成されています。

1790年にレオポルドⅡ世の戴冠式を祝賀する演奏会で、
第26番 ニ長調《戴冠式》K.537と一緒に演奏されたことから、
第19番のほうを《第二戴冠式》と呼ぶこともあるそうです。

聴いてみると、
第14番から流れで、
明るく楽しく美しい、
モーツァルトの安定した音楽が描き出されていました。

ただし、
聴いているその場では、
どこにも不満足なところはないのですが、

聴いた後でどんな曲だったのか、
思い出そうとしても特に心に残っていないことも確かで、

特別な印象に残りにくい曲のようにも感じました。

ペライアさんの演奏、
最初は多少物足りなく感じましたが、

繰り返し聴いているうちに、
この曲の良さをちょうど良い加減で体現しているように思い直しました。


  ***

モーツァルトが29歳(1785年2月10日)のときに完成されたのが、

 第20番ニ短調K.466

です。モーツァルトの短調の協奏曲はこれが初めてのことでした。

短調で耳に残りやすいこともあるのでしょうが、
傑作の一つであることは確かだと思います。

良くできた曲なので、
駄演に出会うことの方が少ないのですが、

ペライアさんの演奏、
もっと劇的であってもいいのかなと思いつつ、

これはこれでふつうに楽しむことができました。



※Wikipediaの「マレイ・ペライア」
 「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」
 「モーツァルトの楽曲一覧」
 「ピアノ協奏曲第19番(モーツァルト)」
 「ピアノ協奏曲第20番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

2013年8月31日土曜日

Keith Jarrett の 『The Melody At Night, With You』(1998年12月)


Kieth Jarrett
The Melody At Night,
With You

 1) I Loves You Porgy
 2) I Got It Bad And That Ain't Good
 3) Don't Ever Leave Me
 4) Someone To Watch Over Me
 5) My World Irish Rose
 6) Blame It On My Youth / Meditation
 7) Something To Remember You By
 8) Be My Love
 9) Shenadoah
10) I'm Through With Love

Keith Jarrett, piano
Recorded at Cavelight Studio
1998年12月録音
【ECM1675 / 547 949-2】


キース・ジャレット(1945.5- )を聴き始めたのは、
恐らく十年くらい前からでしょうか。

ピアノ・トリオで、
スタンダード・ナンバーを取り上げるのを何枚か聴いた後、

最初にいいな、と思ったのは、
ソロではじめてスタンダード・ナンバーを取り上げた、
この1枚でした。

1996年から病気療養のため、
2年ほど闘病生活を送ったのち、

50代半ばで活動を再開するに際して、
妻ローズ・アン・ジャレットに捧げられたアルバムだそうです。


先に聴いたビル・エヴァンスの Alone が、
ピアノ1台ながらもジャズらしいリズミックな、
心躍る軽やかな明るい側面を聴かせてくれたのに対して、

最初から最後まで、
ゆったりとしたテンポで、
やさしく穏やかな美しい音楽が、
ピアノ1台でつむぎだされていくので、

飛び切りの美しさに心を奪われながらも、
微動だにしない落ちついたテンポ感に、
最後まではついて行けないところもありました。


でもやはりこれは、
聴き込むごとに味わいの増す、
大人の癒やしの音楽だと思います。

今ではどのナンバーも楽しんで聴いていますが、
特に好きなのは、

 5) My World Irish Rose
 8) Be My Love
 9) Shenadoah

の3曲です。シンプル過ぎて、
これをジャズと呼んでいいのか、
多少疑問もあるのですが、

心にすっと入って来て、
聴くたびに涙のこぼれる、
名演奏です。


※Wikipediaの「キース・ジャレット」「メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー」

柳家小三治18 落語名人会42 「芝浜」(1988.10)

十代目柳家小三治(1939.12 - )の落語CD、
18枚目は「芝浜(しばはま)」を聴きました。

小三治58歳(1998.10)の時の口演です。


落語名人会42
柳家小三治18
「芝浜(しばはま)」
  録音:1998年10月31日、鈴本演芸場
  第13回柳家小三治独演会

〔お囃子〕植田ひさ/小口けい
【SRCL-3614】

小三治さんの「芝浜」は、
このシリーズで一番初めに聴いて、
大いに感銘を受けた演目です。

絶妙な間合いで
紡ぎだされる夫婦の会話に

笑いながらもしみじみホロリと涙する、
人情噺のおもしろさに開眼する1枚となりました。


よくできたお噺なので、
他にもよいCDはいろいろありそうですが、
私が聴くのは小三治さんのがほとんどです。

今回聴き直してみても、
感動の度合いは変わりませんでした。


 ***

「芝浜」が周知の古典となる画期となったのは、
三代目桂三木助(みきすけ 1902-1961)だそうですが、
今ひとつよい音源が残ってないのは残念なことです。

評価の高い立川談志(だんし 1936-2011)は、
独特のだみ声とせっかちな感じのテンポが肌に合いませんでした。

飄々とした五代目志ん生(しんしょう 1890-1973)は、
そつなくまとめられているものの、多少これじゃない感じが残りました。

まだこれくらいしか聴いていないので、
今後「芝浜」の名演に出会うのが、
落語を聴く楽しみの一つになると思います。


※Wikipediaの「芝浜(落語)」を参照。

2013年8月27日火曜日

ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その4

ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集

4枚目は、
ウィーン原典版(旧版)の通し番号で、
第20、30-32番のソナタ4曲等を聴きました。



フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
 1) ピアノ・ソナタ 第20番 変ロ長調 Hob.XVI:18
 2) ピアノ・ソナタ 第32番 ト短調 作品54-1 Hob.XVI:44
 3) ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品54-3 Hob.XVI:46
 4) ピアノ・ソナタ 第30番 ニ長調 作品53-2 Hob.XVI:19

イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1995年4月3-6日、ブダベスト、ユニテリアン教会、Phoenix Studio
【Naxos 8.553364】


しばらくぶりなので、
次に聴く5枚目とともに、
全体の構成を整理しておきます。

ウィーン原典版(旧版)の通番でまとめると、

 ピアノ・ソナタ
 第1-10番【8.553824】
 第11-16、18番【8.553824】
 第19、17、28番【8.553826】
 第20、30-32番【8.553364】
 第29、33-35番【8.553800】

となっています。

 第21-27番 Hob.XVI:2a-e,g,h

は、目録によって冒頭主題のみ伝存する曲なので、

CD5枚で、
第1-35番まですべて聴けることになります。
ちなみにこれは、
ウィーン原典版(旧版)の 1a 1b の2巻分に相当します。


ウィーン原典版(旧版)の通番順に、
調性、作品番号、ホーボーケン番号を整理しておきます。

 第1番 ト長調 Hob.XVI:8
 第2番 ハ長調 Hob.XVI:7
 第3番 ヘ長調 Hob.XVI:9
 第4番 ト長調 Hob.XVI:G1
 第5番 ト長調 Hob.XVI:11
 第6番 ハ長調 Hob.XVI:10
 第7番 ニ長調 Hob.XVⅡ:D1
 第8番 イ長調 Hob.XVI:5
 第9番 ニ長調 Hob.XVI:4
 第10番 ハ長調 Hob.XVI:1

 第11番 変ロ長調 Hob.XVI:2
 第12番 イ長調 Hob.XVI:12
 第13番 ト長調 Hob.XVI:6
 第14番 ハ長調 Hob.XVI:3
 第15番 ホ長調 Hob.XVI:13
 第16番 ニ長調 Hob.XVI:14
 第17番 変ホ長調 Hob.deest
 第18番 変ホ長調 Hob.deest
 第19番 ホ短調 Hob.XVI:47bis
◯第20番 変ロ長調 Hob.XVI:18

「第21番 ニ短調 Hob.XVI:2a
 第22番 イ長調 Hob.XVI:2b
 第23番 ロ長調 Hob.XVI:2c
 第24番 変ロ長調 Hob.XVI:2d
 第25番 ホ短調 Hob.XVI:2e
 第26番 ハ長調 Hob.XVI:2g
 第27番 イ長調 Hob.XVI:2h 」(目録のみ)

 第28番 ニ長調 Hob.XVI:5bis
  (近年楽譜を発見〔一部欠落〕。目録 Hob.XVI2f に同じ)

 第29番 変ホ長調 作品54-2 Hob.XVI:45
◯第30番 ニ長調 作品53-2 Hob.XVI:19

◯第31番 変イ長調 作品54-3 Hob.XVI:46
◯第32番 ト短調 作品54-1 Hob.XVI:44
 第33番 ハ短調 作品30-6 Hob.XVI:20
 第34番 ニ長調 作品41-1 Hob.XVI:33
 第35番 変イ長調 作品41-4 Hob.XVI:43

となります。

目録前(第1-20番)の20曲には作品番号がなく、
目録後の第29番からは作品番号が付されています。

作品番号は原則、
楽譜の出版時に付されたものと推測されますが、

出版の際に、新しい作品とともに、
過去の未出版の作品を合わせて出版したため、

作品番号=作曲順とはいえなくなったようです。


とはいえ、

ウィーン原典版(旧版)の第29番からは、
作品番号が付され生前に出版された作品として、

意識して聴くことが可能だと思います。


   ***

さて今回のCD、

前半に2楽章のソナタを2曲

 第20番 変ロ長調 Hob.XVI:18
 第32番 ト短調 作品54-1 Hob.XVI:44

後半に3楽章のソナタを2曲

 第31番 変イ長調 作品54-3 Hob.XVI:46
 第30番 ニ長調 作品53-2 Hob.XVI:19

の順に計4曲のソナタを収録しています。

2楽章のソナタにもようやく慣れてきましたが、
曲が終わる感じがあまりないので、

ボウッとしてると
いつの間にか次の曲がはじまることはたびたび。

この中では、
作品54-3 の 変イ長調のソナタは
ファジル・サイさんの演奏で聴きなじんでいたのですが、

ヤンドーさんの方が、
正調な、しかし堅苦しいわけではなく、
清々しく楽しいハイドンを聴かせてくれました。

他の3曲も、
特に1曲あげるのなら、
3楽章構成の作品53-2 のニ長調のソナタになるのでしょうが、

はじめの2曲も軽めですが、
楽しく明るく美ししいハイドンの音楽を楽しめると思います。

初期の10曲のような、
曲としての弱さはほとんど感じませんが、
まだまだハイドンならではの深さは聴こえてこないように感じました。


※Wikipediaの
 「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンのピアノソナタ一覧」
 「ハイドンのピアノ曲一覧」
 「ホーボーケン番号」の各項目を参照。

※ピティナ・ピアノ曲事典の「ハイドン」を参照。

※ハイドン研究室「クラヴィア・ソナタの部屋」を参照。

2013年8月17日土曜日

柳家小三治17 落語名人会41 「死神」 (1992.5)

十代目柳家小三治(1939.12 - )の落語CD、
17枚目は「死神(しにがみ)」を聴きました。

小三治52歳の時(1992.5)の口演です。

この1枚だけ手もとになかったので、
前の「鼠穴(ねずみあな)」からは
ずいぶん時間がたってしまいました。


落語名人会41
柳家小三治17
「死神(しにがみ)」
  録音:1992年5月31日、鈴本演芸場
  第26回柳家小三治独演会

〔お囃子〕植田ひさ/小口けい
【SRCL-3613】

「死神(しにがみ)」は、
三遊亭圓朝(えんちょう 1839-1900)の作です。

グリム童話に似た噺(「死神の名付け親」)があるので、
西欧の死神についての寓話を、圓朝が翻案したものと推測されています。



京須偕充(きょうすともみつ 1942- )氏のCD解説によると、

圓朝作の「死神」は、
弟子の初代三遊亭圓左(えんさ 1848-1909)と
初代三遊亭圓遊(えんゆう 1850-1907)に伝えられました。

圓左のは原作通りでしたが、
圓遊のは「陽気な滑稽噺」に改作されていたそうです。

圓朝―圓左系の正統な「死神」は、
2代目三遊亭金馬(きんば 1868-1926)に伝えられ、

金馬を経由して、
6代目三遊亭圓生(えんしょう 1900-1979)に伝えられました。

「圓生在世時代、『死神』といえばこの人のものという印象が圧倒的だった」そうです。


京須氏は明記していませんが、

10代目柳家小三治の「死神」は、
6代目三遊亭圓生の正統路線を引き継ぎつつ、
独自の解釈を加えたものと言えるようです。


   ***

さて、小三治さんの「死神」は、
もう少し若いころのCDを聴いて、

その完成度の高さに驚き、
小三治さんのファンになるきっかけになった演目でもあるのですが、


このCDは、
そのときの口演に比べると、

珍しく流れが悪いというか、
全体的に間の悪いところがあって、

畳みかけるような切れ味の鋭さが陰をひそめており、
意外な感がしました。

凡百の口演に比べれば
ふつうにおもしろく、楽しめることは確かなのですが、
もっとすごいのを知っているだけに、
多少もどかしさが残りました。


ただしいつもいつも
超絶名演が成し遂げられるはずはないので、

小三治さんのこの時期の「日常」を切り取ってある、
といえるのかもしれません。


※Wikipediaの「三遊亭圓朝」「死神(落語)」「死神の名付け親」「三遊亭圓左」「三遊亭圓遊」「三遊亭金馬(2代目)」「三遊亭圓生(6代目)」の各項目を参照。

2013年7月28日日曜日

ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:交響曲第6番 (1973年録音)

フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929.4-2012.1)が44-46歳のときに(1973.11)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した

同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)の
交響曲第6番と、交響詩《ルオンノタル》《ポヒョラの娘》を聴きました。


シベリウス
1) 交響曲 第6番 ニ短調 作品104
  第1楽章 アレグロ・モルト・モデラート
  第2楽章 アレグレット・モデラート
  第3楽章 ポコ・ヴィヴァーチェ
  第4楽章 アレグロ・モルト

2) 交響詩《ルオンノタル》作品70
3) 交響詩《ポヒョラの娘》作品49

タル・ヴァリャッカ(ソプラノ)
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1973年11月24日(1)、1975年6月3日(2)、1974年9月9日(3)
サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16017】


交響曲 第6番 ニ短調 作品104 は、

シベリウスが57歳のとき(1923年)に完成、初演された作品です。

第5・6・7番はほぼ同時期(1914年)に
着想されたことが知られていますが、

第5番が初演(1915年)された後、
しばらく第5番の改訂作業が続いたためか
(1916年に改訂稿、1919年に最終稿)、

第6番の完成は
50代の後半に入ってから、
1923年のことになりました。

ちなみにこの翌年1924年には第7番が完成しています。


今回ほぼ初めて聴きました。

フィンランドの自然の豊かさを感じる、
たいへん美しい作品ですが、

大自然の雄大さというよりも、
私の内なる世界としての、等身大の自然が描かれているように感じました。


聴きやすく
わかりやすい音楽ですが、

第5番まで一貫して感じられた
外へ外へと向かっていく覇気が、

若干減じているようにも感じられました。


飛び切り美しい出だしに耳を奪われるものの、
全体を聴き通してみて、

感動のうちに聴き終えることはなく、
あれっと思って何度も聴き返しておりましたが、

まだわかった!と言えるところにはたどりつけませんでした。


  ***

交響詩《ルオンノタル》作品70 は、

シベリウス40代後半(1913年)に作曲された
ソプラノ独唱付きの交響詩です。

歌詞は『カレワラ』第1章にもとづくそうで、
《ルオンノタル(大気の精)》と訳されることもあるようです。


同時期に作曲された

 交響曲 第4番 イ短調 作品63
 交響詩《吟遊詩人》作品64

と似た曲想をもっているように感じました。

独唱付きな分、言葉の問題があるので、
取り上げられる機会は限られてくるかもしれませんが、

独創的な出だしとともに、
別世界に持っていかれる心地のする
美しい歌曲ともいえるでしょう。


交響詩《ポヒョラの娘》作品49 は、

シベリウス40代はじめ(1906年)作曲された
『カレワラ』にもとづく交響詩で、

英雄ヴァイナモイネンについて描かれているそうです。

 交響曲第3番ハ長調作品52

とほぼ同時期に書かれていますが、

ほの暗い色調で、
曲の出だしは第6番と似た印象を受けました。


第6番と似た感じのある
飛び切り美しい出だしに心奪われますが、

後半にかけての展開はあと一歩といった感じでした。

でも十分美しい、聴いておく価値のある佳曲だと思いました。


※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」
「交響曲第6番(シベリウス)」「ポホヨラの娘」を参照。

2013年7月25日木曜日

フルトヴェングラー&RAIローマ響のワーグナー:《ニーベルングの指輪》全曲(1953年)


リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)
祝祭劇 《ニーベルングの指環》 全曲
フルトヴェングラー&RAIローマ交響楽団
1953年10・11月、ローマ、ライブ録音(モノラル)
【Membran Wallet 233411】13CD

今年の春に、
ヤノフスキ&シュターツカペレ・ドレスデンの《指輪》抜粋盤を聴いて、

いずれ全曲盤を聴こう、と思っていたところ、
フルトヴェングラー&RAIローマ交響楽団による《指輪》全曲盤が
格安(2500円)で手に入ったので、
こちらで聴いてみることにしました。

音質が心配だったのですが、
モノラルのライブ録音であることを考慮すれば、
十分に鑑賞に耐えうるレベルでした。

正直なところヤノフスキ盤の、
極上の音質に親しんだすぐあとでは
かなり聴き劣りしたことも事実なのですが、

ヤノフスキ盤から数ヶ月おいて、
音の記憶がある程度消えてから聴きなおしてみると、
思いのほか面白く、

数ヶ月かけてじっくり聴いていくつもりが、
次から次へと聴き進んで、3週間くらいのうちに全部聴き終えていました。

まだあらすじも良くわかっていない状態ではありますが、
確かにこれは音楽だけでも十分聴き応えのある、
傑作であることは感じ取ることができました。

事前に多少の知識を頭に入れておこうと思い、
堀内修 著『ワーグナーのすべて』(平凡社新書、平成25年1月)
などをひもといてみましたが、

ドイツ人ならばともかく、
日本人である私にとって、とくに興味のわかない内容でした。

しかし音楽は凄いです。

オペラの場合、はじめから
台本の細かい内容にまでこだわろうとすると、
途中で飽きてきて、挫折することが少なくありませんでした。

これからはまず取り敢えず、音だけで楽しんで、
それから台本、原作にさかのぼるのもありかな、と思い直した次第です。

フルトヴェングラーの指揮は、
《指輪》の全体像を見据えた上で、
陶酔的というよりは、音楽的にバランスの取れた、
ほどよく掘り下げられた表現で、

楽譜の読みの深さに感心しつつ、
飽きる間もなく、楽しみながら、全体を聴き通すことができました。
2500円なら十分に満足できる内容でした。

次はヤノフスキ&シュターツカペレ・ドレスデン盤も全曲聴いてみたいと思っています。


リヒャルト・ワーグナー:
《ニーベルングの指環》 序夜と3日の祝祭劇

序夜 《ラインの黄金》 全4場
 ヴォータン : フェルディナント・フランツ
 フリッカ : イーラ・マラニウク
 フライア : エリーザベト・グリュンマー
 フロー : ローレンツ・フェーエンベルガー
 ドンナー : アルフレート・ペル
 ローゲ : ヴォルフガング・ヴィントガッセン
 ミーメ : ユリウス・パツァーク
 エルダ : ルース・スチュワート
 アルベリヒ : グスタフ・ナイトリンガー
 ファゾルト : ヨーゼフ・グラインドル
 ファフナー : ゴットロープ・フリック
 ヴォークリンデ : セーナ・ユリナッチ
 ヴェルグンデ : マグダ・ガボーリ
 フロースヒルデ : ヒルデ・レッスル=マイダン
 RAIローマ交響楽団
 指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
 [録音] 1953年10月26日
 ローマ、アウディトリオ・デル・フォーロ・イタリーコ

第1日 《ワルキューレ》 全3幕
 ジークムント : ヴォルフガング・ヴィントガッセン
 ジークリンデ : ヒルデ・コネツニ
 フンディング : ゴットロープ・フリック
 ヴォータン : フェルディナント・フランツ
 ブリュンヒルデ : マルタ・メードル
 フリッカ : エルザ・カヴェルティ
 ヴァルトラウテ : ダグマー・シュメーデス
 ヘルムヴィーゲ : ユーディト・ヘリヴィック
 オルトリンデ : マグダ・ガボーリ
 ゲルヒルデ : ゲルダ・シュライヤー
 シュヴェルトライテ : ヒルデ・レッスル=マイダン
 ジークルーネ : オルガ・ベニングス
 グリムゲルデ : エルサ・カヴェルティ
 ロスヴァイゼ : イラ・マラニウク
 RAIローマ交響楽団
 指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
 [録音]1953年10月29日(第1幕)、11月3日(第2幕)、11月6日(第3幕)
 ローマ、アウディトリオ・デル・フォーロ・イタリーコ

第2日 《ジークフリート》 全3幕
 ジークフリート : ルートヴィヒ・ズートハウス
 ブリュンヒルデ : マルタ・メードル
 さすらい人 : フェルディナント・フランツ
 ミーメ : ユリウス・パツァーク
 アルベリヒ : アロイス・ペルネルシュトルファー
 ファフナー : ヨーゼフ・グラインドル
 エルダ : マルガレーテ・クローゼ
 森の小鳥 : リタ・シュトライヒ
 RAIローマ交響楽団
 指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
 [録音]1953年11月10日(第1幕)、11月13日(第2幕)、11月17日(第3幕)
 ローマ、アウディトリオ・デル・フォーロ・イタリーコ

第3日 《神々の黄昏》 序幕つき3幕
 ジークフリート : ルートヴィヒ・ズートハウス
 ブリュンヒルデ : マルタ・メードル
 アルベリヒ : アロイス・ペルネルシュトルファー
 ハーゲン : ヨーゼフ・グラインドル
 グートルーネ : セーナ・ユリナッチ
 グンター : アルフレート・ペル
 フロースヒルデ : ヒルデ・レッスル=マイダン
 ヴァルトラウテ : マルガレーテ・クローゼ
 ヴォークリンデ : セーナ・ユリナッチ
 ヴェルグンテ : マグダ・ガボーリ
 第1のノルン : マルガレーテ・クローゼ
 第2のノルン : ヒルデ・レッスル=マイダン
 第3のノルン : セーナ・ユリナッチ
 RAIローマ放送合唱団
 RAIローマ交響楽団
 指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
 [録音]1953年11月20日(序幕&第1幕)、11月24日(第2幕)、11月27日(第3幕)
 ローマ、アウディトリオ・デル・フォーロ・イタリーコ

2013年7月22日月曜日

コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲全集 その4

コダーイ四重奏団による

オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732.3 - 1809.5)の
弦楽四重奏曲全集4枚目です。



ハイドン
弦楽四重奏曲 第9番 変ホ長調 作品2-3〔Hob.Ⅲ-9〕
弦楽四重奏曲 第11番 ニ長調 作品2-5〔Hob.Ⅲ-11〕
弦楽四重奏曲 第13番 ホ長調 作品3-1〔Hob.Ⅲ-13〕
弦楽四重奏曲 第14番 ハ長調 作品3-2〔Hob.Ⅲ-14〕

コダーイ四重奏団
録音:2000年6月26-29日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.555703】


ハイドンの弦楽四重奏曲は、
ハイドン生前中(1801年)に
弟子のプレイエル(1757-1831)によって
計83曲が全集としてまとめられました。

このプレイエル版において、
ハイドン初期の弦楽四重奏曲は、

 ◯作品1-1~6〔Hob.Ⅲ-1~6〕第1~6番
 ◯作品2-1~6〔Hob.Ⅲ-7~12〕第7~12番
 ◯作品3-1~6〔Hob.Ⅲ-13~18〕第13~18番

と整理されました。

作品1・2はハイドンが33・34歳のとき(1765・66年)、
作品3は45歳のとき(1777年)に個別に出版され、

ハイドン最晩年(1805年)の「ハイドン目録」でも、
ハイドン本人が認めていたものなのですが、


その後の研究で、

 ◯変ロ長調 作品1-5〔Hob.Ⅲ-5〕は、
  交響曲「A」〔Hob.Ⅰ-107〕の編曲、

 ◎変ホ長調 作品2-3・5〔Hob.Ⅲ-9・11〕は、
  6声のディベルティメント〔Hob.Ⅱ-21・22〕の編曲、

であったことがわかっています(計3曲)。さらに、

 ◎作品3-1~6〔Hob.Ⅲ-13~18〕

の6曲は、ハイドンの信奉者
ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)による
贋作と考えられるようになりました。


つまりこのCDには、

最新の研究では、ハイドンの弦楽四重奏曲から
外して考えられるようになった4作品、

6声のディベルティメント〔Hob.Ⅱ-21・22〕から編曲された2曲

 ◎作品2の3・5(第9・11番)

と、ホフシュテッターによる贋作と考えられる作品2曲

 ◎作品3の1・2(第13・14番)

の計4曲が収録されています。


  ***

まずは前半2曲。

弦楽四重奏曲 第9番 変ホ長調 作品2-3〔Hob.Ⅲ-9〕
弦楽四重奏曲 第11番 ニ長調 作品2-5〔Hob.Ⅲ-11〕

は6声のディベルティメント〔Hob.Ⅱ-21・22〕からの編曲で、
それぞれ5楽章からなる楽しい作品です。

特別な深みのある曲ではありませんが、
4声の作品とは目のつけどころが違ってくるからか、
若干ですが新鮮な印象を受けました。

Hob.Ⅱの系列は、
作品によって編成が少しずつ変化するからか、
国内盤をざっと探した感じではまとまった録音は出ていないようでした。

聴けないとなるとかえって
聴いてみたくなったので、次は輸入盤に手を広げて探してみます。

演奏は最後まで楽しく聴かせてもらえたので、
私には十分の出来でした。


次は後半2曲。

弦楽四重奏曲第13番 ホ長調 作品3-1〔Hob.Ⅲ-13〕
弦楽四重奏曲第14番 ハ長調 作品3-2〔Hob.Ⅲ-14〕

ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)による贋作
と推定されている作品です。

他と比べて多少聴き劣りするのかな、
と思って聴き始めたのですが、

そんなことは全くなく、
ハイドン最初期の弦楽四重奏曲よりも、

技巧的な面で聴かせ上手に仕上がっていて、
飽きずに楽しんで聴くことができました。

この時期のほかの作曲家の作品を
色々聴いたわけではないので一概に言えないのですが、

作品1、作品2が、
初期の作品という前提で聴かないと
多少苦しい部分があったのに対して、

作品3はそのままでふつうに楽しめる作品であり、
ハイドンの順調な成長の証が記されているようにも聴こえました。

書誌学的に、
ホフシュテッターの手になる
原本の楽譜が見つかったわけではないようなので、

それほど決定的に、ハイドン作ではない、と言い切れるのだろうかと疑問を持ちました。

ホフシュテッターは、
これ以外の作品をほとんど残していないようでもあり、
ハイドンに似せて、いきなりこれだけの作品が書けるものなのかな、
とも思いました。

例えば、
ホフシュテッターがハイドンに依頼して、
弦楽四重奏曲を作曲してもらったために、

ホフシュテッターの作品と誤認されることもあったのではないのかな、と。

とはいえ、
残りの4曲をまだ聴いていないので、
そちらを聴いてから、また考えてみたいと思います。



※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
 「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。

※JAIRO でインターネット上に公開されている
 飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
 (『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。

※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。

※現代音楽作曲家・福田陽氏の
 「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。

2013年7月8日月曜日

ヴァルヒャのバッハ:オルガン作品全集(旧盤)CD9

ヘルムート・ヴァルヒャ(1907 - 1991)による
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685.3 - 1750.7)のオルガン作品全集、
9枚目を聴きました。


J.S.バッハ:オルガン作品全集 CD9

クラーヴィア練習曲集第3部(ドイツ・オルガン・ミサ)より

大オルガンのためのコラール編曲集(続き)
1) これぞ聖なる十戒 BWV678
2) われらみな唯一なる神を信ず BWV680
3) 天にいますわれらの父よ BWV682
4) われらの主キリスト、ヨルダン川に来たり BWV684
5) 深き苦しみの溝より、われ汝を呼ぶ BWV686
6) われらの救い主イエス=キリスト BWV688

ハープシコードのための4つのデュエット
7) デュエット第1番ホ短調 BWV802
8) デュエット第2番ヘ長調 BWV803
9) デュエット第3番ト長調 BWV804
10) デュエット第4番イ短調 BWV805

小オルガンのためのコラール編曲集
11) 永遠の父なる神よ BWV672
12) すべての世の慰めなるキリストよ BWV673
13) 聖霊なる神よ BWV674
14) いと高きところにいます神にのみ栄光あれ BWV675
15) フゲッタ「いと高きところにいます神にのみ栄光あれ」BWV677
16) フゲッタ「これぞ聖なる十戒」BWV679
17) フゲッタ「われらみな唯一なる神を信ず」BWV681
18) 天にいますわれらの父よ BWV683
19) フゲッタ「われらの主キリスト、ヨルダン川に来たり」BWV685
20) 深き苦しみの溝より、われ汝を呼ぶ BWV687
21) フーガ「われらの救い主イエス=キリスト」BWV689

22) フーガ変ホ長調「聖アン」BWV552-2

録音:1947年(1-6,22)、1950年(11-21)、1951年(7-10)
オルガン:カッペル、聖ペテロ=パウロ教会
ハープシコード:ハンブルグのエイメル製
【Membran 223489】CD9


CD9枚目には、
「ドイツ・オルガン・ミサ」と呼ばれる、
「クラーヴィア練習曲集第3巻」の後半が演奏されています。


「クラーヴィア練習曲集」とは、
バッハが生前に出版した鍵盤楽器のための作品集であり、

 第1巻 パルティータ BWV825-830〔出版:1726-1730〕
 第2巻 フランス風序曲 BWV831、イタリア協奏曲 BWV971〔出版:1735年〕
 第3巻 〔出版:1739年〕
 第4巻 ゴールドベルク変奏曲 BWV988〔出版:1742年〕

の全4巻からなります。

このうち第3巻は、
50代半ばのときに出版された作品で、
「ドイツ・オルガン・ミサ」とも呼ばれ、

 前奏曲とフーガ 変ホ長調「聖アン」BWV552
 21のコラール BWV669-689
 4つのデュエット BWV802-805

という構成からなります。
(4つのデュエットのみ、ハープシコードで演奏。)

このCDでは、
ヴァルヒャさんの発案なのか、
用いた楽譜によるのか、次のような順番で演奏されています。
(CD8の収録曲も含む。)

 1) 前奏曲 変ホ長調「聖アン」
   BWV552/1
 2) 大オルガンのためのコラール編曲集
   BWV669-671・676
  (以下CD9)
   BWV678・680・682・684・686・688
 3) ハープシコードのための4つのデュエット
   BWV802-805
 4) 小オルガンのためのコラール編曲集
   BWV672-675
   BWV677・679・681・683・685・687・689
 5) フーガ変ホ長調「聖アン」
   BWV552/2

収録時期は数年にわたっているので、
必ずしも一気に演奏するべきものではないのかもしれませんが、

それほど難渋でもなく、
どれも充実した内容で、
全体的に統一した雰囲気を醸しだしているので、
チェンバロを調達してきて、一夜で演奏するのも面白そうな企画だと思いました。

大規模な曲集なので、
正直まだ全体像をつかめているとは言えないのですが、
私の中では、要注目の曲集になりました。

※Wikipedia の「ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品一覧」を参照。

2013年6月30日日曜日

朝比奈隆&都響のシューベルト:交響曲第9番《ザ・グレイト》(1995年)

フルトヴェングラー&ベルリン・フィルの
シューベルト《ザ・グレイト》が今ひとつだったので、

ほかに満足できる演奏はないか探していたところ、
最近タワーレコードで格安で手に入れた

朝比奈隆(1908.7-2001.12)指揮、
東京都交響楽団の演奏がとても良かったので紹介します。


フランツ・シューベルト(1797.1-1828.11)
交響曲第9番ハ長調 D.944《ザ・グレイト》

朝比奈隆(指揮)
東京都交響楽団
録音:1995年1月22日、東京芸術劇場
【FOCD-9359】

スケールの大きい雄渾な演奏です。

強奏時の響きが耳に心地よく、
素朴でのどかな感じもよく出ていて、

《グレイト》の魅力を存分に味わうことができました。


シューベルトの交響曲は、
オケの響きにそれなりに魅力がないと、
今ひとつ楽しめない側面があるように思いますが、

東京都交響楽団の機能性の高さも嬉しい驚きで、
絹のようになめらかな響きが美しく、
ライブでここまで聴かせてくれたら
私には十分なレベルでした。


この1年後、
朝比奈隆が87歳のときに大阪フィルをふった
同曲の演奏もCD化されています。


大阪フィルハーモニー交響楽団
朝比奈隆(指揮)
録音:1996年2月16日、愛知県芸術劇場
【PCCL-00388】

これは当日実演を聴くことができ、
大感動した記憶の残るCDなのですが、
久しぶりに聴き直してみたところ、

オケの響き自体は、ホールと一体化して
いい感じにやわらかく録れているのですが、

朝比奈が即興的にテンポをゆらしていたのか、
微妙にアンサンブルの縦の線がずれる部分があって、

今回はそれほど楽しめませんでした。


どちらかといえば、
大阪フィル盤のほうが
ライブならではの動的な側面が強いので、

都響盤の記憶が薄れたころに聴き直すと
違った感想になるかもしれません。