2017年12月25日月曜日

NAXOSのモーツァルト:ホルン協奏曲全集(1988年録音)

スロバキア共和国生まれのホルン奏者
ミロシュ・ステヴォーヴ
(Milos Stevove, 1939- )の独奏、

スロバキア共和国の室内オーケストラ
カペラ・イストロポリターナ
(Capelia Istropolitana)の伴奏、

ウクライナ生まれの指揮者
ヨーゼフ・コペルマン
(Jozef Kopelman,1947- )の指揮で、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月-1791年12月)の
ホルン協奏曲全集を聴きました。

 伴奏のカペラ・イストロポリターナは、
 スロヴァキアの首都ブラチスラヴァにあるオケ
 スロバキア・フィルハーモニー管弦楽団
 (Slovak Philharmonic Orchestra, 1949年設立)
 のメンバーによって、1983年に設立された室内オーケストラであり、

 独奏のミロシュ・ステヴォーグは、
 1981年からスロバキア・フィルの首席ホルン奏者を務めており、
 録音時、49歳でした。


モーツァルト
 ①ホルン協奏曲第1番 ニ長調 K.412
 ②ホルン協奏曲第2番 変ホ長調 K.417
 ③ホルン協奏曲第3番 変ホ長調 K.447
 ④ホルン協奏曲第4番 変ホ長調 K.495
 ⑤ロンド 変ホ長調 K.371

 ミロシュ・ステヴォーヴ (ホルン)
 カペラ・イストロポリターナ
 ヨーゼフ・コペルマン (指揮)

録音:1988年11月。ブラチスラヴァ、スロバキア・フィルのコンサートホール。
【NAXOS 8.550148】1989年発売


古本屋で偶然手に入れた1枚です。

ホルン協奏曲は若いころ、
ペーター・ダム&ブロムシュテットの録音を聴いて、
退屈な印象しか持てなかったので、
あまり聴いて来ませんでした。

独奏のミロシュ・ステヴォーヴについて
他にどんな録音があるのか調べてみると、
NAXOSの1枚があるだけでした。

管楽器について詳しいことはわからないのですが、
実際に聴いてみると、

やはりそれほど濃い作品ではありませんが、
仕事のBGMとしては最適。

誰にも聴きやすく、わかりやすい演奏で、
最後まで楽しみながら聴き進めることができました。


テクニック的に、
それほど冴えているようには感じないのですが、

十分な技量をもったソリストと、
わが街のふつうのオーケストラが互いによく調和して、
理想的な演奏のように感じました。

他にも優れた演奏はあるでしょうが、
モーツァルトのホルン協奏曲を、初めて、
素朴で楽しい作品だと認識できたので、
私にとって画期的なCDとなりました。


既存の録音では今一つ、
モーツァルトのホルン協奏曲の良さがわからない方には、
作品の魅力を伝える好演としてお薦めしておきます。



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2017年12月18日月曜日

NAXOSのモーツァルト:クラリネット協奏曲&ファゴット協奏曲(1989年録音)

NAXOSの旧録音を
AVEXから廉価で再販しているシリーズから、


オーストリア生まれのクラリネット奏者
エルンスト・オッテンザマー
(Ernst Ottensamer、1955-2017)の独奏、

チェコ生まれのファゴット奏者
シュテファン・トゥルノフスキー
(Stepan Turnovsky, 1959- )の独奏、

オーストリアの指揮者
ヨハネス・ヴィルトナー
(Johannes Wildner, 1956年 - )の指揮する
ウィーン・モーツァルト・アカデミーの伴奏で、


オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月-1791年12月)の
クラリネット協奏曲ファゴット協奏曲を聴きました。


モーツァルト
①クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
②ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191(186e)

 ①エルンスト・オッテンザマー(クラリネット)
 ②シュテファン・トゥルノフスキー(ファゴット)
 ヨハネス・ヴィルトナー(指揮)
 ウィーン・モーツァルト・アカデミー
 録音:1989年10月1-15日、ハンブルク、ハイドン・ホール
【AVCL-25667】2007年12月発売


 クラリネット独奏のオッテンザマーは、
 1978年にウィーン・フィルのメンバーとなり、
 1983年から首席クラリネット奏者を務めました。

 ファゴット独奏のトゥルノフスキーは、
 1978年からウィーン・フィルのメンバーとなり、
 1985年から首席ファゴット奏者を務めました。

 伴奏のウィーン・モーツァルト・アカデミーは、
 ウィーン・フィルとウィーン交響楽団の
 メンバーからなる室内オーケストラですが、

 NAXOSで録音されたCD1枚のほかは
 録音が見当たらないので、この録音のために
 臨時編成されたンサンブルかもしれません(未確認)。


  ***

NAXOSのモーツァルトはどうだろうと、
クラリネット協奏曲とファゴット協奏曲を収めた1枚を買ってみたところ、

曲の魅力が率直に伝わる好演だったので、調べてみると、
ウィーン・フィルの首席奏者による録音であることを知りました。

だから絶対に良いとも言い切れないはずですが、
どちらも安心して身を任せられる名演に仕上がっていると思います。

とくにファゴット協奏曲は、
クラリネットのに比べると平凡な印象で、
これまで良い曲だと思ったことがなかったのですが、
初めて感動のうちに聴き通すことが出来たので、
私の中で画期的な録音となりました。

クラリネット協奏曲のほうは
名演がひしめいているので、
これだけが良いとは言えないでしょうが、
個人的にはこれくらい聴けたら十分な演奏でした。

 ウィーン・フィルのメンバーによる
 モーツァルトの木管協奏曲集は、
 ベームの指揮による録音が有名ですが、
 オケの伴奏が分厚すぎて、
 独奏に聴き取りにくいところがあるので、
 こちらのほうがはるかに良い録音だと思いました。


  ***

NAXOSで発売されたもとのCDには、
オーボエ協奏曲も併録されているので、

そちらも聴いてみたくなり、
中古で購入してみました。


モーツァルト
①ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191(186e)
オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
③クラリネット協奏曲 イ長調 K.622

 ①シュテファン・トゥルノフスキー(ファゴット)
 ②マーティン・ガブリエル(オーボエ)
 ③エルンスト・オッテンザマー(クラリネット)

ヨハネス・ヴィルトナー(指揮)
ウィーン・モーツァルト・アカデミー
録音:1989年10月1-15日、ハンブルク、ハイドン・ホール
【NAXOS 8.550345】1993年1月発売

オーボエ独奏の
マーティン・ガブリエル
(Martin Gabriel, 1956- )は、
他の二人と同じく、
1978年にウィーン・フィルのメンバーとなり、
1987年から首席オーボエ奏者を務めた人物です。

こちらもやはり、表面的に美しくも、
あまり心に残らない演奏を聴くことが多いのですが、

素朴で味わい深く、耳に残る音色で、
純粋にこの協奏曲を楽しむことができました。


  ***

音質については、
独奏楽器はどちらもはっきり聴き取れるのですが、

オケの伴奏部分は、
ナクソスのほうがあらっぽく大まかな印象で、
多少聴き取りにくく、

エイベックスのほうが、
洗練されて明晰な音になっているので、
どちらかといえば、エイベックスのほうがお薦めです。


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2017年12月11日月曜日

名古屋市美術館の「ランス美術館展」

去る12月3日(日)、
名古屋市中区栄にある名古屋市美術館まで、

「ランス美術館展」

を観に行って来ました。

「会期:平成29年10月7日(土)
       ~12月3日(日)
 会場:名古屋市美術館
 主催:名古屋市美術館、中日新聞社」

全国7箇所で展示され、
名古屋はそのうち最後の会場となっていました。

 ①熊本県立美術館(28年7月~9月)
 ②静岡市美術館(28年9月~10月)
 ③福井県立美術館(28年11月~12月)
 ④公益財団法人 ひろしま美術館(29年2月~3月)
 ⑤東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(29年4月~6月)
 ⑥山口県立美術館(29年7月~8月)

ランス美術館について図録のごあいさつによると、

「フランス北東部のシャンパーニュ地方に位置する
 ランス市は、歴代のフランス国王が戴冠式を行ってきた
 大聖堂を擁する歴史ある古都です。

 その中心街に建つランス美術館
 フランス革命期の18世紀末に起源を持ち、
 中世美術から現代美術まで幅広い所蔵品を有する
 フランス絵画の宝庫として世界的に知られています。

 ランス市では1790年代初頭からコレクションが始まり、
 市庁舎のなかで定期的に公開されてきました。

 そして今から1世紀前の1913年10月
 中世のサン=ドニ修道院の遺稿を改築した
 新美術館として開館し、その由緒ある佇まいは
 珠玉のコレクションとともにフランスの人々に愛されています。」

とありました。(※改行はブログ編者による)
全体の構成は、

 1. 国王たちの時代
 2. 近代の幕開けを告げる革命の中から
 3. モデルニテをめぐって
 4. フジタ、ランスの特別コレクション

という4章構成で、
ランス美術館所蔵の60余点の作品が展示されていました。


  ***

一つの美術館の所蔵品だけで構成されているので、
全体としては雑然とした印象が残りました。

個人的には、
印象画が好きなので、
次の5点の風景画に感銘を受けました。


2. 近代の幕開けを告げる革命の中から

22
カミーユ・コロー
(Camille Corot、1796年7月-1875年2月)
「川辺の木陰で読む女」
 1865~70年。油彩、カンヴァス。

29
ウジェーヌ・ブーダン
(Eugène Boudin, 1824年7月-1898年8月)
「ダンケルク周辺の農家の一角」
 1889年。油彩、カンヴァス。

コローもブーダンも印象派に入る前段階で、
絵を観始めたころはそれほど良いとは思わなかったのですが、

最近は写実的な中にどこか鄙びた印象があって、
観るたびに惹きつけられることが多いです。


3. モデルニテをめぐって

31
アルフレッド・シスレー
(Alfred Sisley, 1839年10月-1899年1月)
「カーディフの停泊地」
 1897年。油彩、カンヴァス。

33
ジャン=フランソワ・ラファエリ
(Jean-François Raffaëlli, 1850年4月-1924年2月)
「シャンゼリゼ」
 1902年。油彩、カンヴァス。

39
ルイ・パヴィオ
(Louis Paviot, 1872-1943)
「トルニテ広場」
 1900年。油彩、カンヴァス。


シスレーは個人的に大好きな画家なので、
何でも観られるだけで嬉しいのですが、
この31は、彼ならではの雰囲気のある良品でした。

ラファエリとパヴィオは、
ほかの作品を全然知らないのですが、
33と39については近くに置いて飾りたい、
素敵な作品だと思いました。

ただこの3点、
図録では実物の魅力が
1、2割しか伝わっていません。

実物でみるととても良い絵でした。



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2017年12月4日月曜日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第9・10版(1986年録音)

イスラエルの指揮者
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する

ドイツのオーケストラ
フランクフルト放送交響楽団
(2005年にhr交響楽団に改称)の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第9番&第10番~アダージョを聴きました。

指揮者50歳の時(1986年9月)の録音です


グスタフ・マーラー
①交響曲第9番
②《アダージョ》~交響曲第10番

 エリアフ・インバル(指揮)
 フランクフルト放送交響楽団

録音:1986年9月24-27日、フランクフルト、アルテ・オーバー
【COCO-73282/3】2012年6月発売。

交響曲第9番は、
マーラー49歳から50歳にかけて
(1909年-10年)作曲されました。

初演は没後1年をへた1912年6月に、
ブルーノ・ワルターの指揮する
ウィーン・フィルによって演奏されました。

第10番は第9番の完成後、
1910年に作曲がはじめられたものの、
1911年5月に亡くなったため、未完のまま残されました。

全5楽章の略式総譜
(オーケストレーション前の4、5段の楽譜による総譜)
は最後まで完成されたものの、

オーケストレーションは、
 第1楽章はそのまま演奏できるレベルまで完成、
 第2楽章は一部に不備があるもののほぼ完成、
 第3楽章は最初の30小節目まで一応完成されるという状態でした。

マーラー本人は、
このスケッチを破棄するように伝えましたが、
夫人アルマがこれを保管していたため、
1924年に初めて写真版が公表され、
同年10月に第1・3楽章の初演が行われました。


  ***

さて肝心の演奏ですが、

これまで第3・4・5・6・7・8番と
《大地の歌》を聴いてきた中で、

この第9番のみは、
なぜか全体的にオケのまとまりが悪く、
燃焼度の低い、中途半端な演奏で、
名演には程遠い仕上がりになっていました。

まさかと思い、
何度か聴き直したのですが、
この第9番のみは指揮者の消化不足な印象が残る、
あまり面白くない演奏が展開されていて、
最後まで聴き通すのが苦痛でした。

この時だけ、
オケの調子が悪かったのかもと思いましたが、
同じ時に録音された第10番のほうは、
ふつうに情感のこもった、
インバルの意図がよくわかる演奏だったので、

第9番のみ、
指揮者の解釈にまだ迷いがあったのかもしれません。

まだ聴いていない第1・2番のCDのなかにも、
もしかしたら今一のものがあるかもしれないので、
そちらを聴いてから、
もう一度、第9番に戻って来ようと思います。



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2017年11月26日日曜日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲《大地の歌》(1988年録音)

イスラエルの指揮者
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する

ドイツのオーケストラ
フランクフルト放送交響楽団
(2005年にhr交響楽団に改称)の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲《大地の歌》を聴きました。

指揮者52歳の時(1988年3月)の録音です


グスタフ・マーラー
交響曲《大地の歌》

 エリアフ・インバル(指揮)
 フランクフルト放送交響楽団
 ペーター・シュライアー(テノール)
 ヤルド・ヴァン・ネス(メゾ・ソプラノ)

録音:1988年3月24・25日、フランクフルト、アルテ・オーバー
【COCO-73285】2012年6月発売。

交響曲《大地の歌》は
1907年から8年にかけて、
マーラーが47-8歳のときに作曲されました

初演は、
マーラーが1911年5月に亡くなった後、
同年11月20日に、作曲者から託された
ブルーノ・ワルターによって初演されました。

  ***

音の良さに驚いた[Blu-spec CD]によるインバルのマーラー、
第8番に続いて《大地の歌》を聴きました。

こちらは2002年6月に発売された
普通のCDのほうも持っていたので、

今回聴き比べてみると、声楽の場合、
オーケストラほど大きな違いはなく、
普通のCDでも十分美しく録れていました。

ちゃんと聴けば、
[Blu-spec CD]のほうが明らかに、
空間が広がって、耳にやわらかく、
いい音で聴こえてくるのですが、

声楽曲の場合は、
改めて買い直すほどの
大きな差はないかもしれません。


 ***

《大地の歌》は、
ウィーン・フィルと抜群に相性のよい曲ですが、

例外的に聴けるのが、
このインバル&フランクフルト放送響による演奏です。

ペーター・シュライアー(テノール)と
ヤルド・ヴァン・ネス(メゾ・ソプラノ)の独唱も、

耳ざわりなところのない
瑞々しい感性に彩られた歌唱で、
聴きやすく、繰り返し聴くのに適した名演だと思います。

インバルの指揮は、
ワルターやバーンスタインと比べるなら、
多少落ち着いた印象がありますが、

さらに他の演奏と聴き比べるなら、
曲の真価を感興豊かに再現していて、
決して冷静ではありません。

それほどいろいろ聴いているわけではないので、
ほかにも名演はあるはずですが、

最初の1枚として聴き込むのに
適していた名演の1枚であることは間違いありません。



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2017年11月19日日曜日

シュトゥットガルト・ソロイスツのブラームス:弦楽六重奏曲第1・2番(1989年録音)

ドイツの都市
シュトゥットガルトに本拠地を置く
シュトゥットガルト放送交響楽団と、
シュトゥットガルト室内管弦楽団のトップメンバー
6名によって1970年に結成された弦楽六重奏団

シュトゥットガルト・ソロイスツ
(Stuttgart Soloists)の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月~97年4月)の
弦楽六重奏曲第1&2番を聴きました。


ブラームス
①弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 作品18
②弦楽六重奏曲第2番 ト長調 作品36

シュトゥットガルト・ソロイスツ

録音:1989年11月。ハイデルベルク、ゲースト録音スタジオ。
【NAXOS 8.550436】1991年発売


シュトゥットガルト・ソロイツ
(Stuttgart Soloists)は、

ドイツ語読みでは
シュツットガルト・ゾリステン
(Stuttgarter Solisten)と記されています。

この録音当時(1989年)のメンバーは、
 アルベルト・ブェーゼン
 (Albert Bossen)…第1ヴァイオリン
 ホルスト・ノイマン
 (Horst Neumann)…第2ヴァイオリン
 エンリケ・サンティアゴ
 (Enrique Santiago)…第1ヴィオラ
 ミヒャエル・マイヤー・ラインハルト
 (Michael Meyer-Reinhard)…第2ヴィオラ
 ルドルフ・グライスナー
 (Rudolf Gleissner)…第1チェロ
 ゴットフリート・ハーン
 (Gottfried Hahn)…第2チェロ
の6名です。


  ***

①弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 作品18 は、
ブラームスが27歳の時(1860年)に作曲し、翌年に出版された作品。

②弦楽六重奏曲第2番 ト長調 作品36 は、
ブラームスが32歳(1865年7月)までに作曲し、翌年に出版された作品です。

ブラームスに限らず、
室内楽は聴く機会があまりないので、
知らないまま放ってある曲がたくさんあります。

四十半ばに差し掛かり、
ようやくブラームスの渋い音楽が、
胸に染みるようになってきました。

ブラームスの弦楽六重奏曲は、
これまで今一つよくわからない印象があったのですが、

シュトゥットガルト・ソロイツの演奏は、

もってまわったところのない、
わりとストレートな解釈で、
情熱的にどんどん歌い上げていくので、

曲全体の幸三を見通しやすく、
初めてどんな曲なのかわかった気になりました。

響きが少々荒っぽくも聴こえるのですが、
うるさくなる一歩手前で止まっているので、
若々しく溌剌とした演奏といって良いと思います。

これまでブラームスの弦楽六重奏曲は、

アマデウス四重奏団
セシル・アロノヴィツ(ヴィオラ)、
ウィリアム・ブリース(チェロ)を加えた演奏と、

コチアン四重奏団
スメタナ四重奏団のメンバーを加えた演奏を聴いてきましたが、

アマデウス四重奏団のほうは、
細部にこだわりすぎているのか、
全体が見通しにくく、
どんな曲なのか今一つよくわからないまま終わりました。

コチアン四重奏団のほうは、
全体的におっとりした雰囲気で、
穏やかな時間が流れていき、
退屈な曲に思えてしまいました。

どんな曲なのかわかってみると、
印象が変わってくる可能性もあるので、
また時間があるときに、これらのCDも聴き直してみようと思います。

とくにアマデウスは、
名演の誉れ高い録音なので、
今後聴き込んでくると、
評価が逆転するかもしれません。



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2017年11月12日日曜日

愛知県美術館の「開館25周年記念 長沢芦雪展」

去る11月3日(金)、
名古屋市東区にある愛知県美術館まで、

「開館25周年記念
 長沢芦雪展
 京のエンターテイナー」

を観に行って来ました。

「会期:平成29年10月 6日(金)
       ~11月19日(日)
 会場:愛知県美術館
 主催:愛知県美術館、中日新聞社、日本経済新聞社、テレビ愛知」

図録のあいさつをみると、

「江戸時代半ば、十八世紀の京都では、
 経済力を蓄え美意識を高めた町人たちに支えられて、

 池大雅や与謝蕪村、円山応挙
 伊藤若冲、曾我蕭白といった画家たちが活躍し、
 百花繚乱の相を呈していました。」

という書き出しで(※改行はブログ編者による)

2013年に愛知県美術館で、
「円山応挙展―江戸時代絵画 真の実力者」
を開催したことを踏まえて、

これに続く企画として、
応挙の弟子である長澤芦雪(ながさわろせつ)
取り上げられたそうです。

長澤芦雪(1754-1799)は
 応挙の門下で若くして高い画力を身につけ、
 さらに大胆奇妙な発想によって個性を発揮しました。

 芦雪は人を驚かせ楽しませようとするサービス精神に富み、
 今日では若冲や蕭白と並んで「奇想」の画家と称されて」

いるそうです(※改行はブログ編者による)

全体の構成
 第1章 氷中の魚:応挙門下に龍の片鱗を現す
 第2章 大海を得た魚:南紀で筆を揮う
 第3章 芦雪の気質と奇質
 第4章 充実と円熟:寛政前・中期
 第5章 画境の深化:寛政後期
にしたがって、
それぞれ個人的に感銘を受けた作品を整理しておきます。


  ***

第1章 氷中の魚:応挙門下に龍の片鱗を現す
からは、

13「花鳥図」1幅
 ※天明前期(1781-85)頃

14「躑躅群雀図」1幅
 ※天明年間(1781-89)

の精緻さと素朴さが同居する
温かみのある作品に感銘を受けました。

あと少し奇抜さに流れてはいるものの、

19「牛図」1幅
 ※天明6年(1786)以前または寛政前期

の力感あふれる黒牛も心に残りました。


なお、興味深かったのは
応挙と芦雪の同じテーマの作品を並べて展示してあったことです。

8「牡丹孔雀図」1幅〔円山応挙作〕
 ※安永3年(1774)

9「牡丹孔雀図」1幅
 ※天明前期(1781-85)頃

9だけを観たらそれで十分に美しいのですが、
ほぼ同じ構図の8を並べられると、
師匠である応挙のほうが、
作品から強い緊張感が伝わって来て、
応挙の画家としての技量の確かさを感じさせていました。

同じことは

33「双鹿図屏風」2曲1双〔円山応挙作〕
 ※天明3年(1783)
34「双鹿図」1幅
 ※寛政4年(1792)頃

37「狗之子図」1幅〔円山応挙作〕
 ※安永年間(1772-81)
36「狗児図」1幅
 ※寛政前期(1789-93)
38「薔薇蝶狗子図」
 ※寛政後期(1794-99)頃

でも言えていて、
芦雪の絵だけをみれば、
それでまずまず満足できるのですが、

応挙と比べてしまうと、
芦雪にはどこか散漫な印象があって、
どうもぴりっとしない、
弛緩したところのある作品のように感じました。


第2章 大海を得た魚:南紀で筆を揮う
は、

この展示の目玉でもある
無量寺の襖絵に感銘を受けました。

21「龍図襖」6面
22「虎図襖」6面
23「薔薇に鶏・猫襖」8面
24「唐子遊図襖」8面
 ※天明6年(1786)

圧倒的なのは
21・22の龍虎図ですが、
両脇を包むように配置される
23・24と合わせて観ると、
より感慨深いものがありました。

 ただ23・24はこれだけ取り上げられるなら、
 そこまで強い印象は残らなかったかもしれません。

21-24に匹敵するのが
高山寺の2点、

31「寒山拾得図」1幅
32「朝顔に蛙図襖」6面
 ※天明7年(1787)

で、特に31から受ける大迫力は、
21・22をしのいでいるようにすら思えました。

32もバランス感覚に優れた見事な作品ですが、
感動にはあと一歩足りないように感じました。


第3章 芦雪の気質と奇質
では、

35「酔虎図」1幅
 ※天明7年(1787)

の猫っぽい少しいい加減な感じの虎に愛着がわきました。
感動とは違いますが、憎めない好きな絵でした。


さてこの後、
第4章 充実と円熟:寛政前・中期
第5章 画境の深化:寛政後期
と続くのですが、

個人的にはどうしても、あと一歩、
絵から受ける印象に緊張感を欠き、
深い感銘を受けるには至りませんでした。

「充実」「円熟」「深化」とはありますが、
私には中だるみの弛緩した印象を受けました。

芸術家としてはまだこれからといえる
45歳で亡くなっているので、
大成する時間的な猶予がなかったのかもしれません。

今回の展示で、
芦雪の二、三十代の作品の中に、
飛び切り優れたものがあることを発見できました。



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2017年11月5日日曜日

バローグ&ダニュビウス四重奏団のブラームス:クラリネット五重奏曲(1991年録音)

NAXOSの旧録音を
AVEXから廉価で再販しているシリーズから、

ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月-1897年4月)の
クラリネット五重奏曲 作品115
を聴きました。


ヨハネス・ブラームス
①クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115

 ヨージェフ・バローグ(クラリネット)
 ダニュビウス四重奏団
 録音:1991年10月16-18日、ブラペスト、ユニタリアン教会

②弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 作品18
 ~第2楽章 主題と変奏

 シュトゥットガルト弦楽六重奏団
 録音:1989年11月、ハイデルベルク、ゲースト録音スタジオ
【AVCL-25682】2007年12月発売


①クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115 は、
ブラームスが58歳の時(1891年11・12月)に初演された作品です。

ハンガリー生まれのクラリネット奏者
ヨージェフ・バローグ(József Balogh, 1956年- )と、

1983年にハンガリーで結成された
ダニュビウス四重奏団(Danubius Quartet)による演奏です。

モーツァルトの時の好調さを持続して、
曲の良さを実感できる演奏に仕上がっていました。

ごく自然な音響で、美しく楽譜を再現してあり、
個性を前に押し出すようなところがないので、

あとほんの少し、
押しの強さがほしくなる場面もなくはないのですが、

無理に個性を出して、
曲を壊してしまうこともないので、
安心してブラームスの魅力にひたることできます。

探せばより良い演奏も見つかるのでしょうが、
個人的には、これくらい聴けたら十分満足です。


なお、CDの後半には、
シュトゥットガルト弦楽六重奏団の演奏で、
②弦楽六重奏曲第1番から第2楽章を収録してありますが、

こちらは①と演奏者が異なるためか、
演奏の方向性が全く違っていて、

適度に意志の力が加わった積極性のある演奏で、
①の穏やかな雰囲気を打ち消して、
②の印象だけが強く残る結果になっていました。

①の余韻を楽しむには、
②は聴かないほうが良いのですが、
こちらはこちらで強く記憶に残る演奏でしたので、
NAXOSの原盤にさかのぼって全曲を聴いてみようと思います。



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2017年10月29日日曜日

マリナー&アカデミー室内管のモーツァルト:協奏交響曲 変ホ長調 K.297b(1983年録音)

昔から聴きたかった1枚が、
古本屋で安く手に入ったので、
聴いてみました。


ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
①フルート、オーボエ、ホルン、バスーンのための
 協奏交響曲 変ホ長調 K.297B (app.9)
 (カデンツァ&再構成:ロバート・レヴィン)

 オール・ニコレ(フルート)
 ハインツ・ホリガー(オーボエ)
 ヘルマン・バウマン(ホルン)
 クラウス・トゥーネマン(バスーン)
 アカデミー室内管弦楽団
 (Academy of St. Martin-in-the-Fields)
 サー・ネヴィル・マリナー(指揮)
 録音:1983年7月9・10日、ロンドン

②オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
 (カデンツァ:ハインツ・ホリガー)

 アカデミー室内管弦楽団
 (Academy of St. Martin-in-the-Fields)
 ハインツ・ホリガー(オーボエ&指揮)
 録音:1983年7月9・10日、ロンドン

③オーボエ協奏曲 ヘ長調 (K.313)
 〔原曲:フルート協奏曲 ト長調〕
 (カデンツァ:ハインツ・ホリガー)

 ハインツ・ホリガー(オーボエ)
 アカデミー室内管弦楽団
 (Academy of St. Martin-in-the-Fields)
 ケネス・シリトー(指揮)
 録音:1986年6月5・6日、ロンドン
【PHCP-10364】※1996年1月発売


1曲目はオーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Volfgang Amadeus Mozart, 1756-1791)の

①フルート、オーボエ、ホルン、バスーンのための
  協奏交響曲 変ホ長調 K.297b(app.9) を、

アメリカの音楽学者
ロバート・レヴィン(Robert Levin, 1947-)が
再構成した版で聴きました。

この作品は、モーツァルトの手紙から、
22歳の時(1778年4月)に作曲されたことがわかるものの、
肝心の楽譜が伝わらない消失作品です。

19世紀半ばになって、
類似作品の筆写譜が発見されたことから、
原曲の編曲版(K.297b)と推測され、演奏されるようになりました。

 オーボエ、クラリネット、ホルン、バスーンのための
 協奏交響曲 変ホ長調 K.297b(Anh.C.14.01)

レヴィンの再構成版は、
この発見された筆写譜(K297b)をもとに、改めて、
本来描かれていたはずの原曲に遡ろうとした復元案です。

実際に聴いてみると非常にセンスの良い編曲で、
筆写譜そのものよりもモーツァルトの原曲に近い、
より優れた作品のようにも聴こるので、
時折、耳にする機会のある版になっています。


イギリスの指揮者
ネヴィル・マリナー
(Neville Marriner, 1924-2016)
の指揮する

イギリスの室内オーケストラ
アカデミー室内管弦楽団
(Academy of St. Martin-in-the-Fields)
の演奏で、

独奏は
スイスのフルート奏者
オーレル・ニコレ
(Aurèle Nicolet, 1926-2016)、

スイスのオーボエ奏者
ハインツ・ホリガー
(Heinz Holliger, 1939- )、

ドイツのホルン奏者
ヘルマン・バウマン
(Hermann Baumann, 1934- )、

ドイツのバスーン奏者
クラウス・トゥーネマン
(Klaus Thunemann, 1937- )
の4名が担当しています。

原曲の類似作をさらに編曲した作品
ということにはなりますが、
よく出来た編曲ではあるので一聴の価値ありです。


  ***

2曲目は、
②オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314(285d)。
モーツァルト21歳の時
(1777年4~9月)に作曲された作品です。

 ②には長2度上げて編曲した
 フルート協奏曲第2番ニ長調 K.314(285d)
 が存在します(1778年1・2月作曲)。

3曲目は、
③オーボエ協奏曲 ヘ長調 K.313(285c)
(原曲:フルート協奏曲 ト長調)です。

 ③はモーツァルトの
 フルート協奏曲 第1番 ト長調 K.313(285c)
 をもとに(1778年1・2月作曲)、ホリガーが、
 オーボエ用に長2度下げて編曲した版です。

モーツァルト自身の筆による
オーボエ協奏曲は②の1曲のみですが、

②と③で
フルート協奏曲第2&1番に対応するので、
全く違和感なく聴き進めることができます。


②③とも
スイスのオーボエ奏者
ハインツ・ホリガー
(Heinz Holliger, 1939- )
が独奏、

イギリスの室内オーケストラ
アカデミー室内管弦楽団
(Academy of St. Martin-in-the-Fields)
が伴奏を担当していますが、

②の指揮はホリガー自身、
③の指揮は
イギリスのヴァイオリン奏者
ケネス・シリトー
(Kenneth Sillito)が担当しています。


個人的には、完璧過ぎて、
もう少し素朴な味わいがほしいようにも思えますが、

表情が薄いわけではないので、
模範的演奏の一つとして聴きこもうと思います。

2017年10月16日月曜日

バローグ&ダニュビウス四重奏団のモーツァルト:クラリネット五重奏曲(1991年録音)

NAXOSの旧録音を
AVEXから廉価で再販しているシリーズから、

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月-1791年12月)の
クラリネット五重奏曲 イ長調 K581 と、
クラリネット三重奏曲 変ホ長調 K498 を聴きました。

K.498 はモーツァルト30歳(1786年8月5日
K.581 は 33歳(1789年9月29日)の時の作品です


ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
①クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581

 ヨージェフ・バローグ(クラリネット)
 ダニュビウス四重奏曲
 録音:1991年9月23-25日、ブラペスト、ユニタリアン教会

②クラリネット三重奏曲 変ホ長調 K.498
 《ケーゲルシュタット・トリオ》

 ベーラ・コヴァーチ(クラリネット)
 イエネ・ヤンドー(ピアノ)
 ジェルジ・コンラート(ヴィオラ)
 録音:1991年9月16日、ブダペスト、ユニタリアン教会
【AVCL-25682】2007年12月発売

①は、
ハンガリー生まれのクラリネット奏者
ヨージェフ・バローグ(József Balogh, 1956年- )と、

1983年にハンガリーで結成された
ダニュビウス四重奏団(Danubius Quartet)による演奏。

②は、
ハンガリー生まれのクラリネット奏者
ベーラ・コヴァーチ(Bela Kovacs, 1937年5月1日- )と、

ハンガリー生まれのピアニスト
イェネー・ヤンドー(Jenő Jandó, 1952年2月1日 - )と、

1846年にハンガリーで結成された
タートライ四重奏団(Tátrai Quartet)のヴィオラ奏者
ジェルジ・コンラート(György Konrád)による演奏です。


  ***

どちらも小さめのホールで聴いているような、
響きそのものを楽しめる美しい録音で、

特別なことをしないオーソドックスなスタイルで、
どんな曲なのかが良くわかるように演奏されていました。


どちらかといえば①の方が、
角の立たない流麗な演奏で、

じっくり聴かないと、
心に入って来にくいところがあるように感じましたが、

さらさら流れていくだけの演奏ではないので、
繰り返し聴き込むうちに魅力が増してきて、
かなり満足できる演奏となりました。


②は①よりはっきりくっきりした
押しの強い演奏で、

本来はもう少し
枯れた感じが必要なようにも思われましたが、

無駄なく曲の内面に切り込んでいるので、
曲本来の魅力を知るためには、
最適な演奏でした。

2017年10月9日月曜日

ヤンドー&コダーイ弦楽四重奏団のシューベルト:ピアノ五重奏曲《ます》

NAXOSの少し前の録音を、
AVEXから再販売しているシリーズ。

NAXOSの室内楽に名演が多いことを思い出し、
シューベルトの《ます》を聴いてみました。


ハンガリーのピアニスト
イェネ・ヤンドー(Jenő Jandó, 1952年2月1日- )、

ハンガリーの弦楽四重奏団
コダーイ・クァルテット(Kodály Quartet)、

ハンガリーのコントラバス奏者
イシュトヴァーン・トッシュ(István Tóth)の共演で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797年1月-1828年11月)の
ピアノ五重奏曲イ長調《ます》を聴きました。


シューベルト
 ①ピアノ五重奏曲イ長調 作品114 D.667《ます》
 ・イェネ・ヤンドー(ピアノ)
 ・コダーイ・クァルテット、
 ・イシュトヴァーン・トッシュ(コントラバス)

シューベルト/リスト編曲
 ②ます/③セレナード/④魔王
 ・ヴァレリー・トリオン(②④)
 ・オクサナ・ヤブロンスカヤ(③)

録音:1991年12月、ブダペスト、ユニタリアン教会(①)。1999年5月、ハンプシャー州イーストウッド・ヘイ、セントマーティン教会(②④)。1994年5月、カリフォルニア州サンタ・ローザ、フィッシャーホール(③)。
【AVCL-25683】※2007年12月発表

どちらかといえば《ます》には、
生ぬるく平凡で退屈な印象があって、
自分から聴くことはあまりなかったのですが、

このヤンドーとコダーイ四重奏団のCDは、
オーソドックスなスタイルによる
きりりと引き締まった清新な印象の演奏で、
初めて聴くような感動を覚えました。

有名な《ます》の楽章だけでなく、
全曲を通してバランス良く、
瑞々しい音楽が流れて行きました。

ほぼ初めて、
名曲であることを実感できました。

この演奏、
1992年発売の原盤(NAXOS)のほうでは、

ヴァイオリンとヴィオラ、チェロとピアノのための
アダージョとロンド・コンチェルタンテ ヘ長調 D.487

という珍しい作品がカップリングされているので、
近々買い直して聴いてみようと思っています。


余白にリスト編曲の歌曲が収録されています。

2曲めの《セレナード》のみ、
気持ちを込めすぎて回りくどい変な演奏になっていますが、

《ます》と《魔王》は前半と同じような
シューベルトらしい世界が流れ、それなりに楽しめました。

2017年10月2日月曜日

サヴァリッシュ&ウィーン響のブラームス:管弦楽曲集(1959-62年録音)

ドイツの指揮者
ヴォルフガング・サヴァリッシュ
(Wolfgang Sawallisch, 1923年8月- 2013年2月)の指揮する
ウィーン交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月 - 1897年4月)の
大学祝典序曲、悲劇的序曲、
運命の歌、アルト・ラプソディ、
ハイドン変奏曲を収めた1枚を聴きました。

指揮者36-38歳(1959年11月-62年2月)の時の録音です


サヴァリッシュの芸術(PHILIPSレコーディングズ)

<CD 2>
ブラームス
① 大学祝典序曲 Op.80
② 悲劇的序曲 Op.81
③ 運命の歌 Op.54
④ アルト・ラプソディ Op.53
⑤ ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 Op.56a

ウィーン交響楽団
アーフェ・ヘイニス (④)
ウィーン楽友協会合唱団 (③④)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
録音:1959年11月 (⑤), 1961年1月 (①), 1961年4月 (②), 1962年2月 (③④), Vienna
【DECCA 0289 480 7707 6】※2013年5月発売

ブラームスの交響曲全集と同時に収録された
管弦楽曲集を聴きました。

実際聴いてみると、曲想がばらばらなので、
全体としてまとまりがわるく感じられました。

特に出だしの①②は、
きちっとしているものの、
今ひとつ突き抜けた感じがなくて、
物足りなさが残りました。

③④⑤はこれだけ切り出して聴くなら
十分に優れた演奏でした。

③④は、ドイツ・レクイエムと同じく、
声楽の扱いのうまさが光る演奏で、
掴みどころのない演奏が多い中、
初めて曲の真価を理解できたように思います。

⑤はこの曲集の中で一番成功していて、
名曲の名演奏に触れることができました。

1枚のCDとしての感銘度は低かったのですが、
交響曲全集に付属する1枚として取り上げておきます。

2017年9月25日月曜日

サヴァリッシュ&ウィーン響のブラームス:交響曲第2・4番(1959・63年録音)

ドイツの指揮者
ヴォルフガング・サヴァリッシュ
(Wolfgang Sawallisch, 1923年8月- 2013年2月)の指揮する
ウィーン交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月 - 1897年4月)の
交響曲第2・4番を聴きました。

指揮者35歳(1959年1月)、39歳(63年2月)の時の録音です


サヴァリッシュの芸術
(PHILIPSレコーディングズ)CD4

ブラームス
①交響曲第2番ニ長調 Op.73
②交響曲第4番ホ短調 Op.98

ウィーン交響楽団
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
録音:1959年1月 (①), 1963年2月 (②), Austria

【DECCA 0289 480 7707 6】※2013年5月発売


①交響曲第2番ニ長調 Op.73 は、

第1番初演の翌年、
ブラームス44歳の夏に作曲され(1877年)、
その年の12月に初演されました。

その後の大曲の初演年月
1879年 1月 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
1881年11月 ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83
1883年12月 交響曲第3番 ヘ長調 作品90

②交響曲第4番ホ短調 Op.98 は、

ブラームス52歳の時(1885年10月)に初演されました。


  ***

第1・3番を聴いた時と同じ、
好調さを維持した名演でした。

ほんの少し速めのテンポで、
ぐいぐい引っ張っていく勢いのある演奏。

速めではありますが、
ブラームスらしい重心の低い
渋めの音色は保たれているので、
曲全体の構成を見失うことなく、
感動しながら最後まで聴き進めることができました。

聴く前は、
若さが出るのではと心配していた第4番も、
しみじみとした第2楽章の歌わせ方が絶品で、
 石丸寛&九州交響楽団
を聴いて以来の感動を味わいました。

でもより優れていたのは第2番で、
これまで聴いてきた誰よりも、
たっぷり朗々とオケを鳴らし切っていて、

それでいて押し付けがましくなく、
全曲が自然につながりあっている所が素晴らしく、

第2番って、こんなに良い曲だったんだなと、
感動を新たにしました。


  ***

この全集、
ブラームスの若々しい魅力に溢れた
新鮮な印象の名演ぞろいなので、
どなたにもぜひお薦めしたいCDです。

難点があるとすれば、
ウィーン交響楽団のオケの響きが、
ウィーン・フィルやベルリン・フィルのような、
個々に鳴りっぷりの良い、

聴いて直ちに心を奪われるような、
ゴージャスな音ではないことでしょうか。

少しくぐもった感じの渋い音色で、
オケ全体としてブラームスにふさわしい
味のある響きを作り出しているので、

聴き込むほどに
納得できるいい音が鳴っているのですが、
最初は少し地味な印象を受けるかもしれません。

2017年9月18日月曜日

サヴァリッシュ&ウィーン響のブラームス:ドイツ・レクイエム(1962年録音)

ドイツの指揮者
ヴォルフガング・サヴァリッシュ
(Wolfgang Sawallisch, 1923年8月- 2013年2月)の指揮する
ウィーン交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月 - 1897年4月)の
ドイツ・レクイエムを聴きました。

指揮者38歳の時(1962年2月)の録音です


サヴァリッシュの芸術
(PHILIPSレコーディングズ)CD1

ブラームス:ドイツ・レクイエム Op.45

ウィーン交響楽団
ヴィルマ・リップ(ソプラノ)
フランツ・クラス(バリトン)
ウィーン楽友協会合唱団
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
録音:1962年2月, Vienna
【DECCA 0289 480 7707 6】※2013年5月発売

ドイツ・レクイエム Op.45 は、
ブラームス35歳の時(1869年2月)に全曲初演された作品です


  ***

ドイツ・レクイエムは好きな曲ですが、
期待が大きすぎるのか、
CDで納得できる演奏には
なかなか出会えません。

今回のサヴァリッシュさんの演奏、
それほど期待していなかったのですが、
これまで聴いてきたどの演奏よりも、

ほんの少し速めのテンポで、
楽章ごとの構成をはっきり描き分けながら、
全体を見通しよくまとめ上げていて、
初めて、この大曲の真価をわかった気がしました。

見通しの良さに加えて、
楽譜の枠内で、目一杯燃焼していくスタイルで、
若きブラームスの情熱を感じさせる、
勢いのある演奏でした。

初めて聴く方にもお薦めしたい1枚です。

調べてみると、
サヴァリッシュさんは59歳の時(1983年3月)に、
この曲を再録音しているので、
いずれそちらの方も聴いてみたいと思います。

2017年9月11日月曜日

サヴァリッシュ&ウィーン響のブラームス:交響曲第1・3番(1961・62年録音)

ドイツの指揮者
ヴォルフガング・サヴァリッシュ
(Wolfgang Sawallisch, 1923年8月- 2013年2月)の指揮する
ウィーン交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月 - 1897年4月)の
交響曲第1・3番を聴きました。

指揮者37歳(1961年1月)、39歳(62年12月)の時の録音です


サヴァリッシュの芸術
(PHILIPSレコーディングズ)CD3

ブラームス
①交響曲第1番ハ長調 Op.68
②交響曲第3番ヘ長調 Op.90

ウィーン交響楽団
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
録音:1962年12月 (①), 1961年1月 (②), Austria

【DECCA 0289 480 7707 6】※2013年5月発売


①交響曲第1番ハ長調 Op.68
ブラームス43歳の時(1976年11月)に、

②交響曲第3番ヘ長調 Op.90
50歳の時(1883年12)に初演されました。


   ***

サヴァリッシュさんの真価に気がついたのは、
シュターツカペレ・ドレスデンと録音した
シューマンの交響曲全集を聴いてからです。

※指揮者49歳の時(1972年9月)の録音。

他にもこのレベルの録音があるのなら
聴いてみたいと思っていたところ、

若いころのPHILLIPSへの
録音集(CD14枚組の選集)が、
格安(1,500円程)で手に入りましたので、
面白そうなものから聴いていこうと思います。

はじめはサヴァリッシュが
35歳から39歳(1959年1月-1963年2月)まで
4年かけて録音したブラームスの交響曲全集と、
ドイツ・レクイエム、管弦楽曲集を集めた4枚からの1枚です。


  ***

第1番、第3番ともに、

ほんの少し速めのテンポと、
メリハリのクッキリとした堅めの音色で、
全体の見通しよく、ぐいぐい前に進んでいく演奏で、
予想以上の好演でした。

若々しい勢いがあるからといって、
変な軽さを感じるわけではなく、
ブラームスらしい重心の低い響きに満ちた、
完成度の演奏だと思いました。

テンポもせかせかしているわけではなく、
全体像を把握しやすい一番穏当なテンポを選んでいるようで、

こんな曲だったのかと、
今更ながらの新鮮な感動を味わえました。

サヴァリッシュ&ウィーン響のブラ1&ブラ3は、
重々しすぎてブラームスは苦手だと思う人にもお薦めしたい
若々しい魅力のある1枚だと思います。


音質は、最近の録音とは違った
少し古びた感じの独特な響きがします。

ブラームスにはもってこいともいえますが、
のちのシューマンと比べるなら、
一つ下に置かざるをえない音質だと思います。

2017年9月4日月曜日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第8番《千人の交響曲》(1986年録音)

イスラエルの指揮者
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する

ドイツのオーケストラ
フランクフルト放送交響楽団
(2005年にhr交響楽団に改称)の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第8番《千人の交響曲》を聴きました。

指揮者50歳の時(1986年10月)の録音です


グスタフ・マーラー
交響曲第8番《千人の交響曲》

 フェイ・ロビンソン(ソプラノ)
 テレサ・ケイヒル(ソプラノ)
 ヒルデガルト・ハイヒェレ(ソプラノ)
 リヴィア・ブダイ(アルト)
 ジェーン・ヘンシェル(アルト)
 ケネス・リージェル(テノール)
 ヘルマン・プライ(バリトン)
 ハラルト・シュタム(バス)
 バイエルン放送合唱団
 北ドイツ放送合唱団
 シュトゥットガルト・ズュートフンク合唱団
 西ドイツ放送合唱団
 RIAS室内合唱団
 ハンブルク大聖堂児童聖歌隊
 ヘッセン放送児童合唱団

 フリッツ・ヴァルター=リントクヴィスト(オルガン)
 フランクフルト放送交響楽団

 エリアフ・インバル指揮

録音:1985年4月18・19日、フランクフルト、アルテ・オーバー
【COCO-73278/9】2012年6月発売。

交響曲第8番は、1906年から7年にかけて作曲され、
マーラー50歳の時(1910年9月12日)に初演されました

第7番の初演は1908年9月、
《大地の歌》の初演は1911年11月、
第9番の初演は1912年6月のことでした。

マーラーは1911年5月、
50歳の時に亡くなっているので、
マーラーが生前に初演された交響曲は、
この第8番までということになります。

  ***

音の良さに驚いた[Blu-spec CD]によるインバルのマーラー、
続いて第8番を聴いてみました。

まず音響面で万全の出来で、
ホールで聴くのに近い自然な響きのなかに、
細かいところまで良く聴こえてくる録音で、
至福の一時を送ることができました。

変な自己主張はないものの、
十分に曲の良さを伝えてくれる穏当な解釈で、
マラ8のありのままの姿を
感動的に伝えてくれていると思いました。

とくに薄くなりがちな、
叙情的な箇所での表現に優れていて、
次の《大地の歌》を思わせる響きが随所に出てきて、
マーラーならではの美しさにひたることができました。

いろいろと聴いてきて、
耳が馴染んできた結果かもしれませんが、
今までで一番この曲の真価についてわかったように思いました。

一聴して心をわしづかみにするような
圧倒的な名演とまではいえないかもしれませんが、

十分に美しく感動的な、
マラ8のスタンダードな名演といえると思います。
お薦めです。

2017年8月28日月曜日

愛知県美術館の企画展「大エルミタージュ美術館展」

去る8月16日(水)、
名古屋市東区の愛知県美術館まで、

「大エルミタージュ美術館展
 オールドマスター
 西洋絵画の巨匠たち」

を観に行ってきました。

サンクトペテルブルク
(もとは帝政ロシアの首都、いまはレニングラード州の州都)にある、
ロシアを代表する国立美術館である

エルミタージュ美術館のコレクションの中から、

「特に充実している16世紀ルネサンス、
 17・18世紀バロック、ロココの時代に活躍し、
 “オールドマスター”といわれる巨匠たちの
 名画85点」

が展示されていました。

調べてみると、
ちょうど5年前の8月17日にも、
名古屋市美術館で開催された
特別展「大エルミタージュ美術館展」を観に行っていました。

図録をみる限り、
ほとんど重なっている作品はありませんでした。


  ***

《大エルミタージュ美術館展
  オールドマスター
  西洋絵画の巨匠たち》

1 イタリア:ルネサンスからバロックへ
2 オランダ:市民絵画の黄金時代
3 フランドル:バロック的豊穣の時代
4 スペイン:神と聖人の世紀
5 フランス:古典主義的バロックからロココへ
6 ドイツ・イギリス:美術大国の間で

という構成でした。気に入った作品をピックアップしておきます。

1 イタリア:ルネサンスからバロックへ

【図録9】1640年代
カルロ・ドリチ
 《聖チェチリア》

【図録11】1777年
ポンペオ・ジローラモ・バトーニ
 《聖家族》

【図録12】1710年頃
ルカ・カルレヴァリス
 《ヴェネツィア、運河に面したドゥカーレ宮殿前の眺め》

2 オランダ:市民絵画の黄金時代

【図録21】1660年前半
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン
 《運命を悟るハマン》

3 フランドル:バロック的豊穣の時代
4 スペイン:神と聖人の世紀

【図録53】1660年頃
フランシスコ・デ・スルバラン
 《聖母マリアの少女時代》

【図録56】1660年頃
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
 《受胎告知》

5 フランス:古典主義的バロックからロココへ

【図録61】1699年
ジャン=バティスト・サンテール
 《ヴェールをまとう若い女性》

【図録70】1770年代
ジャン=バティスト・グルーズ
 《スミレ色のチュニックを着た少女》

【図録78】1783年
ユベール・ロベール
 《運河のある建築風景》

6 ドイツ・イギリス:美術大国の間で


名古屋市美術館で観た時も思いましたが、

一つの「美術館」に照準を合わせた展覧会なので、
時代と分野の幅が広くなって、
全体としては何となく散漫な印象を受けました。

それでも日常的に、
エルミタージュ美術館に足を運ぶこともないので、
名品を目に焼き付ける良い機会になりました。



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2017年8月18日金曜日

バーンスタイン&ロンドン響のマーラー《千人の交響曲》(1966年録音)

アメリカ合衆国の指揮者
レナード・バーンスタイン
(1918年8月-1990年10月)が

ニューヨーク・フィル(1-7,9,10番)を中心に、
ロンドン交響楽団(8番)とイスラエル・フィル(大地)
を振りわけて録音した

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー
(1860年7月-1911年5月)の交響曲全集、

今回はロンドン響とともに録音した
交響曲第8番《千人の交響曲》を聴きました。

指揮者47歳の時(1966年4月)の録音です


CD11
グスタフ・マーラー:交響曲第8番変ホ長調《千人の交響曲》
 
 エルナ・スポーレンベルク(ソプラノ/いと罪深き女)
 ギネス・ジョーンズ(ソプラノ/贖罪の女の一人)
 ゲニス・アンニアー(ソプラノ/栄光の聖母)
 アンナ・レイノルズ(アルト/サマリアの女)
 ノーマ・プロクター(アルト/エジプトのマリア)
 ジョン・ミッチンソン(テノール/マリア崇拝の博士)
 ヴラディミール・ルジャーク(バリトン/法悦の教父)
 ドナルド・マッキンタイア(バス/瞑想の教父)

 リーズ音楽祭合唱団、ロンドン交響合唱団(ドナル・ハント指揮)
 オーピントン・ジュニア・シンガーズ(シーラ・モスマン指揮)
 ハイゲート・スクール少年合唱団(エドワード・チャップマン指揮)
 フィンチュリー児童音楽グループ(ジョン・アンドルーズ指揮)

 ハンス・フォーレンヴァイダー(オルガン)
 ロンドン交響楽団
 レナード・バーンスタイン(指揮)

録音:1966年4月18-20日。ロンドン、ウォルサムストウ・アセンブリー・ホール
【Sony Classical 88697943332】

交響曲第8番は、1906年から7年にかけて作曲され、
マーラー50歳の時(1910年9月12日)に初演されました

ちなみに第7番の初演は1908年9月、
《大地の歌》の初演は1911年11月、
第9番の初演は1912年6月のことでした。

マーラーは1911年5月、
50歳の時に亡くなっているので、
マーラーが生前に初演された交響曲は、
この第8番までということになります。


  ***

第8番は、
印象的な出だしにぐっと惹き込まれるのですが、

いざ全曲を聴こうとすると、
途中で飽きが来て、最後まで飽きずに
聴き通すのは難しい場合が多いです。

個人的に気に入っているのは、
 小澤征爾&ボストン響 の一気呵成な演奏ですが、
こちらもそれほどじっくり聴き込んでいるわけではないので、

今のところ第8番は、
まだ自分にとって少し距離のある作品といって良さそうです。


今回のバーンスタインの第8番、
鮮烈な第6・7番と同じ傾向の演奏で、

バーンスタインらしく
オケを自在に操ったわかりやすい演奏で、
最後まで飽きずに、十分感動しながら聴き通すことができました。

ただし大規模過ぎる曲ゆえか、
第6・7番のときほどやり切った感じはなく、
第2部の叙情的な場面の印象が、
多少弱いように感じられました。

個人的に、
息もつかせぬ勢いで聴き通せたのは第1部のみで、
ふだんから苦手にしている第2部は、
あと一歩な印象が残りました。

とはいえ、ここまで聴いてきた
バーンスタインの旧全集のなかでは
第6・7番につぐ好印象で、
私のなかの第8番への苦手意識を、
弱めてくれる効果はあったと思います。